英語を話すと性格が変わるのは本当?バイリンガル研究でわかる脳と心理の変化
英語で話すと、いつもより少し積極的になる。日本語では言いにくいことも、英語なら不思議と言える。そんな感覚を持ったことはありませんか。
結論から言うと、外国語を使ったからといって、人格そのものが別人に入れ替わるわけではありません。しかし、使う言語によって、自己表現・感情の距離感・判断の仕方が変わることは、複数の研究で示されています。
つまり、「英語で話している自分は、日本語の自分と少し違う」という感覚は、単なる思い込みではありません。
言語は、単語や文法だけの道具ではありません。そこには文化、対人距離、感情表現、話す順番、意見の出し方まで含まれています。英語を使うとき、人は英語の文法だけでなく、英語でのコミュニケーションの型も一緒に使っています。
この記事では、バイリンガル研究・心理学・外国語効果の知見をもとに、言語と性格の関係をわかりやすく整理します。最後には、英語学習にどう活かせばよいかも具体的に紹介します。
1. 英語で自分が変わる感覚は珍しくない
英語学習者の中には、次のように感じる人がいます。
- 英語だと意見をはっきり言いやすい
- 日本語よりも明るいリアクションができる
- 英語では少し大胆になれる
- 日本語で言うと恥ずかしい言葉も、英語なら言いやすい
- 英語を話していると、自分のキャラクターが変わる気がする
この感覚は、特に日本語話者にとって起こりやすいものです。
日本語では、相手との関係性や場の空気を細かく調整する表現が多く使われます。「すみません」「一応」「たぶん」「もしよければ」「大丈夫そうですか」など、直接言い切らずに相手への配慮を示す言い方が自然です。
一方、英語では I think...、I want to...、I agree.、I don’t think so. のように、主語を立てて自分の考えを表す機会が多くなります。
この違いによって、英語では自分の意見や感情を前に出しやすくなります。
| 日本語で起こりやすいこと | 英語で起こりやすいこと |
|---|---|
| 相手の反応を先に考える | 自分の意見を先に出す |
| 遠回しに伝える | 短く直接伝える |
| 謙遜する | できることを説明する |
| 空気を読む | 質問して確認する |
| 沈黙で調整する | 言葉で反応する |
もちろん、英語を話すすべての人が外向的になるわけではありません。ただ、英語の表現形式そのものが、自己主張やリアクションを後押しすることがあります。
その結果、「性格が変わった」というより、普段は出にくい自分の一面が、英語によって出やすくなるのです。
2. 「人格が変わる」と「自己表現が変わる」は違う
このテーマで最初に整理したいのは、「人格」と「自己表現」は同じではないという点です。
人格が変わるというと、まるで別人になるような印象があります。しかし、外国語を使ったときに起きる変化の多くは、医学的・根本的な人格変化ではありません。
実際に起きているのは、次のような変化です。
| 変化の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 表現の変化 | 英語では結論から話す |
| 感情の変化 | 母語より恥ずかしさが弱まる |
| 行動の変化 | 質問やリアクションが増える |
| 思考の変化 | 少し客観的に考えやすくなる |
| 文化的ふるまいの変化 | 英語圏の会話スタイルに寄る |
たとえば、日本語では「それは違うと思います」と言うのに少し抵抗があっても、英語では I see your point, but I think... と言いやすいことがあります。
これは、英語が自分を変えてしまったのではありません。英語には、反対意見を比較的フラットに伝える型があり、その型を借りることで意見を出しやすくなっているのです。
外国語で出てくる自分は、偽物ではありません。
その言語によって引き出された、自分の一部です。
日本語の自分も、英語の自分も、どちらも本物です。
3. バイリンガル研究では何がわかっているのか
言語によって自己認識や性格評価が変わる現象は、心理学でも研究されています。
代表的な研究に、Ramírez-Esparzaらによるスペイン語・英語バイリンガルの研究があります。この研究では、同じバイリンガルでも、スペイン語で回答した場合と英語で回答した場合で、性格特性の自己評価に違いが見られました。
研究者たちは、この現象を文化的フレーム・スイッチングの一例として説明しています。
参考:Do bilinguals have two personalities? A special case of cultural frame switching
文化的フレーム・スイッチングとは、簡単に言えば、使う言語が変わることで、その言語に結びついた文化的な見方や行動様式が呼び起こされることです。
たとえば、英語と日本語を使う人なら、次のような切り替えが起こる可能性があります。
| 使用言語 | 前面に出やすい意識 |
|---|---|
| 日本語 | 調和、配慮、関係性、文脈 |
| 英語 | 意見、選択、理由、明確さ |
これは「二重人格」という意味ではありません。
人はそもそも、相手や場面によって話し方を変えています。家族と話す自分、職場で話す自分、友人と話す自分が少し違うのと同じです。バイリンガルの場合、その切り替えに「言語」が強く関わることがあります。
つまり、英語を話すと自分が変わるように感じるのは、英語に結びついた文化的な自己表現モードに切り替わっていると考えられます。
4. なぜ英語だと積極的に話せる人がいるのか
英語で話すと積極的になる理由は、主に3つあります。
1つ目は、英語には自分を主語にする表現が多いことです。
英語では、意見・希望・感情を表すときに I を使う場面が多くあります。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
I think... | 私は〜だと思う |
I feel... | 私は〜と感じる |
I’d like to... | 私は〜したい |
I’m not sure, but... | 確信はないけれど〜 |
Can I ask...? | 質問してもいいですか |
こうした表現を使うと、自分の考えを言語化する練習になります。日本語では曖昧にしていた感情や意見も、英語では文の形にしやすくなります。
2つ目は、外国語では完璧でなくてもよいという前提があることです。
母語で間違えると恥ずかしく感じる人でも、英語では「学習中だから間違えて当然」と考えやすくなります。そのため、発言のハードルが少し下がります。
3つ目は、英語の会話ではリアクションが見えやすいことです。
Really?、That’s great!、Exactly.、Sounds good. など、短い反応を入れるだけでも会話が続きます。こうした表現を覚えると、会話中に「参加している感覚」が生まれやすくなります。
英語で積極的になる人は、もともと別人になったわけではありません。英語の型によって、意見を出す・反応する・質問する行動が取りやすくなっているのです。
5. 外国語で考えると冷静になる「外国語効果」
言語と思考の関係でよく知られているのが、外国語効果です。
Keysarらの研究では、外国語で考えると、意思決定におけるバイアスが弱まる可能性が示されました。研究では、外国語を使うことでフレーミング効果や損失回避の影響が小さくなる場面が報告されています。
参考:The Foreign-Language Effect: Thinking in a Foreign Tongue Reduces Decision Biases
PubMedの要約でも、外国語は母語よりも認知的・感情的な距離を与える可能性があると説明されています。
参考:PubMed: Thinking in a foreign tongue reduces decision biases
これは、「英語で考えれば必ず正しい判断ができる」という意味ではありません。
むしろ、母語より感情との距離が生まれやすいため、衝動的な反応が少し弱まり、選択肢を客観的に見やすくなることがある、という理解が正確です。
たとえば、次のような場面では役立つ可能性があります。
| 場面 | 英語で考える効果 |
|---|---|
| 失敗を振り返る | 自分を責めすぎずに整理しやすい |
| 目標を立てる | 感情より行動に目を向けやすい |
| 悩みを書く | 少し外側から自分を見やすい |
| 交渉を考える | 要点と理由を分けて考えやすい |
| 将来の選択を考える | 損得や優先順位を整理しやすい |
英語で日記を書く、英語で目標を一文にする、英語で自分の意見を説明してみる。こうした学習は、単語力だけでなく、思考の整理にもつながります。
6. バイリンガルの脳に起こる変化とは
外国語を使うとき、脳は単に単語を置き換えているだけではありません。
複数の言語を使う人は、状況に応じて使う言語を選び、使わない言語を抑え、相手に合わせて表現を調整しています。これは、注意の切り替えや認知的なコントロールと関わる活動です。
OECDは、外国語学習の利点として、異文化理解、教育・雇用機会、認知的柔軟性や問題解決力などを挙げています。
参考:OECD: Foreign language learning
ただし、注意点もあります。
「バイリンガルは必ず脳機能が高い」「外国語を学べば誰でも認知能力が大きく上がる」と断定するのは正確ではありません。バイリンガルの認知的優位性については、研究によって結果が分かれる部分もあります。
大切なのは、外国語学習を過剰に神格化しないことです。
正確には、次のように考えるとよいでしょう。
外国語学習は、思考の柔軟性や異文化理解を広げる可能性がある。
ただし、学ぶだけで能力が劇的に変わると断定するのは言いすぎ。
英語学習の本質的な価値は、脳トレ効果だけではありません。別の言語で考え、表現し、人とつながれるようになることにあります。
7. なぜ今、英語で自己表現する力が重要なのか
英語は、受験や資格だけのための科目ではなくなっています。
文部科学省の令和6年度「英語教育実施状況調査」では、第4期教育振興基本計画において、中学校卒業段階でCEFR A1相当以上、高等学校卒業段階でCEFR A2相当以上を達成した生徒の割合を6割以上にする目標が示されています。
また、EF English Proficiency Index 2025では、日本の英語力は123か国・地域中96位とされ、区分は「Very Low」とされています。
参考:EF EPI Japan
この数字から見えるのは、日本では英語の必要性が高まる一方で、実際に使える英語力にはまだ課題があるということです。
だからこそ、英語を「テストの点数」だけで見るのではなく、自分の考えを伝えるための道具として捉えることが重要になります。
英語で自分を表現できるようになると、次のような場面で選択肢が広がります。
- 海外の情報を直接読める
- 仕事で意見を伝えられる
- 留学や海外旅行で交流しやすくなる
- 英語面接や資格試験に対応しやすくなる
- 日本語では言いにくい自分の考えを整理できる
英語を話すと自分が少し変わる感覚は、恥ずかしいものではありません。新しい言語で、新しい自己表現を試しているサインです。
8. 日本人英語学習者が感じやすい変化
日本語話者が英語を学ぶとき、特に感じやすい変化があります。
1つ目は、結論から話す意識が強くなることです。
日本語では背景や配慮を先に述べることがありますが、英語では結論を先に置くと伝わりやすくなります。
例:
| 日本語的な考え方 | 英語での言い方 |
|---|---|
| いろいろ考えたんですが、私はAがいいかもしれません | I think A is better because... |
| もし大丈夫なら質問してもいいですか | Can I ask a question? |
| ちょっと難しいかもしれません | It might be difficult. |
2つ目は、褒め言葉や感情表現が増えることです。
英語では、Great!、Nice!、I’m excited.、I’m happy to hear that. など、短い感情表現をよく使います。これに慣れると、ポジティブな反応を出しやすくなります。
3つ目は、断る練習になることです。
日本語では「ちょっと難しいです」「検討します」とぼかす場面でも、英語では I’m afraid I can’t. や I don’t think I can. のように、比較的はっきり伝える必要があります。
4つ目は、自分の実績を説明する意識が生まれることです。
英語の面接やビジネス会話では、自分が何をしたか、何ができるかを具体的に説明する場面があります。日本語の謙遜とは違う表現が求められるため、自己理解が深まることもあります。
このような変化は、性格が派手に変わるというより、英語を使うことで行動の選択肢が増えると考えると自然です。
9. 英語の自分を育てる練習法
英語学習では、単語や文法を覚えるだけでなく、「英語でどんな自分として話したいか」を考えると、学習が続きやすくなります。
たとえば、次のような目標です。
- 英語では、結論から話せる自分になる
- 英語では、質問を恐れない自分になる
- 英語では、感情を短く言える自分になる
- 英語では、ミスをしても会話を続けられる自分になる
- 英語では、相手に興味を示せる自分になる
具体的な練習としては、次の方法が役立ちます。
| 目的 | 練習する英文 |
|---|---|
| 意見を言えるようになりたい | I think... because... |
| 感情を表したい | I feel... when... |
| 質問できるようになりたい | Can I ask...? |
| 会話で止まりたくない | Let me think. |
| 断れるようになりたい | I’m afraid I can’t. |
| 褒められるようになりたい | That sounds great. |
大切なのは、長い英文をいきなり話そうとしないことです。まずは短い型を1つ覚え、実際の場面で使えるようにするほうが効果的です。
英語で話す自分を育てるには、短時間でも毎日英語に触れる環境が重要です。完全無料で使えるDailyDropsのような学習サービスを使えば、英会話・TOEIC・資格・受験勉強を横断しながら、日々の学習を積み上げられます。
DailyDropsは、学習行動がユーザーに還元される共益型プラットフォームです。英語を「知識」として覚えるだけでなく、毎日少しずつ使える表現を増やしたい人にとって、学習の選択肢の一つになります。
10. よくある誤解と注意点
このテーマは面白い一方で、誤解も生まれやすいです。
特に注意したいのは、次の5つです。
| 誤解 | 実際に近い理解 |
|---|---|
| 外国語を学ぶと別人格になる | 同じ人の中の別の側面が出やすくなる |
| 英語を話すと全員が外向的になる | 英語の表現形式が自己主張を助けることがある |
| バイリンガルは必ず頭がよくなる | 効果は課題・年齢・環境によって異なる |
| 外国語なら常に冷静に判断できる | 感情距離が生まれることはあるが、万能ではない |
| ネイティブらしく話せないと意味がない | 自分の考えを伝えられることが最も重要 |
特に、「英語で話す自分は本当の自分ではない」と感じる必要はありません。
日本語では控えめな自分、英語では少し積極的な自分。どちらも本物です。人は使う言葉、相手、場所、目的によって表現を変えます。英語は、その変化をわかりやすく見せてくれるだけです。
また、外国語効果についても過信は禁物です。外国語で考えると冷静になれる場面はありますが、語彙力や文法力が不足していると、逆に誤解や情報不足による判断ミスが起こることもあります。
英語学習では、「性格を変えよう」とするより、表現できる自分の幅を増やすという意識を持つほうが健全です。
11. よくある質問
Q1. 英語を話すと自分が変わったように感じるのはなぜですか?
英語では、主語を明確にして意見や感情を表す表現が多く使われます。また、英語に結びついた文化的な会話スタイルも影響します。そのため、普段より積極的・直接的に話しているように感じることがあります。
Q2. バイリンガルは言語ごとに人格が違うのですか?
完全に別人格になるわけではありません。ただし、使う言語によって自己評価やふるまいが変わることは研究で示されています。これは、言語ごとに結びついた文化的なフレームが切り替わるためだと考えられています。
Q3. 外国語で考えると冷静になるのは本当ですか?
本当の場合があります。外国語は母語よりも感情との距離が生まれやすく、意思決定のバイアスが弱まる場面が報告されています。ただし、すべての判断で必ず冷静になるわけではありません。
Q4. 英語を話すと積極的になる人が多いのはなぜですか?
英語には I think...、I want to...、Can I ask...? のように、自分の意見や希望を明確に表す型が多くあります。その型を使うことで、意見を出すハードルが下がることがあります。
Q5. 大人から英語を学んでも考え方は変わりますか?
変わる可能性はあります。大人は経験や目的意識があるため、英語を単なる暗記ではなく、仕事・学習・自己表現に結びつけやすいです。英語で日記を書く、意見を説明する、質問する練習を続けることで、考え方や表現の幅は広がります。
Q6. 英語で話す自分に違和感があるのは普通ですか?
普通です。外国語では、発音、語順、リアクション、感情表現が母語と違うため、最初は自分らしくないと感じることがあります。慣れてくると、日本語の自分と英語の自分が少しずつ自然につながっていきます。
Q7. 英語学習で本当に性格を変えることはできますか?
性格そのものを無理に変える必要はありません。ただし、英語を通じて「質問する」「意見を言う」「感情を表す」「断る」といった行動を練習することで、自己表現の幅は広がります。その結果、周囲からは以前より積極的に見えることがあります。
12. まとめ
外国語を使っても、人格そのものが別人に入れ替わるわけではありません。
しかし、言語は思考・感情・文化・自己表現と深く結びついています。そのため、英語を使うと次のような変化が起こることがあります。
- 意見をはっきり言いやすくなる
- 感情と少し距離を取れる
- 判断を客観視しやすくなる場面がある
- 会話中のリアクションが変わる
- 自分の考えを言葉にする機会が増える
これは「別人になる」というより、自分の中にあった別の可能性が、英語によって引き出されるということです。
英語学習の価値は、単語や文法を覚えることだけではありません。別の言語で考え、話し、人とつながることで、自分の見え方や行動の選択肢が少しずつ広がっていきます。
まずは、短い一文からで十分です。
I think...
I feel...
Can I ask...?
こうした小さな表現を積み重ねることで、英語で話す自分は少しずつ自然になっていきます。英語の自分は、遠い誰かではありません。これから育っていく、もう一つの自分の表現方法です。