ロコモティブシンドロームとは?7項目セルフチェック・原因・予防法を解説
結論からいうと、ロコモは、骨・関節・筋肉・神経などの問題によって「立つ・歩く」といった移動機能が低下した状態です。 単なる筋力不足や年齢による変化とは限らず、変形性関節症、骨粗しょう症、脊椎の病気、運動不足など、複数の要因が関係します。
「片脚で靴下を履けない」「階段で手すりが必要になった」「15分続けて歩けない」といった変化は、足腰の機能が衰えているサインかもしれません。
早い段階で気づき、自分に合った運動や食事、必要な治療に取り組めば、進行を抑えたり移動機能を改善したりできる可能性があります。ただし、セルフチェックは医師による診断ではありません。痛み、しびれ、転倒、急な歩行能力の低下がある場合は、整形外科などで原因を確認することが大切です。
| 確認したいこと | 要点 |
|---|---|
| どのような状態か | 運動器の障害によって移動機能が低下した状態 |
| 主なサイン | つまずく、階段がつらい、長く歩けない |
| 確認方法 | 7項目のロコチェック、3種類のロコモ度テスト |
| 主な対策 | 筋力・バランス運動、活動量の確保、食生活の見直し |
| 受診の目安 | 痛み、しびれ、転倒、急な悪化がある場合 |
1. ロコモは「移動する力」が低下した状態
ロコモは「ロコモティブシンドローム」の略称で、日本語では運動器症候群とも呼ばれます。
日本整形外科学会は、運動器の障害によって、立ったり歩いたりするための身体能力である移動機能が低下した状態と説明しています。
運動器とは、身体を動かすために連携して働く仕組みの総称です。
- 骨:身体を支え、筋肉が力を伝える土台になる
- 関節・軟骨・椎間板:身体を動かし、衝撃を和らげる
- 筋肉・腱:関節を動かし、姿勢を保つ
- 脊髄・末梢神経:脳からの指令や身体の感覚を伝える
どれか一つに問題が生じても、立つ、歩く、階段を上るといった動作に影響することがあります。
ロコモは特定の一つの病名ではなく、運動器の問題によって移動機能が落ちている状態を表す言葉です。
筋肉だけでなく、骨、関節、神経なども対象になる点が重要です。
2. ロコモの初期症状は?7項目セルフチェック
ロコモは、明らかに歩けなくなる前から日常生活の小さな変化として表れることがあります。
次の7項目を確認してみましょう。
- 片脚で立った状態では靴下を履きにくい
- 家の中でつまずいたり滑ったりすることがある
- 階段を上るときに手すりを使いたくなる
- 掃除機かけや布団の上げ下ろしがつらい
- 約2kgの買い物を持ち帰るのが難しい
- 15分ほど続けて歩くことができない
- 青信号の間に横断歩道を渡り切れない
日本整形外科学会のロコチェックでは、一つでも該当すると、運動器が衰えている可能性があるとしています。
ただし、該当しただけで病気やロコモが確定するわけではありません。次の点も合わせて振り返ることが大切です。
- 以前はできていたのに、最近できなくなったか
- 左右の脚で大きな差があるか
- 痛みやしびれを伴っているか
- 外出や家事を避けるようになったか
- 過去1年間につまずきや転倒が増えたか
たとえば、片脚立ちが難しいだけなら、バランス能力が落ち始めている可能性があります。一方、片脚立ちに加えて腰痛や脚のしびれがある場合は、筋力不足だけでなく、脊椎や神経の問題も考える必要があります。
3. ロコチェックとロコモ度テストの違い
ロコモの確認方法には、簡易的なロコチェックと、移動機能の段階を詳しく調べるロコモ度テストがあります。
| 確認方法 | 主な目的 | 結果の考え方 |
|---|---|---|
| ロコチェック | 日常生活の変化に気づく | 1項目でも該当すれば注意する |
| ロコモ度テスト | 移動機能の低下段階を調べる | ロコモ度1~3で評価する |
| 医療機関での診察 | 痛みや機能低下の原因を調べる | 病気の診断や治療方針を決める |
ロコチェックは、専門的な道具を使わずに生活上の変化を確認できる方法です。
一方のロコモ度テストでは、次の三つを使います。
- 立ち上がりテスト
- 2ステップテスト
- ロコモ25
三つの結果のうち、最も移動機能低下が進んだ段階が、その人のロコモ度になります。
セルフチェックや運動テストは、医師の診察の代わりにはなりません。転倒の危険がある人や、強い痛みがある人は、無理に自宅で試さないようにしてください。
4. ロコモ度テストの方法と判定基準
ロコモ度は、移動機能の低下が始まった段階から、社会参加に支障が出ている段階まで、1~3に分けられます。
立ち上がりテスト
高さの異なる台から、片脚または両脚で反動を使わずに立ち上がり、姿勢を保てるか確認します。主に下肢筋力を評価する方法です。
転倒しやすい人、膝や股関節に痛みがある人、手術後の人は、一人で行わないでください。
2ステップテスト
できる限り大きく2歩進んだ距離を測り、身長で補正します。
2ステップ値 = 最大2歩幅 ÷ 身長
2歩の距離が200cm、身長が160cmであれば、2ステップ値は200 ÷ 160 = 1.25です。
この結果には、下肢筋力だけでなく、バランス能力、柔軟性、歩行能力なども反映されます。
ロコモ25
過去1か月の身体の痛み、身の回りの動作、移動、社会参加、不安などに関する25の質問に答える方法です。
運動テストだけでは分かりにくい、生活上の困りごとや心理的な負担も評価できます。
主な判定基準は次のとおりです。
| 段階 | 状態の目安 | 立ち上がりテスト | 2ステップ値 | ロコモ25 |
|---|---|---|---|---|
| ロコモ度1 | 移動機能の低下が始まっている | 片脚で40cmから立てないが、両脚で20cmから立てる | 1.1以上1.3未満 | 7~15点 |
| ロコモ度2 | 移動機能の低下が進行している | 両脚で20cmから立てないが、30cmから立てる | 0.9以上1.1未満 | 16~23点 |
| ロコモ度3 | 社会参加に支障が生じている | 両脚で30cmから立てない | 0.9未満 | 24点以上 |
三つのうち一つでも基準に該当すれば、その段階に分類します。複数の段階に該当した場合は、最も進行している段階を判定結果とします。
詳しい実施方法は、公式のロコモ度判定方法で確認できます。
5. ロコモが起こる主な原因
移動機能が低下する原因は一つではありません。運動器の病気、身体機能の衰え、生活習慣などが重なって起こります。
| 要因 | 具体例 | 起こりやすい変化 |
|---|---|---|
| 骨の問題 | 骨粗しょう症、骨折 | 痛み、姿勢変化、歩行能力の低下 |
| 関節の問題 | 変形性膝関節症、変形性股関節症 | 階段や立ち上がりがつらい |
| 脊椎・神経の問題 | 脊柱管狭窄症、神経障害 | 腰痛、しびれ、長く歩けない |
| 筋肉の衰え | 運動不足、加齢、低栄養 | 立ち上がりにくい、歩幅が狭くなる |
| 生活上の要因 | 座りすぎ、肥満、過度な安静 | 筋力低下、関節への負担増加 |
代表的なのが、痛みと運動不足による悪循環です。
膝や腰が痛む
↓
外出や運動を避ける
↓
筋力・バランス能力が低下する
↓
関節が不安定になり、歩きにくくなる
↓
転倒への不安が増え、さらに動かなくなる
体重が多いと、膝や股関節への負担が増えることがあります。一方、やせすぎや低栄養では、筋肉や骨を維持するためのエネルギーと栄養素が不足する可能性があります。
「太っているから減量すればよい」「やせているから関節には安全」と単純には判断できません。筋肉を維持しながら、体格や持病に合った食事と運動を続ける必要があります。
6. サルコペニア・フレイルとの違い
ロコモ、サルコペニア、フレイルは混同されやすい言葉ですが、中心となる問題と対象範囲が異なります。
| 概念 | 中心となる問題 | 対象となる範囲 | 主な評価 |
|---|---|---|---|
| ロコモ | 移動機能の低下 | 骨、関節、筋肉、神経などの運動器 | 立ち上がり、歩幅、生活状況 |
| サルコペニア | 筋肉量・筋力・身体機能の低下 | 主に骨格筋 | 筋肉量、握力、歩行速度など |
| フレイル | ストレスへの回復力が低下した虚弱状態 | 身体、認知・心理、社会生活 | 体重減少、疲労、活動量、社会参加など |
日本サルコペニア・フレイル学会では、サルコペニアの判定に骨格筋量、筋力、身体機能が用いられることが説明されています。
違いを簡単に整理すると、次のようになります。
- 筋肉の量と働きを中心に見るのがサルコペニア
- 骨・関節・筋肉・神経と移動能力を見るのがロコモ
- 身体・心理・社会生活を含む虚弱全体を見るのがフレイル
同じ人が複数の状態に該当することもあります。
たとえば、筋肉量と筋力が落ちてサルコペニアが生じると、歩行能力が低下してロコモにつながる可能性があります。移動が難しくなって外出や人との交流が減ると、社会的な側面を含むフレイルが進むことも考えられます。
7. なぜ今ロコモ対策が重要なのか
日本では長寿化が進んでいますが、寿命のすべてを健康上の制限なく過ごせるとは限りません。
厚生労働省によると、2022年の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳、健康寿命は男性72.57歳、女性75.45歳でした。平均寿命と健康寿命の差は、男性で8.49年、女性で11.63年です。
健康寿命は、健康上の問題によって日常生活を制限されずに過ごせる期間を示します。数値の詳細は厚生労働省の健康寿命に関する資料で確認できます。
また、日本整形外科学会は、ロコモ度テストを使った住民調査をもとに、ロコモ度1以上に該当する人が約4,590万人に上る可能性を示しています。
ただし、これは日本全国の人を直接診断した現在の患者数ではなく、調査結果から算出された推計値です。
ロコモへの対策が必要なのは、単に長く生きるためではありません。
- 自分で買い物に行く
- 公共交通機関を利用する
- 旅行や趣味を楽しむ
- 家族や地域の活動に参加する
- 自宅で自立した生活を続ける
こうした日常生活の土台となるのが、立つ力と歩く力です。
8. ロコモの予防・改善に役立つロコトレ
ロコモ対策では、筋肉だけを鍛えるのではなく、下肢筋力とバランス能力を組み合わせて維持することが重要です。
代表的なロコトレは、片脚立ちとスクワットです。
| 運動 | 実施の目安 | 安全上のポイント |
|---|---|---|
| 片脚立ち | 左右各1分を1セット、1日3セット | 机や壁につかまれる場所で行う |
| スクワット | 5~6回を1セット、1日3セット | 膝を深く曲げすぎず、息を止めない |
| 椅子からの立ち座り | スクワットが難しい場合に行う | 動かない安定した椅子を使う |
| かかと上げ | 10~20回を2~3セット | ふらつく場合は必ず支えを使う |
詳しいフォームは、日本整形外科学会のロコトレ解説で確認できます。
運動を行う際は、次の点に注意してください。
- 最初からすべての回数をこなそうとしない
- 痛みを我慢して続けない
- 机や壁など、すぐにつかまれる場所で行う
- 滑りにくい床と靴を選ぶ
- 翌日まで強い痛みが残る場合は負荷を下げる
- 転倒経験や持病がある場合は、医師などに相談する
スクワットが難しい場合は、椅子からゆっくり立ち、ゆっくり座る動作に置き換えられます。重要なのは、難しい運動を一度に行うことではなく、安全な方法を継続することです。
9. ロコモ予防に必要な運動量と食事
特別なトレーニングだけでなく、普段の生活で身体を動かす時間を増やすことも重要です。
厚生労働省の身体活動に関する指針では、高齢者に対して次の目安を示しています。
- 歩行または同程度以上の身体活動を1日40分以上
- 筋力・バランス・柔軟性を組み合わせた運動を週3日以上
- 筋力トレーニングを週2~3日
- 座りっぱなしの時間を長くしすぎない
ただし、目安を達成できなければ効果がないわけではありません。現在ほとんど身体を動かしていない人は、立つ回数を増やす、数分歩くといった小さな変化から始めます。
詳しい推奨量は厚生労働省の高齢者向け推奨事項に掲載されています。
日常生活では次の工夫が続けやすいでしょう。
- 30~60分座ったら、一度立って身体を動かす
- 買い物や散歩の距離を少しずつ延ばす
- 歯磨き中に、支えを使ってかかとを上げる
- エレベーターだけでなく、体調に応じて階段も使う
- 歩数だけでなく、歩幅や立ち上がりやすさも記録する
食事では、筋肉と骨の両方を意識します。
- たんぱく質:魚、肉、卵、大豆製品、乳製品
- カルシウム:牛乳、ヨーグルト、小魚、豆腐、青菜
- ビタミンD:魚、きのこ類など
- エネルギー源:米、パン、麺、いも類など
食欲が落ちている人は、一度に多く食べようとせず、三食それぞれにたんぱく質を含む食品を取り入れる方法があります。
腎臓病、心不全、糖尿病などで食事制限を受けている場合は、たんぱく質や水分を自己判断で増やさず、医師や管理栄養士に相談してください。
10. ロコモは何歳から注意すべきか
「何歳からロコモになる」という明確な境界線はありません。
加齢によって骨、関節、筋肉の機能は変化しますが、年齢だけで決まるものではないからです。若い人や中年の人でも、次のような要因によって移動機能が低下することがあります。
- 運動不足や長時間の座り仕事
- スポーツや事故によるけが
- 極端なダイエットや低栄養
- 肥満による関節への負担
- 膝、股関節、脊椎などの病気
- 慢性的な痛みによる活動量低下
たとえば、デスクワーク中心でほとんど運動しない人は、体重に大きな変化がなくても、下肢筋力やバランス能力が落ちている可能性があります。
反対に、年齢が高くても、運動習慣を持ち、病気を適切に管理している人は、移動機能を保てる場合があります。
年齢だけで判断せず、以前と比べて動作が変わっていないかを見ることが大切です。
11. ロコモは何科?整形外科を受診する目安
ロコモが疑われる場合、主な相談先は整形外科です。
整形外科では、骨、関節、筋肉、脊椎、神経などを調べ、移動機能が低下している原因を確認します。
次のような変化がある場合は、受診を検討してください。
- 膝、股関節、腰などの痛みが続いている
- 足にしびれや力の入りにくさがある
- 左右の脚で動きや力に大きな差がある
- 何度もつまずく、または転倒を繰り返す
- 短期間で歩ける距離が短くなった
- 痛みや不安のため外出を避けている
- ロコモ度2または3に該当する
- 骨粗しょう症や関節疾患の治療を中断している
ロコモ度1であっても、痛みやしびれを伴う場合は、運動だけで解決しようとせず相談した方が安全です。
転倒後に立てない、突然脚へ力が入らなくなった、強い腰痛と排尿・排便の異常が同時に生じた、といった場合は、早急に医療機関を受診してください。
受診時には、次の情報をメモしておくと状態を伝えやすくなります。
- いつから症状があるか
- どの場所が痛む、またはしびれるか
- どの動作で悪化するか
- どのくらいの距離や時間を歩けるか
- 転倒した回数
- 服用している薬や治療中の病気
12. よくある質問
Q. 7項目のうち一つだけ当てはまったらロコモですか?
一つでも該当すれば運動器が衰えている可能性がありますが、それだけで病気やロコモが確定するわけではありません。以前からの変化、痛みやしびれの有無、ロコモ度テストの結果なども含めて判断します。
Q. 毎日歩いていれば予防できますか?
歩くことは大切ですが、ウォーキングだけでは十分とは限りません。立ち上がるための筋力や転倒を防ぐバランス能力を維持するため、スクワットや片脚立ちなどを組み合わせることが重要です。
Q. 膝が痛くてもスクワットを続けるべきですか?
痛みを我慢して続ける必要はありません。膝を曲げる深さを浅くする、椅子からの立ち座りに変えるといった調整はできますが、腫れや強い痛みがある場合は中止して整形外科へ相談してください。
Q. ロコモは治りますか?
原因と進行度によって異なります。運動不足や軽度の筋力・バランス低下であれば、運動や食生活の改善によって機能が向上する可能性があります。骨折、変形性関節症、神経障害などがある場合は、病気に応じた治療やリハビリテーションが必要です。
Q. ロコモとメタボは関係がありますか?
肥満や生活習慣病は、関節への負担や活動量の低下を通じてロコモに関係する可能性があります。一方、極端にやせて筋肉や骨が弱くなることも問題です。体重だけでなく、筋力や栄養状態を含めて考える必要があります。
Q. ロコモ度1なら病院へ行かなくてもよいですか?
痛みやしびれがなく、軽度の機能低下だけであれば、安全な運動や食生活の見直しから始める方法があります。ただし、症状がある、急速に悪化した、転倒が増えた場合は、段階にかかわらず相談してください。
Q. フレイルとロコモはどちらが広い概念ですか?
フレイルの方が広い概念です。フレイルは身体機能だけでなく、認知・心理面や社会とのつながりも含みます。ロコモは、その中でも骨、関節、筋肉、神経などの運動器と移動機能に焦点を当てた考え方です。
13. 足腰の小さな変化から対策を始めよう
ロコモは、運動器の障害によって、立つ・歩くといった移動機能が低下した状態です。
サルコペニアが主に筋肉の量と働きに注目するのに対し、ロコモは骨、関節、筋肉、神経を含む運動器全体を対象とします。フレイルは、身体面に加えて心理面や社会生活も含む、より広い概念です。
まずは、靴下を履く、階段を上る、買い物を運ぶ、15分歩くといった日常動作を振り返ってみましょう。
小さな変化であれば、安全な運動を少量から始め、食事と座りすぎを見直します。一方、痛み、しびれ、転倒、急な機能低下がある場合は、年齢や運動不足のせいと決めつけないことが重要です。
原因となる病気を早めに見つけ、必要な治療と運動を組み合わせることが、自分の足で生活を続けるための現実的な一歩になります。
掲載内容は一般的な健康情報です。個人の診断や治療方針を示すものではありません。症状がある場合や運動に不安がある場合は、医師などの専門家に相談してください。