出産手当金と出産育児一時金の違いは?両方もらえる人・金額・申請方法を早見表で解説
結論から言うと、出産育児一時金は出産費用を補うお金、出産手当金は産休中の収入減を補うお金です。目的が違うため、条件を満たせば同じ出産で両方受け取れる可能性があります。
会社員本人として健康保険に加入し、産前産後休業中に給与が出ない、または少なくなる人は、両方の対象になりやすいです。一方、配偶者の扶養に入っている人、国民健康保険に加入している自営業者・フリーランスは、原則として出産育児一時金のみになるケースが多くなります。
| 働き方・加入状況 | 出産育児一時金 | 出産手当金 | まず見るポイント |
|---|---|---|---|
| 会社員本人・産休中に給与なし | 対象になりやすい | 対象になりやすい | 勤務先の健康保険に本人加入しているか |
| 会社員本人・産休中も給与あり | 対象になりやすい | 減額・不支給の可能性 | 給与額と手当金額の差額 |
| 夫・妻の扶養に入っている | 対象になりやすい | 原則対象外 | 本人が健康保険の被保険者か |
| 国民健康保険の自営業・フリーランス | 対象になりやすい | 原則対象外 | 国保には原則、出産手当金がない |
| 退職後に出産 | 条件次第 | 条件次第 | 退職日・加入期間・出産日 |
1. 2つの制度は「出産費用」と「休業中の収入」を別々に支える
名前が似ているため混同されやすいですが、2つはまったく別の制度です。
出産育児一時金は、分娩費用の負担を軽くするための給付です。正常分娩は病気やけがではないため、原則として健康保険の通常の保険診療にはなりません。入院料、分娩料、新生児管理保育料、検査・薬剤料などがまとまってかかるため、その負担を補う目的があります。
出産手当金は、出産のために会社を休み、給与が出ない、または少なくなるときの生活保障です。産前産後休業中の収入の空白を補う制度なので、出産そのものの費用を払うための一時金とは役割が違います。
| 制度 | 何を補うか | 受け取り方のイメージ |
|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 出産費用 | 医療機関への支払いに充てることが多い |
| 出産手当金 | 産休中の収入減 | 申請後に本人へ支給される |
出産で病院に払うお金
→ 出産育児一時金
産休で給与が減る分
→ 出産手当金
協会けんぽも、出産育児一時金を「被保険者または被扶養者が出産したときの給付」、出産手当金を「出産で会社を休んだときの給付」と分けて説明しています。制度の概要は協会けんぽの給付と手続きで確認できます。
2. 出産育児一時金はいくら?原則50万円だが差額に注意
2026年7月時点では、出産育児一時金は原則として子ども1人につき50万円です。双子なら100万円、三つ子なら150万円というように、胎児数に応じて支給されます。
| 出産の区分 | 支給額の目安 |
|---|---|
| 産科医療補償制度に加入する医療機関等で、在胎週数22週以降に出産 | 1児につき50万円 |
| 産科医療補償制度の対象外となる出産など | 1児につき48.8万円 |
厚生労働省は、出産育児一時金について令和5年4月から原則42万円から原則50万円へ引き上げたと説明しています。制度の基本情報は厚生労働省の出産育児一時金等についてで確認できます。
多くの医療機関では、直接支払制度を利用できます。これは、健康保険側から医療機関へ出産育児一時金が直接支払われる仕組みです。退院時に50万円をいったん全額立て替える必要がなく、窓口で支払うのは差額だけになります。
| 出産費用 | 直接支払制度を使った場合 |
|---|---|
| 55万円 | 50万円が充当され、差額5万円を支払う |
| 50万円 | 原則として大きな追加負担なし |
| 48万円 | 差額2万円を申請して受け取れる可能性がある |
出産育児一時金は「必ず自分の口座に50万円が振り込まれる制度」ではありません。直接支払制度を使うと、医療機関への支払いに充てられる形になります。
協会けんぽは、出産費用が一時金を上回る場合は不足分を窓口で支払い、下回る場合は差額支給分を申請する流れを示しています。詳しい手続きは協会けんぽの出産育児一時金で確認できます。
3. 50万円で足りる?出産費用は地域と施設で大きく変わる
出産育児一時金が原則50万円でも、実際の出産費用が必ず50万円以内に収まるとは限りません。無痛分娩、個室利用、入院日数、地域、施設の種類によって費用は変わります。
厚生労働省の資料では、令和5年度の正常分娩の出産費用について、全国平均は506,540円とされています。さらに、東京都は625,372円、熊本県は388,796円で、最も高い地域と低い地域の間に約24万円の差がありました。これは「50万円もらえるか」だけでなく、「自分の地域・産院では差額が出そうか」を見る必要があることを意味します。
| 地域・区分 | 正常分娩の平均出産費用 |
|---|---|
| 全国平均 | 506,540円 |
| 東京都 | 625,372円 |
| 熊本県 | 388,796円 |
出産費用の地域差や費用項目は、厚生労働省の資料「出産費用の状況等について」で示されています。
費用を見るときは、総額だけでなく、何が含まれているかも大切です。
- 個室代や差額ベッド代は含まれるか
- 無痛分娩費用はいくらか
- 産科医療補償制度の対象か
- 休日・夜間の加算があるか
- 退院時の自己負担見込みはいくらか
- 帝王切開になった場合の説明があるか
分娩施設ごとの費用やサービスを比べたい場合は、厚生労働省の出産なびも役立ちます。出産前に見積もりを確認しておくと、退院時の支払いで慌てにくくなります。
4. 出産手当金はいくら?給与の約3分の2が目安
出産手当金は、会社員などが産前産後休業で仕事を休み、給与が出ない、または少なくなるときの給付です。対象期間は原則として次の範囲です。
| 妊娠の種類 | 対象期間 |
|---|---|
| 単胎妊娠 | 出産日以前42日から、出産翌日以後56日まで |
| 多胎妊娠 | 出産日以前98日から、出産翌日以後56日まで |
出産日は産前期間に含まれます。予定日より遅れて出産した場合は、予定日から実際の出産日まで遅れた日数も対象になります。
支給額は、ざっくり言えば給与水準の約3分の2です。ただし、実際には月給そのものではなく、健康保険料などの計算に使われる標準報酬月額をもとに計算します。
1日あたりの支給額の目安
= 支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
たとえば、標準報酬月額の平均が30万円の場合、1日あたりの目安は約6,667円です。予定日どおりの単胎出産で、産前42日・産後56日の合計98日が対象なら、合計は約65万円になります。
| 標準報酬月額の平均 | 1日あたりの目安 | 98日分の目安 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,445円 | 約43.5万円 |
| 30万円 | 約6,667円 | 約65.3万円 |
| 40万円 | 約8,889円 | 約87.1万円 |
給与が一部支払われる場合は、その分が調整されます。出勤していない日に対して出産手当金より少ない給与が支払われている場合は、差額が支給される扱いです。詳しい計算方法や退職後の条件は協会けんぽの出産手当金で確認できます。
5. 両方もらえる人・片方だけになりやすい人
判断の中心は、出産する本人が勤務先の健康保険に被保険者として加入しているかです。
| ケース | 出産育児一時金 | 出産手当金 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 正社員・契約社員などで健康保険に本人加入 | 対象になりやすい | 対象になりやすい | 出産費用と産休中の収入減が別々に発生するため |
| パート・アルバイトでも健康保険に本人加入 | 対象になりやすい | 条件次第 | 本人が被保険者なら可能性がある |
| 配偶者の扶養 | 対象になりやすい | 原則対象外 | 休業補償の対象となる本人の給与がないため |
| 国民健康保険 | 対象になりやすい | 原則対象外 | 国保には会社員向けの出産手当金がないため |
| 任意継続中 | 対象になり得る | 原則注意が必要 | 退職前からの継続給付かどうかが重要 |
会社員の例
Aさんは勤務先の健康保険に本人として加入しており、産休中は給与が出ません。この場合、分娩費用に対して出産育児一時金、産休中の収入減に対して出産手当金の両方が対象になる可能性があります。
扶養に入っている人の例
Bさんは配偶者の健康保険の扶養に入っています。出産費用に対しては家族出産育児一時金の対象になり得ますが、本人が健康保険の被保険者として産休を取っているわけではないため、出産手当金は原則対象外です。
自営業者・フリーランスの例
Cさんは国民健康保険に加入しています。出産育児一時金は対象になり得ますが、会社員向けの出産手当金は原則ありません。産前産後に仕事量を減らす場合は、売上減に備えた生活費の確保が重要です。
パートの例
Dさんはパート勤務ですが、勤務先の健康保険に本人として加入しています。この場合、労働時間や雇用形態だけで判断せず、健康保険の被保険者かどうか、産休中の給与がどうなるかを確認する必要があります。
6. 退職後は条件が細かいので早めに確認する
退職後に出産する場合は、特に間違いやすいです。出産育児一時金と出産手当金で条件が違うため、同じように考えない方が安全です。
| 制度 | 退職後に関係する主な条件 |
|---|---|
| 出産育児一時金 | 資格喪失前の被保険者期間、資格喪失後6か月以内の出産など |
| 出産手当金 | 退職日までの継続した被保険者期間、退職日に受給できる状態かどうかなど |
出産育児一時金は、退職後に国民健康保険へ移った場合でも、前の健康保険と国民健康保険の両方から重複して受け取れるわけではありません。同じ出産について支給は1回のみです。前の健康保険から受け取るのか、現在加入している保険から受け取るのか、選択が必要になる場合があります。
出産手当金はさらに注意が必要です。退職後も継続して受け取るには、退職日までに一定の被保険者期間があること、資格喪失時に出産手当金を受けている、または受けられる状態であることなどが関係します。退職日に出勤すると条件を満たさない場合もあります。
退職を考えている場合は、次の順で確認すると整理しやすくなります。
- 退職予定日はいつか
- 出産予定日はいつか
- 退職日までの健康保険加入期間は1年以上あるか
- 退職日は産前休業期間に入っているか
- 退職日に出勤する予定はあるか
- 退職後は国保、任意継続、配偶者の扶養のどれになるか
退職日は給付の判断に大きく影響します。退職日を決める前に、勤務先の人事・総務、加入している健康保険組合や協会けんぽへ確認しておくことが大切です。
7. 申請方法は誰に何を出すかを分けて考える
出産前後は体調も生活も変わるため、申請先と必要書類を早めに整理しておくと安心です。
| 給付 | 主な手続き | 先に確認する相手 |
|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 直接支払制度の同意、差額申請、受取代理制度など | 産院・加入している保険者 |
| 出産手当金 | 申請書、勤務先証明、医師・助産師証明 | 勤務先・加入している保険者 |
| 育児休業給付 | 雇用保険の手続き | 勤務先・ハローワーク |
出産育児一時金は、医療機関で直接支払制度を利用するかどうか確認します。利用する場合は、医療機関で合意文書を交わすのが一般的です。出産費用が支給額を下回った場合は、差額を申請できることがあります。
出産手当金は、本人が申請書を記入するだけでなく、勤務先の証明、医師または助産師の証明が必要になる場合があります。産前分と産後分を分けて申請することもできますが、その都度、勤務先の証明が必要になることがあります。
準備しておきたいものは次のとおりです。
- 健康保険の資格情報が分かるもの
- 母子健康手帳
- 医療機関との直接支払制度の合意文書
- 出産費用の領収書・明細書
- 出産手当金支給申請書
- 勤務先の給与支払い状況が分かる情報
- 退職予定がある場合は退職日が分かる書類
帝王切開などで保険診療になる場合は、高額療養費や限度額適用認定証が関係することがあります。出産育児一時金とは別制度なので、予定帝王切開の場合や医師から可能性を説明されている場合は、入院前に医療機関や保険者へ確認しておくと負担の見通しを立てやすくなります。
8. 育休手当との違いも整理しておく
出産手当金と混同されやすいものに、育児休業給付があります。一般に「育休手当」と呼ばれることもありますが、制度としては別です。
| 制度 | 主な対象期間 | 主な目的 | 主な制度の種類 |
|---|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 出産時 | 分娩費用の負担軽減 | 健康保険・国民健康保険など |
| 出産手当金 | 産前産後休業 | 産休中の収入補償 | 健康保険 |
| 育児休業給付 | 育児休業中 | 育休中の収入補償 | 雇用保険 |
妊娠中
↓
産前休業
↓ 出産手当金の対象になり得る
出産
↓ 出産育児一時金の対象
産後休業
↓ 出産手当金の対象になり得る
育児休業
↓ 育児休業給付の対象になり得る
産休と育休は続けて取得することが多いため、同じ手続きに見えます。しかし、出産手当金は健康保険、育児休業給付は雇用保険が中心です。勤務先へ確認するときは、「産休中の出産手当金」と「育休中の育児休業給付」を分けて聞くと話が進みやすくなります。
9. よくある質問
Q. 会社員なら必ず両方もらえますか?
必ずではありません。出産育児一時金は対象になりやすいですが、出産手当金は産休中の給与がどう支払われるかで変わります。給与が十分に支払われる場合は、減額または不支給になることがあります。
Q. パートやアルバイトでも対象になりますか?
勤務先の健康保険に本人として加入していれば、出産手当金の対象になる可能性があります。配偶者の扶養に入っている場合は、原則として出産手当金の対象外です。
Q. 夫の健康保険から出産手当金は出ますか?
出産手当金は、出産する本人が健康保険の被保険者として働き、出産のために休んだ場合の給付です。配偶者の扶養に入っている場合は、家族出産育児一時金の対象にはなり得ますが、出産手当金は原則対象外です。
Q. 出産育児一時金はいつ振り込まれますか?
直接支払制度を使う場合、本人の口座へ全額が振り込まれるのではなく、医療機関へ支払われます。出産費用が支給額より少なかった場合は、差額を申請して受け取る形になります。
Q. 双子の場合は金額が増えますか?
出産育児一時金は胎児数に応じて支給されます。原則50万円の条件に当てはまる場合、双子なら100万円が目安です。出産手当金は胎児数で単純に倍になる制度ではありませんが、多胎妊娠では産前休業の対象期間が長くなります。
Q. 帝王切開でも出産育児一時金は使えますか?
対象になり得ます。帝王切開など保険診療になる部分は、高額療養費の対象になる可能性があります。出産育児一時金、保険診療、高額療養費は別々に整理すると分かりやすいです。
Q. 退職後でも出産手当金は受け取れますか?
条件を満たせば、退職後も継続して受け取れる場合があります。ただし、退職日までの加入期間、退職日に受給できる状態か、退職日に出勤していないかなどが関係します。退職日を決める前に保険者へ確認することが大切です。
10. まとめ
出産育児一時金は、出産費用を補うための給付です。2026年7月時点では、原則として子ども1人につき50万円が支給されます。直接支払制度を使えば、医療機関への支払いに充てられ、退院時の窓口負担を軽くできます。
出産手当金は、会社員など健康保険の被保険者本人が、出産のために仕事を休み、給与が減ったときの給付です。支給額は標準報酬月額をもとに計算され、産前産後の生活費を支える役割があります。
押さえるべき点は次の3つです。
- 出産費用の補助と産休中の収入補償は別制度
- 会社員本人が産休を取る場合は、条件次第で両方の対象になり得る
- 扶養、国民健康保険、自営業、退職後では扱いが変わりやすい
まずは、自分がどの健康保険に加入しているか、産休中に給与が出るか、出産予定の医療機関で直接支払制度を使えるかを確認しましょう。退職予定がある場合は、退職日を決める前に勤務先と保険者へ相談しておくと、受け取れる給付を見落としにくくなります。