行動変容ステージモデルとは?習慣が続かない理由と5段階の変え方をわかりやすく解説
1. まず結論:習慣が続かない原因は「意志の弱さ」だけではない
禁煙、ダイエット、運動、英語学習、資格勉強。どれも大切だとわかっているのに、なかなか続かないことがあります。
その理由は、多くの場合「決意が足りない」からではありません。今の自分が、変化のどの段階にいるのかを見誤っているからです。
たとえば、まだ「本当に変える必要があるのか」と迷っている人に、いきなり「今日から毎日1時間勉強しよう」と求めても続きにくいでしょう。逆に、すでに行動を始めている人には、動機づけよりも「失敗しやすい場面への対策」や「記録の仕組み」が必要です。
行動を変えるときに大切なのは、次の3つです。
- 今の自分がどの段階にいるかを知る
- 段階に合わない努力をやめる
- 小さな行動を続けられる環境に置く
大切なのは、「変わる気があるか」だけを見ることではありません。
「今、どの段階にいて、次に何をすれば前に進めるか」を見ることです。
この記事では、禁煙・ダイエット・勉強習慣を例にしながら、行動を変えるための5段階モデルを実生活に使う方法を整理します。
2. 行動変容ステージモデルの基本
行動変容ステージモデルは、英語では Transtheoretical Model と呼ばれ、略して TTM と表記されます。主に健康心理学、禁煙支援、運動習慣、食生活改善、保健指導などの分野で使われてきた考え方です。
代表的には、人の変化は次の5段階で進むと整理されます。
| 段階 | 状態 | 典型的な言葉 |
|---|---|---|
| 無関心期(前熟考期) | 変える必要性をあまり感じていない | 「別に今のままで困っていない」 |
| 関心期(熟考期) | 変えた方がよいとは思っているが迷っている | 「いつか始めたいけど、まだ無理」 |
| 準備期 | 近いうちに始めるつもりで、少し行動している | 「来週から始めるために準備している」 |
| 実行期 | 実際に行動を変え始めた | 「最近、少しずつやっている」 |
| 維持期 | 新しい行動が一定期間続いている | 「前より自然に続けられるようになった」 |
厚生労働省の健康情報サイトでも、運動習慣の変化を「無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期」という段階で説明しています。詳しくは 厚生労働省 e-ヘルスネット を確認できます。
このモデルの重要な点は、人を「やる気がある人」と「やる気がない人」に単純に分けないことです。まだ必要性を感じていない人、迷っている人、始める直前の人、始めたばかりの人、続いている人では、必要な対策が違います。
つまり、TTMは人を責めるための分類ではなく、その人に合った支援や行動設計を選ぶための地図です。
3. なぜ今、行動を変える力が重要なのか
現代では、知識そのものよりも「わかっていることを行動に移せるか」が大きな差になります。
健康面では、世界保健機関(WHO)が2024年に、2022年時点で世界の成人の約31%、人数にして約18億人が推奨される身体活動量を満たしていないと報告しています。身体活動不足は、心血管疾患、2型糖尿病、認知症、一部のがんなどのリスクと関係するとされています。詳しくは WHOの報告 で確認できます。
禁煙でも、問題は「大切だと知らないこと」ではありません。米国CDCの2022年データでは、成人喫煙者の67.7%が禁煙したいと考え、53.3%が過去1年に禁煙を試みた一方、実際に禁煙に成功した割合は8.8%でした。詳しくは CDCのSmoking Cessation: Fast Facts にまとまっています。
学習面でも同じです。英語、TOEIC、資格、受験、仕事のスキルアップは、価値を理解している人が多い一方で、毎日の行動に落とし込むのは簡単ではありません。
「勉強した方がいい」とわかっていることと、「今日も教材を開く」ことの間には、大きな距離があります。
その距離を埋めるには、精神論だけでは足りません。必要なのは、今の段階に合った小さな行動設計です。
4. 無関心期:まずは現状を見える化する
無関心期は、変える必要性をあまり感じていない段階です。前熟考期とも呼ばれます。
たとえば、次のような状態です。
- 健康診断で指摘されたが、生活を変える気はない
- 英語が必要だとは言われるが、自分には関係ないと思っている
- 勉強しない理由を「忙しいから仕方ない」と考えている
- 運動不足だとは思うが、今すぐ困っているわけではない
この段階で、いきなり「毎日勉強しよう」「週3回運動しよう」と決めても続きにくいです。本人がまだ変化の必要性を十分に感じていないからです。
無関心期で有効なのは、行動を強制することではありません。まずは、現状を客観的に見る材料を増やすことです。
たとえば、次のような小さな確認から始めます。
- 1週間のスマホ利用時間を見る
- 1日の歩数を確認する
- 1週間の間食回数を記録する
- TOEICや資格の過去問を1回だけ解く
- 1日の学習時間をメモする
ここで大切なのは、記録を見て自分を責めないことです。無関心期の目的は、すぐに変わることではなく、「今のままで本当にいいのか」を考える材料を増やすことです。
5. 関心期:変えたい気持ちと不安を両方見る
関心期は、変えた方がよいとは思っているものの、まだ迷っている段階です。熟考期とも呼ばれます。
この段階では、本人の中に「変わりたい理由」と「変わりたくない理由」が同時にあります。
たとえば、次のような状態です。
| 変えたい理由 | 変わるのが不安な理由 |
|---|---|
| 健康診断の数値を改善したい | 食事管理が面倒 |
| 英語で仕事の選択肢を広げたい | 以前も続かなかった |
| 資格を取って収入を上げたい | 勉強時間を作れる気がしない |
| 受験に向けて基礎を固めたい | 部活や仕事で疲れている |
この段階で大切なのは、迷いを否定しないことです。
「本気なら迷わないはず」と考えると、かえって行動が止まりやすくなります。迷いは怠けではなく、変化に伴うコストを現実的に見ているサインでもあります。
関心期では、次のように書き出すと整理しやすくなります。
- 変わることで得られるもの
- 変わらないことで失うもの
- 変わるときに不安なこと
- 不安を小さくする方法
たとえば英語学習なら、「毎日1時間勉強する」と考える前に、「なぜ英語を学びたいのか」「何が続かなかった原因なのか」を整理します。
関心期で必要なのは、気合いではありません。自分が何に迷っているのかを言葉にすることです。
6. 準備期:小さく始める計画を作る
準備期は、近いうちに行動を始める意思があり、少しずつ準備も始まっている段階です。
この段階で重要なのは、目標を大きくすることではありません。いつ・どこで・何をするかを決めることです。
悪い計画の例は、次のようなものです。
- 明日から本気を出す
- 毎日たくさん勉強する
- とにかく食事に気をつける
- できるだけ運動する
これでは、行動が曖昧すぎます。
一方、よい計画は具体的です。
| 目標 | 準備期の具体策 |
|---|---|
| 英語学習 | 朝食後に英単語を5分だけ確認する |
| 資格勉強 | 夕食後にテキストを2ページ読む |
| 運動 | 帰宅後、着替える前にスクワットを10回する |
| 食生活改善 | 昼食で甘い飲み物を水かお茶に変える |
| 禁煙 | 吸いたくなったら水を飲んで5分待つ |
心理学では、「もしAになったらBをする」という形で行動を決める方法が、目標達成を助けると考えられています。これは実行意図と呼ばれ、GollwitzerとSheeranのメタ分析でも検討されています。詳しくは Implementation Intentions and Goal Achievement を参照できます。
準備期のコツは、最初から完璧な生活を目指さないことです。
英語学習なら「1日1時間」ではなく、「アプリを開く」「単語を1つ見る」「1問だけ解く」でも構いません。大切なのは、行動の入口を作ることです。
7. 実行期:始めた直後は最も崩れやすい
実行期は、すでに行動を変え始めている段階です。
ただし、ここで油断してはいけません。始めた直後は、まだ習慣が自動化されていないため、疲労、予定変更、ストレス、誘惑に弱い状態です。
たとえば勉強習慣では、次のような壁が出てきます。
- 3日目で面倒になる
- 仕事や学校が忙しい日に抜ける
- 1日できなかっただけで「もう無理」と思う
- 成果が見えずにやる気が下がる
- 教材を開くまでの心理的ハードルが高い
この段階で必要なのは、モチベーションを高め続けることではありません。中断しても戻れる仕組みです。
特に役立つのは、次の3つです。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 記録する | 学習時間、歩数、体重、喫煙本数などを1つだけ記録する |
| 最低ラインを決める | 忙しい日でも守れる最小行動を用意する |
| 戻り方を決める | 途切れた後に再開する条件を先に決める |
たとえば英語学習なら、「今日は疲れたから何もしない」ではなく、「疲れた日は英単語1個だけ見る」と決めておきます。
資格勉強なら、「予定が崩れたら翌朝に1問だけ解く」と決めておきます。
実行期は、完璧に続ける段階ではありません。崩れても戻る練習をする段階です。
8. 維持期:続いているからこそ再発対策が必要
維持期は、新しい行動が一定期間続いている段階です。
ただし、続いている人ほど「もう大丈夫」と思って対策をやめてしまうことがあります。これが再発や中断のきっかけになります。
維持期で意識したいのは、次の3つです。
- きっかけを固定する
- 環境を整える
- 自分の成長を確認する
習慣研究では、新しい行動が自動化されるまでの期間には大きな個人差があります。UCLの研究紹介では、習慣形成に平均66日という数字が紹介されていますが、実際の範囲は18日から254日まで幅があります。詳しくは UCLの解説 を確認できます。
つまり、「21日続けたら完全に習慣になる」と考えるのは単純化しすぎです。
簡単な行動なら早く定着することもありますが、勉強、運動、食生活、禁煙のように負荷がある行動は、数か月単位で見た方が現実的です。
維持期では、次のような対策が役立ちます。
| 崩れやすい場面 | 対策 |
|---|---|
| 旅行 | 最低ラインだけ守る |
| 繁忙期 | 学習量を一時的に減らす |
| 飲み会 | 食事・喫煙・睡眠の戻し方を決める |
| 成果が見えない時期 | 記録を見返して変化を確認する |
| 飽きた時期 | 教材や学習形式を少し変える |
維持期で重要なのは、同じ努力を永遠に続けることではありません。生活の変化に合わせて、続け方を調整することです。
9. 禁煙・ダイエット・勉強習慣への応用
行動変容ステージモデルは、健康行動だけでなく、学習習慣にも応用できます。
禁煙の場合は、ニコチン依存が関わるため、意志だけで解決しようとしないことが大切です。医療機関、禁煙外来、薬物療法、カウンセリングなど、根拠のある支援を使う選択肢があります。
| 段階 | 禁煙での対策 |
|---|---|
| 無関心期 | 喫煙本数、支出、体調変化を記録する |
| 関心期 | 禁煙のメリットと不安を書き出す |
| 準備期 | 禁煙開始日、代替行動、相談先を決める |
| 実行期 | 吸いたくなる場面を避け、支援を使う |
| 維持期 | 飲酒・ストレス・人間関係など再喫煙しやすい場面を対策する |
ダイエットや運動では、急激な変化を狙うほど反動が起きやすくなります。持病がある場合、極端な食事制限や運動は医師・専門家に相談する方が安全です。
| 段階 | ダイエット・運動での対策 |
|---|---|
| 無関心期 | 歩数、食事、体重を責めずに記録する |
| 関心期 | 減量だけでなく体調・睡眠・疲労感に注目する |
| 準備期 | 週1回、10分の運動から始める |
| 実行期 | 食事制限よりも続けられる置き換えを選ぶ |
| 維持期 | 旅行・飲み会・繁忙期の戻り方を決める |
勉強習慣では、「勉強時間を増やす」よりも先に、「学習を始める摩擦を減らす」ことが重要です。
| 段階 | 勉強習慣での対策 |
|---|---|
| 無関心期 | 現在の学習時間や苦手分野を確認する |
| 関心期 | 学ぶ理由と不安を書き出す |
| 準備期 | 毎日5分の学習タイミングを決める |
| 実行期 | 記録・復習・小テストで継続を支える |
| 維持期 | 目標を更新し、マンネリを防ぐ |
英会話、TOEIC、資格、受験勉強では、最初から長時間の学習を組むよりも、毎日同じ場所に戻れる仕組みを作る方が現実的です。
勉強習慣で難しいのは、「やる気を出すこと」よりも「今日も同じ場所に戻ること」です。
完全無料で利用できる DailyDrops は、英会話・TOEIC・資格・受験勉強などを日々の小さな学習行動に分けて続けられる学習サービスです。学習行動がユーザーに還元される共益型プラットフォームでもあるため、勉強を単なる消費ではなく、積み上げとして感じやすい設計になっています。
行動変容の5段階でいえば、特に「準備期」から「実行期」に移るとき、そして実行期で途切れず戻る場所を作りたいときの選択肢になります。
10. 誤解されやすい点と注意点
このモデルは便利ですが、万能ではありません。使うときには、いくつかの注意点があります。
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 行動変容は一直線に進む | 実際には前に進んだり戻ったりする |
| 実行期に入れば安心 | 始めた直後ほど崩れやすい |
| 意志が強ければ続く | 環境、支援、睡眠、ストレスも関わる |
| TTMを使えば必ず成功する | 成功を保証するものではない |
特に重要なのは、「戻ること」を失敗と決めつけないことです。
準備期から実行期に進んでも、忙しさやストレスで関心期に戻ることがあります。勉強を続けていた人が、試験後に止まってしまうこともあります。運動を続けていた人が、繁忙期に中断することもあります。
これは珍しいことではありません。
また、TTMに基づく介入が常に他の方法より優れているとは限りません。禁煙支援に関するCochraneレビューでも、ステージに合わせた介入が非ステージ型の介入より一貫して優れているとはいえない結果が報告されています。詳しくは Cochrane Libraryのレビュー を確認できます。
つまり、このモデルは「成功する魔法」ではありません。
価値があるのは、自分に合わない対策を減らせることです。まだ迷っている人に実行期の対策を押しつけない。すでに始めている人に精神論だけを言わない。続いている人には再発対策を用意する。
このように、段階ごとに対策を変えることで、無理な努力を減らしやすくなります。
11. 今日から使えるステージ別チェックリスト
自分の段階を知りたい場合は、次の質問に答えてみてください。
| 質問 | 当てはまる段階 |
|---|---|
| そもそも変える必要をあまり感じていない | 無関心期 |
| 変えた方がよいとは思うが、まだ迷っている | 関心期 |
| 近いうちに始めるつもりで、準備をしている | 準備期 |
| すでに始めているが、まだ不安定 | 実行期 |
| 数か月続いていて、生活に馴染み始めている | 維持期 |
段階がわかったら、次にやることは1つで十分です。
| 段階 | 今日やること |
|---|---|
| 無関心期 | 現状を1つだけ記録する |
| 関心期 | 変えたい理由と不安を3つずつ書く |
| 準備期 | いつ・どこで・何をするか決める |
| 実行期 | 最低ラインと戻り方を決める |
| 維持期 | 崩れやすい場面への対策を作る |
行動を変えるときは、「完璧な計画」よりも「次に進める小さな一手」が大切です。
たとえば、今日できることはこのくらいで十分です。
- 英単語を1つだけ見る
- テキストを1ページだけ開く
- 歩数を確認する
- 間食の回数をメモする
- いつ吸いたくなるか記録する
小さすぎると思うかもしれません。けれど、行動変容では「始める摩擦を下げること」が重要です。最初の一歩が小さいほど、再開もしやすくなります。
12. FAQ:よくある質問
Q. 行動変容ステージモデルの5段階は何ですか?
無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5段階です。専門的には、無関心期を前熟考期、関心期を熟考期と呼ぶこともあります。変化への準備状態を見て、その段階に合った対策を選ぶために使われます。
Q. 無関心期と関心期の違いは何ですか?
無関心期は、本人がまだ変える必要性をあまり感じていない状態です。関心期は、変えた方がよいとは思っているものの、不安や迷いがある状態です。無関心期では現状の見える化、関心期ではメリットと不安の整理が役立ちます。
Q. 勉強習慣が続かない人はどの段階ですか?
人によって違います。まだ必要性を感じていないなら無関心期、必要性は感じているが迷っているなら関心期、始める準備をしているなら準備期、すでに始めたが不安定なら実行期です。「続かない」と感じる人の多くは、実行期で戻り方の設計が不足している可能性があります。
Q. ダイエットや禁煙にも使えますか?
使えます。もともと健康行動の変化を説明する文脈で広く使われてきたモデルです。ただし、禁煙にはニコチン依存、ダイエットには健康状態や摂食行動が関わることもあるため、必要に応じて医療機関や専門家の支援を使うことが大切です。
Q. やる気が出てから始めた方がよいですか?
必ずしもそうではありません。やる気は行動の前にだけ生まれるものではなく、行動した後に出てくることもあります。特に準備期以降では、5分だけ始める、教材を開くだけにするなど、行動のハードルを下げる方が現実的です。
Q. 一度挫折したら最初からやり直しですか?
最初からやり直しではありません。挫折した経験には、「どの条件で崩れたのか」という情報が残っています。忙しい日に止まったのか、成果が見えなくて止まったのか、環境が悪くて止まったのかを確認すれば、次の設計に活かせます。
Q. 行動変容ステージモデルには限界がありますか?
あります。人の行動は、段階だけで決まるわけではありません。環境、支援、ストレス、睡眠、経済状況、人間関係、依存の有無なども関わります。このモデルは万能な成功法則ではなく、自分に合わない対策を減らすための整理法として使うのが現実的です。
13. まとめ:変化は「決意」ではなく、段階に合った設計で進む
人は、正しいとわかっていることをいつでも実行できるわけではありません。
禁煙したい。体を動かしたい。食生活を整えたい。英語を学びたい。資格を取りたい。そう思っていても、行動には準備段階があります。
行動変容の5段階が教えてくれるのは、次のことです。
- 変われないのは、意志が弱いからとは限らない
- 人には、変化への準備状態がある
- 段階に合わない対策は続きにくい
- 戻ることは失敗ではなく、再設計の機会になる
- 小さく始め、記録し、戻れる仕組みを作ることが大切
まずは、自分がどの段階にいるかを確認してみてください。
まだ必要性を感じていないなら、記録から。迷っているなら、理由の整理から。始める直前なら、具体的な実行計画から。すでに始めているなら、続ける仕組みから。
習慣は、突然別人になることで変わるものではありません。
今の段階に合った一歩を選び、その一歩を繰り返せる環境を作ることで、少しずつ変わっていきます。