サルコペニアとは?症状・セルフチェック・予防の筋トレと食事【AWGS 2025対応】
結論から言えば、加齢に伴う筋力低下は「年齢のせい」と決めつけず、早めに変化へ気づき、筋力トレーニングと十分な食事を組み合わせることが重要です。筋肉量と筋力がともに低下した状態はサルコペニアと診断されることがあり、放置すると立ち上がりや歩行が難しくなり、転倒・骨折・要介護につながる可能性があります。
ただし、ふくらはぎが細い、歩くのが遅いといった一つの特徴だけでは診断できません。セルフチェックは受診や生活改善を考えるための目安です。急な体重減少、繰り返す転倒、片側だけの脱力などがある場合は、自己流の運動だけで済ませず医療機関へ相談してください。
1. まず確認したい筋力低下のサイン
次のうち複数に当てはまる場合は、筋力や筋肉量が低下している可能性があります。
- 椅子から立つときに手をつくようになった
- ペットボトルのふたを以前より開けにくい
- 階段で手すりが必要になった
- 歩幅が狭くなり、横断歩道を渡るのが不安になった
- 半年ほどの間に意図せず体重が減った
- 何もない場所でつまずく、または転倒を繰り返す
- 太ももやふくらはぎが目に見えて細くなった
- 買い物袋を持って歩くのがつらくなった
65歳以上では、ふくらはぎの最も太い部分が男性34cm未満、女性33cm未満であることも、詳しい評価へ進む目安の一つです。むくみがあると正確に測れないため、数値だけで判断しないでください。
当てはまる項目があっても、直ちに病気と決まるわけではありません。変化が複数重なっているか、日常生活へ影響しているかを見ることが大切です。
2. 筋肉量だけでなく「筋力」も見る理由
サルコペニアは、加齢に関連して骨格筋の量と力が低下した状態です。名前は、ギリシャ語で筋肉を意味する「sarx」と、減少を意味する「penia」に由来します。
アジア人向けの診断基準は2025年に改訂されました。AWGS 2025では、低筋肉量と低筋力が同時に認められる場合に診断します。以前の基準で診断要件に含まれていた歩行速度や椅子立ち上がりなどの身体機能は、現在は生活への影響や介入後の変化を見る指標として位置づけられています。
筋肉量と筋力は必ずしも比例しないため、体重や見た目だけでなく、握力と医療機器による筋肉量測定を組み合わせます。
AWGS 2025では、筋肉の健康に懸念がある50~64歳にも年齢別の基準が設けられました。筋力低下を高齢期だけの問題と考えず、中年期から運動不足や極端な減量を避けることが重要です。
3. なぜ放置すると生活への影響が広がるのか
筋力が落ちると外出や家事が減り、筋肉へ加わる刺激がさらに少なくなる悪循環が起こります。
筋力が低下する
↓
歩行・外出・家事が減る
↓
活動量と食欲が落ちる
↓
筋肉を作る刺激と栄養が不足する
↓
さらに筋力が低下する
日本の高齢化率は2024年10月時点で29.3%、75歳以上は総人口の16.8%です。高齢期の自立を守るうえで、筋肉の健康は社会全体に関わる課題になっています。
4. SARC-Fで日常動作をチェックする
SARC-Fは、65歳以上を中心に使われる5項目の質問票です。各項目を0~2点で採点し、合計は10点です。4点以上はサルコペニアの可能性を調べる詳しい評価へ進む目安になります。
| 項目 | 質問 | 0点 | 1点 | 2点 |
|---|---|---|---|---|
| 筋力 | 約4.5kgの物を持ち運べるか | 困難なし | いくらか困難 | 非常に困難・できない |
| 歩行 | 部屋の中を移動できるか | 困難なし | いくらか困難 | 非常に困難・できない |
| 起立 | 椅子やベッドから立てるか | 困難なし | いくらか困難 | 非常に困難・できない |
| 階段 | 階段を10段上れるか | 困難なし | いくらか困難 | 非常に困難・できない |
| 転倒 | 過去1年間の転倒回数 | なし | 1~3回 | 4回以上 |
点数が低くても筋肉の問題がないとは限りません。体重減少や入院後の体力低下などがあれば相談を検討します。
また、AWGS 2025ではSARC-Fなどの自己評価のカットオフを主に65歳以上へ適用しています。50~64歳で筋肉の健康が心配な人は、自己採点だけで判断せず、握力や筋肉量を含む評価を検討します。
5. ふくらはぎと指輪っかで確認する方法
ふくらはぎ周囲長
立つか椅子に座り、ふくらはぎの最も太い部分を水平に測ります。メジャーを食い込ませないようにします。
65歳以上の症例発見の目安は次の通りです。
| 性別 | 目安 |
|---|---|
| 男性 | 34cm未満 |
| 女性 | 33cm未満 |
指輪っかテスト
両手の親指と人差し指で輪を作り、利き足ではない側のふくらはぎの最も太い部分を囲みます。
- 囲めない:筋肉量が保たれている可能性が比較的高い
- ちょうど囲める:筋肉量低下に注意
- 隙間ができる:筋肉量が低下している可能性
体格やむくみの影響を受けるため、これだけでは診断できません。
5回椅子立ち上がり
腕を使わず、椅子から立つ・座るを5回繰り返した時間を測ります。AWGS 2025では身体機能の目安として、50~64歳は10秒以上、65歳以上は12秒以上が低下の基準です。ただし、この結果は診断そのものではありません。
膝や腰に強い痛みがある人、ふらつきや心臓・呼吸器の病気がある人は、一人で無理に行わないでください。
6. チェック結果に応じて何をすればよいか
| 状態 | 考えられる対応 |
|---|---|
| 気になる変化がなく、日常動作も問題ない | 座りすぎを減らし、筋トレと十分な食事を続ける |
| 一つだけ当てはまる | 1~3か月ほど生活を見直し、同じ条件で変化を確認する |
| 複数該当、SARC-Fが4点以上、ふくらはぎが基準未満 | かかりつけ医や地域の健康相談で握力・栄養状態を確認する |
| 転倒を繰り返す、体重が減る、生活に支障がある | 早めに医療機関へ相談する |
| 片側の脱力、ろれつ困難、胸痛、強い息苦しさ | 救急要請を含め、直ちに対応する |
急な変化がある場合は、運動やプロテインだけで済ませず原因を確認してください。
7. 筋力と筋肉量が低下する主な原因
加齢だけでなく、活動不足、食事量の低下、慢性疾患などが重なると進みやすくなります。
| 要因 | 筋肉への影響 | 具体例 |
|---|---|---|
| 活動不足 | 筋肉へ加わる刺激が減る | 長時間の座位、外出減少、入院 |
| 低栄養 | 筋肉の材料とエネルギーが不足する | 欠食、食欲低下、極端な減量 |
| 痛み・運動器疾患 | 動かない時間が増える | 膝・股関節・腰の痛み |
| 慢性疾患 | 炎症や代謝異常が筋肉へ影響する | 心不全、COPD、糖尿病、腎臓病 |
| 口腔機能低下 | 食べられる物が偏る | かみにくさ、むせ、歯の問題 |
| 心理・社会的要因 | 食事や外出の意欲が落ちる | 抑うつ、孤立、閉じこもり |
| 薬や治療の影響 | 食欲・活動量・筋代謝へ影響することがある | 長期療養、手術後、複数の服薬 |
年齢を主因とする一次性と、病気・栄養不良・活動不足などが関係する二次性があります。複数の原因が重なることも珍しくありません。
8. 医療機関では握力と筋肉量をどう測るのか
診察では、症状、体重変化、転倒歴、食事量、持病、服薬、口腔状態などを確認したうえで、握力を測ります。
AWGS 2025の低握力の基準は次の通りです。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 50~64歳 | 34kg未満 | 20kg未満 |
| 65歳以上 | 28kg未満 | 18kg未満 |
握力が低い場合は「サルコペニアの可能性あり」とされ、確定診断には四肢の筋肉量を測ります。主に使われるのはDXAと多周波BIAです。低筋力と低筋肉量の両方が確認されると診断されます。
家庭用体組成計は水分や測定時刻で変動します。傾向を見る参考にはなりますが、表示だけでは診断できません。
低栄養、貧血、心肺・腎機能、関節痛など、改善できる原因の確認も重要です。
9. 予防の中心は週2~3日の筋力トレーニング
歩行は心肺機能や活動量の維持に役立ちますが、筋肉を保つには、筋肉へ抵抗をかける運動も必要です。厚生労働省は成人と高齢者に、筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨しています。
自宅では次の種目から始められます。
| 種目 | 方法 | 目安 |
|---|---|---|
| 椅子スクワット | 椅子へゆっくり座り、立ち上がる | 5~10回 |
| かかと上げ | 椅子の背につかまり、かかとを上げ下げする | 10~20回 |
| 膝伸ばし | 椅子に座り、片脚ずつ膝を伸ばす | 左右8~12回 |
| 壁腕立て | 壁に手をつき、肘を曲げ伸ばしする | 5~15回 |
| 片脚立ち | 支えの近くで片脚を少し上げる | 左右10~30秒 |
「少しきついが、正しい姿勢を保てる」程度から始めます。慣れたら、回数、動作のゆっくりさ、ゴムバンドなどで少しずつ負荷を増やします。息を止めず、強い痛み、めまい、胸痛、異常な息切れが出たら中止してください。
運動時間を取れない日は、30~60分座ったら立つ、家事で歩く量を増やすなど、安全に続けられる活動を積み重ねることが大切です。
10. 食事はたんぱく質と総エネルギーの両方が大切
筋肉の材料になるたんぱく質は重要ですが、食事量そのものが少ないと、摂取したたんぱく質がエネルギー源として使われやすくなります。主食を極端に減らさず、主菜・副菜を組み合わせてください。
厚生労働省の解説では、予防の目安として適正体重1kg当たり1日1.0g以上のたんぱく質摂取が有効な可能性があるとされています。適正体重が60kgなら、単純計算では1日60g以上です。
ただし、これは全員に共通する処方量ではありません。腎臓病などで食事療法を受けている人は、自己判断でたんぱく質やプロテインを増やさず、医師や管理栄養士に確認してください。
毎食へ加えやすい食品
- 卵、魚、肉
- 牛乳、ヨーグルト、チーズ
- 豆腐、納豆、豆類
- しらす、ツナ缶、さば缶
- 食欲が少ないときの茶わん蒸し、豆乳、ヨーグルト
朝食に卵やヨーグルトを足す、麺類に肉・卵・豆腐を加えるなど、3食へ分けると実践しやすくなります。
サプリメントやHMB、ビタミンDなどは研究されていますが、すべての人に明確な効果が保証されているわけではありません。基本は食事と運動であり、栄養補助食品は不足を補う選択肢として考えます。
11. フレイル・ロコモ・骨粗しょう症との違い
| 用語 | 中心となる問題 | 対象範囲 |
|---|---|---|
| サルコペニア | 筋肉量と筋力の低下 | 主に骨格筋 |
| フレイル | 心身の予備力の低下 | 身体・認知心理・社会面 |
| ロコモ | 移動機能の低下 | 骨・関節・筋肉・神経など |
| 骨粗しょう症 | 骨量と骨質の低下 | 骨折しやすさ |
| 廃用症候群 | 動かないことによる機能低下 | 筋肉を含む全身 |
これらは同時に起こることがあります。筋力低下と骨密度低下が重なると、転倒と骨折の両方へ注意が必要です。骨密度はなぜ下がる?骨粗しょう症の原因・予防も参考になります。
フレイルは身体面だけではなく、気分の落ち込み、認知機能、孤立なども含む広い概念です。健康寿命を延ばすためにできることも、運動・栄養・社会参加を一緒に考える際の参考になります。
12. 早めに受診したいケース
次の変化がある場合は、かかりつけ医、整形外科、老年内科、リハビリテーション科などへ相談してください。
- 意図しない体重減少が続いている
- 数か月で立ち上がりや歩行が明らかに悪化した
- 半年間に複数回転倒した
- 食欲低下、かみにくさ、むせがある
- 入院、手術、骨折後から体力が戻らない
- 心不全、COPD、糖尿病、腎臓病、がんなどを治療している
- 入浴、着替え、買い物などに支障が出ている
- 筋トレを始めてよいか持病のため判断できない
片側の手足だけ急に力が入らない、顔の片側が下がる、ろれつが回らない、突然歩けない、胸痛や強い息苦しさがある場合は、サルコペニアではなく緊急性の高い病気の可能性があります。直ちに救急要請を含む対応をしてください。
13. よくある質問
Q. 何歳から注意すればよいですか?
高齢者に多いものの、AWGS 2025では筋肉の健康に懸念がある50~64歳にも基準が設けられました。運動不足や長期入院がある人は年齢にかかわらず注意が必要です。
Q. 痩せていなければ大丈夫ですか?
体重が多くても筋肉量や筋力が低い場合があります。脂肪が多い状態と筋肉機能の低下が重なるサルコペニア肥満も研究されています。BMIだけでなく、立ち上がり、握力、歩行などの変化も確認してください。
Q. ウォーキングだけで予防できますか?
歩くことは大切ですが、筋力を保つにはスクワットやかかと上げなどの抵抗運動も組み合わせる方が合理的です。バランス運動も転倒予防に役立ちます。
Q. 一度減った筋肉は戻りますか?
適切な運動と栄養により、筋力や身体機能が改善する可能性があります。数か月単位で変化を見ます。
Q. 筋トレは毎日必要ですか?
同じ部位へ強い負荷を毎日かける必要はありません。週2~3日を基本に、軽い歩行や座りっぱなしの中断を日常へ加えます。運動後に痛みや疲労が長く残る場合は負荷を下げてください。
Q. 家庭用体組成計で筋肉量が少ないと表示されました。診断ですか?
診断ではありません。水分や測定時刻で変わるため、同じ条件で経過を見る参考にしてください。数値が低く、握力低下や体重減少もある場合は医療機関での評価を検討します。
Q. プロテインを飲めば予防できますか?
プロテインは不足するたんぱく質を補う食品です。運動せずに飲むだけで筋力低下を防げるとは限りません。通常の食事、総エネルギー、運動、持病を含めて考える必要があります。
14. 小さな行動を続けて筋肉を守る
筋力低下は痛みなく進むことがあり、気づいたときには外出や家事が減っている場合があります。ペットボトルのふた、椅子からの立ち上がり、階段、歩行速度、転倒、体重変化は、日常の中で気づきやすいサインです。
対策の基本は次の5点です。
- 筋力トレーニングを週2~3日行う
- 歩行や家事を続け、座りっぱなしを減らす
- 毎食にたんぱく質源を置き、食事量も確保する
- 関節痛、口腔機能、持病、服薬などの原因を放置しない
- 複数のサインや急な悪化があれば専門家へ相談する
椅子から5回立つ、朝食に卵を足す、長時間座ったら一度立つなど、小さな行動の継続が筋肉を守る土台になります。