多相睡眠とは?1日2時間睡眠は可能?ダ・ヴィンチ型・エブリマン型のリスクを科学的に解説
1. 結論:睡眠を分けることと、睡眠を削ることは別問題
多相睡眠とは、1日の睡眠を1回ではなく、複数回に分けて取る睡眠スタイルのことです。夜にまとめて眠る一般的な睡眠を「単相睡眠」と呼ぶのに対し、夜の睡眠に昼寝を加える「二相睡眠」、さらに1日に3回以上眠る形を広い意味で多相睡眠と呼びます。
結論から言うと、多相睡眠そのものが必ず悪いわけではありません。昼に10〜20分ほど仮眠を取る、夜の睡眠を補助するために短い昼寝を使う、といった方法は現実的です。
一方で、ネットで語られがちな「1日2時間睡眠で活動時間を増やす」「ダ・ヴィンチのように短時間睡眠で天才的に働く」といった極端な方法には、かなり慎重になる必要があります。
重要なのは、次の区別です。
| 考え方 | 内容 | 現実性 |
|---|---|---|
| 睡眠を分ける | 夜の睡眠+短い昼寝など | 条件次第で現実的 |
| 睡眠を削る | 1日の総睡眠時間を大幅に減らす | リスクが高い |
| 眠気をごまかす | カフェインや気合いで乗り切る | 長期的には危険 |
| 睡眠を最適化する | 必要な睡眠量を確保し、リズムを整える | 最も現実的 |
米国睡眠医学会などの専門家グループは、成人に対して定期的に7時間以上の睡眠を推奨しています。また、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、成人は個人差を踏まえつつ、少なくとも6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することが示されています。
参考:Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult
参考:厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023
つまり、多相睡眠を考えるときの本質は、「何回眠るか」ではなく、「必要な睡眠量と体内時計を守れているか」です。
2. なぜ今、多相睡眠が注目されるのか
多相睡眠が注目される背景には、現代人の慢性的な時間不足があります。
仕事、勉強、副業、家事、育児、SNS、動画視聴。やることが増えるほど、「睡眠を減らせば自由時間が増えるのではないか」と考える人が出てきます。
特に多いのは、次のような悩みを持つ人です。
| 気になる人 | 背景にある悩み |
|---|---|
| 受験生・資格勉強中の人 | 勉強時間を増やしたい |
| 社会人 | 仕事後の自由時間が足りない |
| フリーランス・起業家 | 作業時間を最大化したい |
| 夜型生活の人 | 睡眠リズムを変えたい |
| ライフハック好き | 効率的な生活法を試したい |
日本では睡眠不足が社会的な問題にもなっています。厚生労働省の資料では、令和元年の国民健康・栄養調査において、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性37.5%、女性40.6%でした。働き盛りの年代では、睡眠時間が短い人の割合がさらに高くなります。
参考:厚生労働省 睡眠対策
このような状況では、「眠り方を工夫して時間を作りたい」と考えるのは自然です。
ただし、睡眠は単なる休憩ではありません。脳の情報整理、記憶の定着、感情調整、免疫、代謝、ホルモン分泌などに関わる重要な生理機能です。睡眠を削って時間を増やしても、集中力や判断力が落ちれば、結果的に勉強や仕事の効率は下がります。
3. 単相睡眠・二相睡眠・多相睡眠の違い
睡眠パターンは、大きく次の3つに分けられます。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 単相睡眠 | 1日に1回、まとまって眠る | 夜に7時間眠る |
| 二相睡眠 | 1日に2回眠る | 夜6時間+昼寝20分 |
| 多相睡眠 | 1日に3回以上眠る | 夜3時間+日中に複数回仮眠 |
現代社会では、夜にまとめて眠る単相睡眠が一般的です。一方で、乳児は自然に何度も眠りますし、夜勤・交替勤務・長距離航海・軍事行動・医療現場などでは、睡眠を分けざるを得ない場面もあります。
また、昼寝文化がある地域では、夜の睡眠に短い昼寝を組み合わせる二相睡眠に近い生活も見られます。
ここで大切なのは、睡眠を分けること自体よりも、総睡眠時間と生活リズムが守られているかです。
たとえば、夜に6時間30分眠り、昼に20分仮眠するなら、総睡眠時間は大きく減っていません。これは比較的現実的な二相睡眠です。
一方で、夜の睡眠を3時間以下にし、日中の短い仮眠だけで補おうとする場合、総睡眠時間が大きく不足します。これは健康・安全・学習効率の面でリスクが高くなります。
4. 多相睡眠の種類:ダ・ヴィンチ型、エブリマン型、ウーバーマン型、ダイマキシオン型
ネット上では、多相睡眠にいくつかの名前付きパターンがあります。ただし、これらは医学的に確立された標準的な睡眠法ではなく、ライフハック的に広まった分類です。
| 型 | 一般的な説明 | 1日の総睡眠時間 | 現実性 |
|---|---|---|---|
| ダ・ヴィンチ型 | 4時間ごとに15〜20分眠る | 約1.5〜2時間 | 非常に低い |
| ウーバーマン型 | 20分睡眠を1日6回 | 約2時間 | 非常に低い |
| ダイマキシオン型 | 30分睡眠を1日4回 | 約2時間 | 非常に低い |
| エブリマン型 | 夜のコア睡眠+複数回の仮眠 | 約3〜5時間 | 低〜中 |
| シエスタ型 | 夜の睡眠+昼寝 | 約6〜8時間 | 比較的現実的 |
| 分割睡眠型 | 夜を前半・後半に分ける | 約6〜8時間 | 条件次第 |
特に有名なのが「ダ・ヴィンチ型」です。レオナルド・ダ・ヴィンチが4時間ごとに短時間だけ眠っていたという逸話から広まりました。
しかし、ダ・ヴィンチが実際にそのような睡眠を長期的に続けていたかについて、強い歴史的根拠があるわけではありません。偉人の逸話として語られることはありますが、現代人が安全に再現できる証拠にはなりません。
エブリマン型は、夜に数時間の「コア睡眠」を取り、日中に20分程度の仮眠を複数回入れる形です。ウーバーマン型やダイマキシオン型よりは現実的に見えますが、総睡眠時間が4〜5時間程度になるなら、多くの成人にとっては不足です。
5. 「1日2時間睡眠」は本当に可能なのか
短期的には、1日2時間睡眠で数日を乗り切れる人はいるかもしれません。締切前、試験前、出張中、育児中など、やむを得ず短時間睡眠になる場面はあります。
しかし、長期的に健康を保ちながら、毎日2時間睡眠で高いパフォーマンスを維持できる人は極めて例外的です。
睡眠時間には個人差がありますが、「自分は短時間睡眠でも平気」と思っている人の多くは、実際には睡眠不足に慣れてしまっているだけの場合があります。眠気の自覚が薄くなっても、反応速度、注意力、判断力、記憶力が落ちている可能性があります。
多相睡眠に関するレビュー論文では、睡眠を大きく減らす多相睡眠スケジュールについて、明確な利益を支持する証拠は乏しく、健康・安全・パフォーマンス面の悪影響が懸念されるとまとめられています。
参考:Adverse impact of polyphasic sleep patterns in humans
特に1日2時間睡眠は、医学的にはかなり極端な睡眠制限です。仮に数日うまくいったように感じても、次のような問題が起きやすくなります。
- マイクロスリープが起きる
- 作業ミスが増える
- 感情が不安定になる
- 食欲や代謝が乱れる
- 免疫機能に影響する
- 学習内容が記憶に残りにくくなる
- 運転や機械操作が危険になる
「眠くない」と「脳が十分に回復している」は同じではありません。
6. 多相睡眠とショートスリーパーは違う
多相睡眠を調べる人の中には、「訓練すればショートスリーパーになれるのでは」と考える人もいます。
しかし、多相睡眠とショートスリーパーは別物です。
| 項目 | 多相睡眠 | ショートスリーパー |
|---|---|---|
| 意味 | 睡眠を複数回に分ける方法 | 短い睡眠でも自然に支障が少ない体質 |
| 変えられるか | 生活習慣として試す人がいる | 誰でもなれるとは言えない |
| 問題点 | 睡眠不足になりやすい | 本物は少数派と考えられる |
| よくある誤解 | 分ければ睡眠時間を減らせる | 努力で短眠体質になれる |
本当のショートスリーパーは、短い睡眠でも日中の眠気や機能低下が少ない人を指します。ただし、これは単に「忙しくて短くしか寝ていない人」や「眠気に慣れてしまった人」とは違います。
休日に長く寝てしまう、朝起きるのがつらい、日中に眠気がある、カフェインがないと集中できない、ミスが増える。このような状態があるなら、ショートスリーパーではなく睡眠不足の可能性があります。
多相睡眠を続けたからといって、誰でも短時間睡眠に適応できるわけではありません。
7. 多相睡眠のリスク:集中力・記憶・メンタル・事故
多相睡眠のリスクは、主に3つあります。
1つ目は、総睡眠時間の不足です。
成人に必要な睡眠時間は個人差がありますが、多くの専門機関は7時間前後を目安にしています。厚生労働省も、成人では少なくとも6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することを推奨しています。
2つ目は、概日リズムの乱れです。
人間の体は、朝の光、食事、活動、夜の暗さなどを手がかりにリズムを整えています。睡眠を細かく分割しすぎると、体内時計とのズレが起こりやすくなります。
3つ目は、社会生活との相性の悪さです。
多相睡眠では、決まった時間に仮眠を取れないと一気に眠気が強くなることがあります。学校、会社、移動、会議、育児、友人関係などがある生活では、スケジュールを厳密に守るのは簡単ではありません。
| リスク | 起こりうる影響 |
|---|---|
| 睡眠不足 | 集中力低下、記憶力低下、眠気 |
| リズムの乱れ | 体調不良、気分の落ち込み、夜間覚醒 |
| 社会生活との不一致 | 継続困難、ストレス増加 |
| 仮眠依存 | 仮眠できない日にパフォーマンスが崩れる |
| 安全面の問題 | 運転・作業中の事故リスク |
CDCも、睡眠不足は肥満、糖尿病、高血圧、心疾患、脳卒中、不安、うつなどの慢性疾患リスクと関連し、交通事故や産業事故にも関係すると説明しています。
参考:CDC Sleep and Sleep Disorders
8. 多相睡眠のやり方を調べる前に知るべき安全ライン
「多相睡眠 やり方」と気になる人は少なくありません。しかし、極端な短時間睡眠をそのまま実践するのはおすすめできません。
もし生活の中に睡眠の分割を取り入れるなら、まずは次の安全ラインを守るべきです。
- 1日の総睡眠時間を大きく削らない
- 目安として6時間未満の生活を常態化させない
- 仮眠は10〜20分程度にする
- 夕方以降の長い昼寝は避ける
- 運転や重要業務がある日に試さない
- 眠気、頭痛、気分の落ち込み、ミス増加があれば中止する
- 持病や睡眠障害の疑いがある場合は医療機関に相談する
現実的に取り入れやすいのは、次のような形です。
| 方法 | 目安 |
|---|---|
| 夜の睡眠 | 6〜8時間を確保 |
| 仮眠時間 | 10〜20分 |
| 仮眠のタイミング | 昼〜午後早め |
| 避けたい時間 | 夕方以降 |
| 目的 | 睡眠削減ではなく、眠気の回復 |
短い昼寝は、長すぎる昼寝よりも起きた後のだるさが少ない傾向があります。30分以上眠ると深い睡眠に入り、起床後にぼんやりする「睡眠慣性」が出やすくなるためです。
多相睡眠を試すというより、まずは「夜の睡眠を削らず、必要なときだけ短い昼寝を使う」と考えた方が安全です。
9. 受験生・資格勉強中の人は睡眠を削るべきではない
勉強時間を増やすために多相睡眠を検討する人もいます。しかし、受験生や資格勉強中の人ほど、睡眠を削る発想には注意が必要です。
睡眠は記憶の定着に深く関わります。勉強した内容を脳が整理し、長期記憶として残しやすくするには、十分な睡眠が必要です。
たとえば、睡眠を削って勉強時間を2時間増やしても、翌日の集中力が落ち、復習効率が下がり、記憶が定着しにくくなれば、総合的には損をする可能性があります。
学習では、次の順番で考える方が現実的です。
- まず必要な睡眠時間を確保する
- 起きている時間の集中力を高める
- 復習の間隔を整える
- スマホや動画で失っている時間を減らす
- それでも眠い時間帯には短い仮眠を使う
英語、TOEIC、資格、受験勉強のように継続が必要な学習では、「睡眠を削って一気に詰め込む」よりも、毎日短時間でも集中して復習する方が続きやすくなります。
完全無料で利用でき、学習行動がユーザーに還元される共益型プラットフォームのDailyDropsも、睡眠時間を削るのではなく、日々の学習習慣を作る選択肢の一つとして活用できます。
10. 多相睡眠より先に見直したい睡眠習慣
多相睡眠を試す前に、多くの人はまず基本的な睡眠習慣を整えた方が効果を感じやすいはずです。
睡眠の質を上げる基本は、次の通りです。
| 見直すポイント | 具体策 |
|---|---|
| 起床時刻 | 休日も大きくずらさない |
| 朝の光 | 起きたら日光を浴びる |
| カフェイン | 夕方以降は控える |
| スマホ | 寝る直前の強い光と刺激を減らす |
| 寝室 | 暗く、静かに、暑すぎない環境にする |
| 運動 | 日中に軽く体を動かす |
| 夕食 | 就寝直前の重い食事を避ける |
睡眠を改善したいとき、いきなり特殊な方法に飛びつくよりも、まずは「起きる時刻を安定させる」「朝に光を浴びる」「夜のスマホ時間を減らす」といった基本の方が効果的です。
睡眠不足のまま多相睡眠に挑戦すると、体調が悪い原因が「多相睡眠が合わない」のか「そもそも寝不足」なのか分からなくなります。
11. よくある質問
Q. 多相睡眠は何日で慣れますか?
A. 何日で安全に慣れると断言できる根拠はありません。眠気の自覚には慣れることがありますが、注意力や判断力が落ちていないとは限りません。
Q. ダ・ヴィンチは本当に多相睡眠だったのですか?
A. そのように語られることはありますが、確実な根拠は弱いと考えた方がよいでしょう。偉人の逸話は、現代人が睡眠を削ってよい理由にはなりません。
Q. エブリマン型なら安全ですか?
A. 夜のコア睡眠と仮眠を組み合わせるため、ウーバーマン型よりは現実的に見えます。ただし、総睡眠時間が4〜5時間程度になるなら、多くの成人には不足です。
Q. レム睡眠だけ取れば短時間睡眠でも大丈夫ですか?
A. その考え方は危険です。睡眠にはレム睡眠だけでなく、深いノンレム睡眠も重要です。特定の睡眠段階だけを都合よく取ればよい、という単純なものではありません。
Q. 昼寝はした方がいいですか?
A. 夜の睡眠を邪魔しない範囲で、10〜20分程度の短い仮眠を取るのは現実的です。夕方以降や長すぎる昼寝は、夜の睡眠に影響することがあります。
Q. 受験勉強や資格勉強のために睡眠を削るのはありですか?
A. 長期的にはおすすめしません。記憶の定着や集中力には睡眠が重要です。勉強時間よりも、起きている時間の質を上げる方が効果的です。
Q. 自分がショートスリーパーかどうかはどう判断できますか?
A. 休日に寝だめしたくなる、日中に眠気がある、カフェインがないと集中できない、朝起きるのがつらい場合は、睡眠不足の可能性があります。本当のショートスリーパーは少数派と考えた方がよいでしょう。
Q. 多相睡眠をやめた方がいいサインはありますか?
A. 強い眠気、気分の落ち込み、頭痛、ミスの増加、食欲の乱れ、運転中の眠気、仕事や勉強の効率低下がある場合は中止すべきです。
12. まとめ:増やすべきは起きている時間ではなく、集中できる時間
多相睡眠は、睡眠を複数回に分ける方法です。昼寝やシエスタのように、総睡眠時間を大きく削らない形であれば、生活に役立つこともあります。
しかし、1日2時間睡眠のような極端な短時間睡眠は、科学的にはかなりリスクが高い方法です。多相睡眠に関する研究レビューでも、極端な多相睡眠の利益を支持する証拠は乏しく、健康・安全・パフォーマンスへの悪影響が懸念されています。
大切なのは、睡眠時間を削って無理に時間を作ることではありません。
- 夜の睡眠を十分に確保する
- 必要なら短い昼寝で補う
- 起床時刻を安定させる
- 朝の光を浴びる
- 学習や仕事は、眠い時間ではなく集中できる時間に置く
勉強でも仕事でも、成果を出す人は「長く起きている人」ではなく、回復した脳で集中できる人です。
多相睡眠に興味を持つこと自体は悪くありません。ただし、目指すべきは「眠らない自分」ではなく、「よく眠り、よく学び、よく動ける自分」です。睡眠を味方につけることが、結局は最も強い時間術になります。