犬・猫のワクチンは何回・いつまで?接種時期・混合ワクチン・副反応を解説
結論からいうと、子犬・子猫の主要なワクチンは、生後6〜8週ごろから始め、2〜4週間隔で生後16週以降まで複数回接種するのが基本です。開始時期によって2回、3回、4回と変わるため、回数だけでなく、最後に接種した週齢が重要になります。
成犬・成猫になってからは、すべてのワクチンを毎年同じように打つとは限りません。病気の種類、使用する製品、生活環境、過去の接種歴によって、年1回が適するものと、3年程度の間隔を取れるものがあります。
また、ワクチンに一律の終了年齢はありません。高齢になっても感染する可能性はあるため、年齢だけで中止せず、持病、副反応歴、外出頻度、抗体価などを踏まえて判断します。
幼齢期は「何回打ったか」より「16週齢以降まで接種したか」、成長後は「毎年かどうか」より「どの病気をどの間隔で予防するか」が大切です。
1. 犬・猫の接種時期と回数の早見表
一般家庭で飼育される健康な犬・猫の目安は次のとおりです。国内では、使用する製品の添付文書とかかりつけ獣医師の判断が優先されます。
| 対象 | 初回接種の目安 | 追加接種の考え方 |
|---|---|---|
| 子犬のコアワクチン | 生後6〜8週ごろから2〜4週間隔で、16週齢以降まで | 生後26週ごろの追加接種または抗体価検査を検討 |
| 子猫のコアワクチン | 生後6〜8週ごろから2〜4週間隔で、16週齢以降まで | 生後26週ごろの追加接種または抗体価検査を検討 |
| 成犬・成猫のコアワクチン | 接種歴が不明なら年齢や製品に応じて再構成 | 十分な免疫成立後は3年程度の間隔を取れる場合がある |
| ノンコアワクチン | 製品によって初回1回または2回 | 年1回など、感染リスクと製品に合わせる |
| 犬の狂犬病予防注射 | 生後91日以上 | 日本では毎年1回が法律上の義務 |
世界小動物獣医師会(WSAVA)の2024年ガイドラインでは、子犬・子猫のコアワクチンを2〜4週間隔で接種し、最終接種を16週齢以降に行うことが推奨されています。
少数ながら16週齢の時点でも母親由来の抗体が残っている個体がいるため、26週齢ごろの追加接種、または20週齢以降の抗体価検査も選択肢とされています。
2. コアワクチン・ノンコアワクチン・混合ワクチンの違い
ワクチンは、必要性によって大きくコアとノンコアに分けられます。
コアワクチンは、重症化しやすく、広い地域で感染する可能性がある病気に対して、原則として多くの犬・猫に必要と考えられるものです。
ノンコアワクチンは、任意ワクチンとも呼ばれます。「重要ではない」という意味ではなく、居住地域や暮らし方によって必要性が変わるワクチンです。
| 分類 | 犬の主な対象 | 猫の主な対象 |
|---|---|---|
| コア | 犬ジステンパー、犬アデノウイルス、犬パルボウイルス | 猫汎白血球減少症、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス |
| 生活環境で選ぶもの | レプトスピラ、パラインフルエンザ、ボルデテラなど | 猫白血病ウイルスなど |
| 法律上別に管理するもの | 狂犬病 | 国内で犬と同じ接種義務はない |
混合ワクチンは、複数の病原体に対する成分を1本にまとめた製品です。「3種」「5種」「8種」などの数字は、含まれる抗原の数を示します。
数字が大きいほど優れているわけではありません。感染する可能性がほとんどない病気の成分まで増やしても、得られる利益が大きいとは限らないためです。
なお、同じ「5種」や「8種」という名称でも、製品によって含まれる成分が異なる場合があります。数字だけで選ばず、病気の名称まで確認することが大切です。
3. 子犬のワクチンは2回・3回・4回のどれが正しい?
子犬の接種回数が一定でないのは、母犬から受け継いだ移行抗体が関係しています。
移行抗体は幼い子犬を感染症から守りますが、ワクチンに含まれる抗原まで中和し、十分な免疫が作られないことがあります。移行抗体が減る時期には個体差があるため、一定間隔で複数回接種します。
接種例は次のとおりです。
| 初回接種 | その後の接種例 | 合計 |
|---|---|---|
| 生後6週 | 6週・10週・14週・18週 | 4回 |
| 生後8週 | 8週・12週・16週 | 3回 |
| 生後10週 | 10週・14週・18週 | 3回 |
| 生後12週 | 12週・16週 | 2回 |
これは標準的な考え方を示した例であり、すべての子犬に同じ日程が適用されるわけではありません。感染リスクが特に高い地域や施設では、18〜20週齢まで接種を続ける場合もあります。
ペットショップやブリーダーのもとで「2回接種済み」でも、2回目が16週齢より前なら、追加接種が必要になる可能性があります。証明書に書かれた接種日、製品名、対象となる病気を動物病院で確認してください。
4. 子猫の3種混合は何回必要?
子猫も移行抗体の影響を受けるため、生後6〜8週ごろから接種を始め、2〜4週間隔で16週齢以降まで続けるのが基本です。一般家庭では3回前後になることが多いものの、開始時期によって回数は変わります。
一般的な猫の3種混合は、次の感染症を対象とします。
| 病気 | 主な症状や特徴 |
|---|---|
| 猫汎白血球減少症 | 発熱、嘔吐、下痢、白血球減少。子猫では重症化しやすい |
| 猫ウイルス性鼻気管炎 | くしゃみ、鼻水、結膜炎。回復後もウイルスが潜伏することがある |
| 猫カリシウイルス感染症 | 発熱、口内炎、呼吸器症状など。ウイルス株によって症状が異なる |
完全室内飼育でも、脱走、通院、災害時の避難、新しい猫の迎え入れなどによって接触機会が生じます。飼い主の靴や衣類、持ち込んだ物を介して病原体に触れる可能性もあるため、「外に出ないからすべて不要」とは言い切れません。
猫白血病ウイルスワクチンは、外へ出る猫、感染状況が分からない猫と接触する猫、多頭飼育の若い猫などで必要性が高まります。接種前に猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスの検査を行うこともあります。
5. 成犬・成猫は毎年打つ必要がある?
「混合ワクチンは必ず毎年」「すべて3年おきでよい」のどちらも、全成分に当てはまるわけではありません。
犬のジステンパー、アデノウイルス、パルボウイルスなど、一部のコアワクチンは、適切な初回接種によって免疫が成立した後、3年以上の免疫持続が期待できる製品があります。
一方、レプトスピラやボルデテラなど、免疫の持続が比較的短いものは、感染リスクが続く場合に年1回程度の追加接種が必要になることがあります。
猫でも、低リスクの成猫と、外へ出る猫、多頭飼育の猫、預かり施設を利用する猫では接種間隔が異なります。猫ヘルペスウイルスやカリシウイルスに対する防御は、猫汎白血球減少症と同じように評価できるとは限りません。
毎年の健康診断と、毎年同じ混合ワクチンを接種することは別です。
年1回は健康状態と感染リスクを確認し、その年に必要なワクチンだけを選ぶ方法があります。
6. 老犬・老猫は何歳まで続ける?
終了年齢を一律に決めることはできません。
高齢になると外出が減る一方、免疫機能の低下や持病によって、感染した場合に重症化しやすくなる可能性があります。反対に、過去に十分な接種歴があり、外出や他の動物との接触がほとんどなければ、追加接種の間隔を延ばせることもあります。
判断材料となるのは次のような項目です。
- 過去の接種歴と最終接種日
- 散歩、外出、旅行の頻度
- 多頭飼育や新しい動物との接触
- ペットホテル、サロン、入院施設の利用
- 持病や免疫を抑える治療の有無
- 過去の副反応
- 抗体価検査の結果
発熱、嘔吐、下痢、持病の悪化などがある日は、延期が検討されます。高齢だからすべて中止するのではなく、必要な成分だけに絞る、同時接種を避ける、抗体価を調べるといった方法を相談します。
7. 暮らし方で必要な種類はどう変わる?
同じ年齢や犬種・猫種でも、生活環境によって感染リスクは異なります。
| 暮らし方 | 確認したいワクチン |
|---|---|
| ドッグランやしつけ教室を利用する犬 | 呼吸器感染症に関係する成分 |
| ホテルやトリミング施設を利用する犬 | 施設が指定する混合ワクチン |
| キャンプ、川遊び、田畑の散歩が多い犬 | レプトスピラ |
| 完全室内飼育で単頭飼育の猫 | 3種混合を中心に検討 |
| 外へ出る猫 | 3種混合に加え、猫白血病ウイルスなど |
| 保護されたばかりで接種歴がない犬・猫 | 健康状態や感染検査を踏まえて再構成 |
| 海外へ移動する犬・猫 | 渡航先と動物検疫の条件を確認 |
ペットホテルなどが「1年以内の接種証明書」を利用条件にしていることがあります。医学的に適切な接種間隔と施設の利用規約は同じとは限らないため、予約前に確認しておきましょう。
8. 犬の狂犬病予防注射は混合ワクチンとは別
日本では、生後91日以上の犬に対し、狂犬病予防注射を毎年1回受けさせることが法律で義務付けられています。
混合ワクチンを接種していても、狂犬病予防注射の代わりにはなりません。接種後は、市区町村から注射済票の交付を受け、犬に装着する必要があります。
厚生労働省の狂犬病情報では、2026年時点で4月から6月が予防注射月間として案内されています。
一方、厚生労働省は注射時期の規定を見直し、通年接種を可能にする方針を示しています。2026年公表の資料では、2027年3月2日からの施行予定とされています。
制度変更後も、毎年1回という義務そのものがなくなるわけではありません。 施行時期や注射済票の手続きは変更される可能性があるため、接種する年度の自治体案内を確認してください。
持病や過去の重い副反応によって接種が心配な場合も、飼い主だけで中止せず、獣医師と市区町村に相談します。
9. ワクチン費用はいくらかかる?
犬・猫の混合ワクチンは自由診療のため、全国一律の料金ではありません。接種する種類、診察料、地域、動物病院によって異なり、1回数千円台から1万円前後になることがあります。
| 費用項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 犬の混合ワクチン | 5種・8種などの種類、診察料の有無 |
| 猫の混合ワクチン | 3種・追加成分の有無 |
| 狂犬病予防注射 | 注射料金と注射済票交付手数料 |
| 抗体価検査 | 調べる抗体の種類、外部検査か院内検査か |
| 接種証明書 | 接種料金に含まれるか、別料金か |
狂犬病の集合注射は、自治体によって3,000円台に設定される例がありますが、個別の動物病院では料金が異なる場合があります。
また、ペット保険は病気やけがの治療を補償するものが中心で、予防目的のワクチン接種は原則として補償対象外になることが一般的です。健康診断や予防費用を支援する特約・付帯サービスの有無は契約ごとに確認します。
10. 接種後に起こりやすい副反応
ワクチン接種後には、一般に副作用とも呼ばれる副反応が起こることがあります。
比較的軽い反応には、次のようなものがあります。
- 眠そうにする
- 元気や食欲がやや落ちる
- 注射した場所を痛がる
- 小さな腫れができる
- 微熱が出る
- 一時的な嘔吐や下痢
多くは短期間で改善しますが、症状が強い、翌日以降も悪化する、水が飲めない場合は動物病院へ連絡してください。
日本獣医師会雑誌に掲載された犬用ワクチンの報告では、2018〜2020年度の国内報告データを基に、狂犬病ワクチンと混合ワクチンの副反応が分析されています。ただし、副反応報告と製造量から算出した数字であり、実際の発生率を正確に示すものではありません。
すぐに動物病院へ連絡すべき症状
- 顔、まぶた、口の周囲が急に腫れる
- 呼吸が苦しそうになる
- 繰り返し吐く、激しい下痢をする
- 全身にじんましんが出る
- ぐったりして立てない
- 舌や歯茎の色が青白い
- けいれん、失神、意識の異常がある
重いアレルギー反応は接種後早期に起こることがあるため、過去に副反応があった犬・猫は、午前中など病院が開いている時間帯に接種すると対応しやすくなります。
猫の注射部位にしこりが残る場合は、AAHA・AAFPのガイドラインが示す「3-2-1ルール」が目安になります。
- 接種から3か月たっても残る
- 直径が2cmを超える
- 接種から1か月後も大きくなっている
いずれかに当てはまる場合は、早めに動物病院で評価を受けてください。
11. 接種前後に飼い主ができること
副反応を完全になくすことはできませんが、異常を早く発見できるように準備できます。
接種前に伝えること
- 過去に接種した製品名と接種日
- 顔の腫れ、嘔吐、呼吸困難などの副反応歴
- 現在の食欲、便、嘔吐、咳などの体調
- 持病や妊娠の可能性
- ステロイドや免疫抑制薬などの服薬
- 接種後にホテルや旅行を予定していないか
接種後の過ごし方
- 当日は激しい運動を避ける
- 長時間の散歩やドッグランは控える
- シャンプーや大きな環境変化を避ける
- 呼吸、顔の腫れ、嘔吐、元気を観察する
- 異常が出た時刻を記録する
- 接種証明書を保管する
食事は通常どおりでも構いませんが、吐き気がある場合は無理に食べさせず、動物病院へ相談してください。人間用の解熱鎮痛薬や抗アレルギー薬を自己判断で与えてはいけません。
12. 抗体価検査でワクチンの代わりにできる?
抗体価検査は、血液中の特定の抗体を測定し、免疫が残っているかを判断するための検査です。
犬では、犬ジステンパー、犬アデノウイルス、犬パルボウイルス、猫では猫汎白血球減少症について、追加接種を検討する材料として使いやすいとされています。
一方、レプトスピラ、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスなどは、血中抗体の数値だけで防御状態を正確に判断しにくい場合があります。
抗体価検査が役立ちやすいのは、次のようなケースです。
- 過去に重い副反応があった
- 高齢や持病で接種の負担が心配
- コアワクチンの追加時期を検討したい
- 接種歴が不明
- 免疫を抑える治療を受けている
犬の狂犬病予防注射は、通常の抗体価検査だけで国内の法的義務を置き換えることはできません。ホテルなどが抗体価証明書を接種証明書の代わりとして認めるかどうかも、施設ごとに異なります。
13. よくある質問
Q. 子犬・子猫は3回打てば必ず終了ですか?
回数だけでは決められません。最後のコアワクチンが16週齢以降に接種されているかが重要です。初回の時期によって2回、3回、4回になることがあります。
Q. 予定日を過ぎたら最初からやり直しですか?
必ず最初からやり直すわけではありません。年齢、空いた期間、ワクチンの種類によって必要な回数が異なります。過去の接種証明書を持って受診してください。
Q. 完全室内飼いの猫にも必要ですか?
コアワクチンは検討する価値があります。通院、脱走、災害避難、新しい猫との接触など、室内猫にも感染機会が生じるためです。猫白血病ウイルスなどは生活環境によって判断します。
Q. 混合ワクチンは種類が多いほど安心ですか?
種類が多いほどよいとは限りません。居住地域、散歩場所、ほかの動物との接触などから、必要な成分を選びます。
Q. 接種後は散歩してもよいですか?
排泄のための短い散歩は可能なことがありますが、激しい運動や長時間の外出は避けます。子犬の散歩開始時期は地域の感染状況も関係するため、接種した動物病院に確認してください。
Q. 高齢ならワクチンをやめてもよいですか?
年齢だけで中止を決めることはできません。過去の接種歴、感染リスク、持病、副反応歴、抗体価を基に、接種間隔や成分を調整します。
Q. 狂犬病予防注射と混合ワクチンは同じ日に打てますか?
健康状態や製品によって判断が異なります。過去に副反応がある、小型犬、高齢犬、持病がある場合などは、接種日を分けることも検討されます。
14. 接種記録を残して毎年計画を見直そう
犬・猫のワクチン管理は、毎年同じ注射を機械的に繰り返すことでも、一定の年齢になったらすべて中止することでもありません。
- 子犬・子猫は生後6〜8週ごろから始め、16週齢以降まで複数回接種する
- 回数より最終接種時の週齢を確認する
- 生後26週ごろの追加接種や抗体価検査も検討する
- 成長後はコアと生活環境で選ぶ成分を分けて考える
- 犬の狂犬病予防注射は混合ワクチンと別に毎年管理する
- 高齢になっても年齢だけで中止しない
- 接種後の呼吸困難、顔の腫れ、虚脱は緊急症状と考える
接種証明書には、接種日だけでなく、製品名、対象となる感染症、副反応の有無も記録しておくと安心です。
次回の健康診断では、「何種を打つか」だけでなく、どの病気を、なぜ、どのくらいの間隔で予防するのかを獣医師に確認してください。