将棋に引き分けはある?千日手・持将棋と囲碁の持碁・セキの違い
結論からいうと、将棋には勝敗がつかず、指し直しになるケースがあります。一方、囲碁には得点上の正式な引き分けがあります。
将棋の千日手は同じ局面が繰り返される状態、持将棋は双方の玉が敵陣へ入り、詰ませることが難しくなった状態です。どちらも日常的には「引き分け」と呼ばれますが、公式戦では原則として無勝負・指し直しになります。
囲碁では、地を数えた結果が同じになる持碁(ジゴ)が引き分けです。ただし、通常の対局では6目半のコミがあるため、持碁は原則として起こりません。また、セキは盤面の一部で双方の石が共存する形であり、対局全体の引き分けではありません。
主な違いを先に整理すると、次のようになります。
| 競技 | 用語 | どのような状態か | 原則的な扱い |
|---|---|---|---|
| 将棋 | 千日手 | 同一局面が4回現れた | 先後を替えて指し直し |
| 将棋 | 持将棋 | 入玉して互いに詰ませにくくなった | 駒点により負け、または指し直し |
| 将棋 | 連続王手の千日手 | 一方が王手を続けて局面を反復させた | 王手を続けた側の反則負け |
| 囲碁 | 持碁 | 地を数えた結果が同じ | 引き分け |
| 囲碁 | セキ | 双方の石が互いに取れず共存する | 対局全体は通常どおり決着 |
| 囲碁 | 同一局面反復 | 三劫などで局面が循環する | 双方の同意により無勝負 |
1. 将棋の「引き分け」は無勝負になることが多い
一般的なスポーツでは、勝者が決まらないまま試合を終了することを引き分けと呼びます。将棋では、勝敗がつかない局面が生じても、そのまま一局を終えるとは限りません。
次の二つは区別して考える必要があります。
- 引き分け:その一局を勝ちでも負けでもない結果として終える
- 無勝負:その局では勝敗を確定せず、最初から指し直す
日本将棋連盟の対局規則では、千日手が成立した場合、先手と後手を交代して指し直すと定められています。千日手になった局は一局と見なされず、指し直し局が決着した時点で対局が完結します。
持将棋も、双方が所定の点数を満たして無勝負になった場合は、原則として先後を替えて指し直します。ただし、タイトル戦では個別の実施規定によって、持将棋を一局として扱う場合があります。
そのため、「将棋に引き分けはあるのか」という疑問には、次のように答えるのが正確です。
勝敗がつかない状態はあるものの、多くの場合は正式な引き分けで終了せず、無勝負として指し直す。
大会や対局アプリによって持ち時間や判定方法が異なる場合もあるため、実際に対局するときは個別の規定も確認する必要があります。
2. 千日手とは?同じ局面が4回現れると成立
千日手(せんにちて)は、同じような手を長時間繰り返すことではありません。
次の三つがすべて同一の局面が4回現れたときに成立します。
- 盤上の駒の配置
- 双方の持ち駒の種類と枚数
- 次に指す側
盤上の配置だけが元に戻っても、持ち駒や手番が異なれば同一局面ではありません。反対に、途中の指し手の順番が異なっていても、盤面・持ち駒・手番が完全に同じ状態へ4回戻れば千日手になります。
簡略化すると、次のような循環です。
局面A → 局面B → 局面C → 局面A
↑ ↓
└────同じ状態へ────┘
「同じ局面を3回繰り返すと千日手」と説明されることもあります。これは、最初に現れた局面へ3回戻ると、同一局面が合計4回現れるためです。正式な条件としては、同一局面が4回現れると覚えると混乱しません。
千日手が成立すると、先手と後手を交代して指し直します。最初の局で先手だった人は、指し直し局では後手です。残り時間を引き継ぐかどうかなどは、棋戦や大会の実施規定によって異なります。
同一局面が4回現れる前でも、循環する手順に入っていることを双方が認め、合意した場合には、千日手として指し直すことが認められています。
3. 連続王手による千日手は反則負け
千日手には重要な例外があります。
一方が王手をかけ続け、その一連の手順で同一局面が4回現れた場合は、通常の千日手ではなく連続王手の千日手となります。
この場合、王手を続けた側が反則負けです。
王手を受けている側は、玉を逃がす、王手をかけている駒を取る、合駒をするといった対応を強制されます。攻める側が永久に同じ王手を続けられると、守る側だけに局面を変える責任を負わせることになるためです。
| 状況 | 結果 |
|---|---|
| 王手を伴わず、同一局面が4回現れた | 千日手として指し直し |
| 一方の手がすべて王手で、同一局面が4回現れた | 王手を続けた側の反則負け |
| 循環を外れて同じ局面に戻らなくなった | 対局を続行 |
「王手は3回まで」「4回王手をかけると反則」という意味ではありません。問題になるのは王手の単純な回数ではなく、連続王手を含む一連の手順で同一局面を4回発生させたかどうかです。
途中で別の手を選び、同じ局面へ戻らなければ、連続して何度か王手をかけても反則にはなりません。
4. 持将棋とは?入玉後に駒の点数を数える
持将棋(じしょうぎ)は、玉が敵陣へ入り、互いに相手玉を詰ませることが難しくなったときに用いられる制度です。
玉が相手側の3段目以内へ入ることを入玉、双方の玉が入ることを相入玉と呼びます。
将棋の駒は前方へ進む能力が強いため、敵陣深くへ入った玉を自陣側から追いかけて詰ませるのは簡単ではありません。双方の玉が入玉し、詰みの見込みがなくなった場合には、盤上と持ち駒を点数化して勝敗を判定します。
一般的な24点法では、玉を除く駒を次のように数えます。
| 駒 | 1枚の点数 |
|---|---|
| 飛車・角 | 5点 |
| 金・銀・桂・香・歩 | 1点 |
| 玉 | 0点 |
成った駒も元の駒として数えます。
- 龍:飛車として5点
- 馬:角として5点
- と金:歩として1点
- 成銀・成桂・成香:それぞれ元の駒として1点
双方が持将棋の判定に合意した場合、結果は次のようになります。
- 双方が24点以上:無勝負として指し直し
- 一方が24点未満:24点に満たない側の負け
たとえば、先手26点・後手28点なら双方が基準を満たすため、無勝負になります。先手23点・後手31点なら、先手が24点に届かないため先手の負けです。
標準の将棋駒は、玉を除いて合計54点あります。双方が24点以上を確保することは可能ですが、一方が多くの駒を集めるほど、もう一方が基準を下回る可能性が高くなります。
大会によっては27点制が採用されることもあります。双方が27点の場合に指し直す方式と、後手勝ちとする方式があるため、アマチュア大会では事前の確認が必要です。
5. 入玉宣言法と500手ルール
相入玉になっても、双方が持将棋の成立に合意するとは限りません。そのような場合に使われるのが入玉宣言法です。
宣言する側は自分の手番で「宣言します」と申し出て、対局時計を止めます。主な条件は次のとおりです。
- 自玉が敵陣3段目以内にいる
- 敵陣3段目以内に、玉を除く自分の駒が10枚以上ある
- 自玉に王手がかかっていない
- 対象となる駒の点数が規定を満たしている
点数が31点以上なら宣言した側の勝ち、24点以上30点以下なら無勝負・指し直しです。
ただし、入玉宣言法では、点数の対象が通常の持将棋判定と少し異なります。数えるのは、玉を除く次の駒です。
- 自分の持ち駒
- 敵陣3段目以内にある自分の駒
自陣や中段に残っている盤上の駒は、宣言時の点数には含まれません。また、条件を一つでも満たさないまま宣言すると、宣言した側の負けになります。
合意に至らないまま500手に達した場合は、駒点に関係なく持将棋の無勝負となり、指し直します。500手目の時点で王手がかかっている場合は、連続王手が途切れた段階で持将棋になります。
玉が敵陣へ入っただけで、自動的に持将棋になるわけではありません。
詰みの見込み、双方の合意、駒点、入玉宣言の条件、手数などによって処理が決まります。
6. 千日手と持将棋の違い
千日手と持将棋は、どちらも指し直しになる可能性があるため混同されがちです。しかし、成立する理由はまったく異なります。
| 比較点 | 千日手 | 持将棋 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 同一局面の繰り返し | 入玉して互いに詰ませにくくなる |
| 成立条件 | 同一局面が4回 | 合意、駒点、宣言、500手など |
| 駒の点数計算 | しない | する場合がある |
| 一般的な処理 | 先後を替えて指し直し | 点数不足側の負け、または指し直し |
| 反則になる例 | 連続王手の千日手 | 条件を満たさない入玉宣言 |
| 起こりやすい段階 | 序盤・中盤でも起こり得る | 長手数の終盤が中心 |
千日手では、局面が循環して対局が進まないことが問題になります。
持将棋では、入玉によって、相手玉を詰ませるという通常の勝利条件で決着しにくくなることが問題です。
千日手は、不利な局面から指し直すために戦略的に選ばれることもあります。特に後手側は、指し直し局で先手になるため、状況によっては千日手を受け入れる価値があります。
一方、持将棋では入玉だけでなく、相手の駒を取って点数を確保することも重要になります。詰みを目指す通常の終盤とは異なり、駒点が直接勝敗に影響するためです。
7. 2024年の棋王戦でも持将棋が成立した
持将棋は珍しいものの、プロのタイトル戦でも実際に起きています。
2024年2月4日に行われた第49期棋王戦五番勝負第1局、藤井聡太棋王対伊藤匠七段戦は、双方の玉が相手陣へ入り、129手で持将棋となりました。棋王戦の公式棋譜にも、持将棋で対局が終了したことが記録されています。
一般的な持将棋は無勝負として指し直しますが、この対局ではタイトル戦の規定により、直ちに指し直すのではなく、持将棋の一局として完結しました。
この例から分かるのは、同じ持将棋でも処理が一律ではないことです。
- 一般的な公式戦:無勝負として指し直すのが原則
- タイトル戦:個別規定により一局として扱う場合がある
- アマチュア大会:24点法や27点制など主催者の規定に従う
対局中継で「持将棋」と表示されたときは、駒点だけでなく、その棋戦でどのように扱われるかも確認する必要があります。
8. 囲碁の引き分けは「持碁」
囲碁では、終局後に双方の地を数え、同数であれば引き分けになります。この状態が持碁(ジゴ)です。
日本囲碁規約では、双方の地の目数を比べ、多い側を勝ち、同数の場合を引き分けとして持碁と定めています。
これは将棋の千日手とは異なり、指し直しではなく、得点を数えた結果として成立する正式な引き分けです。
ただし、一般的な互先の対局では、黒が先に打つ有利さを調整するため、白に6目半のコミが与えられます。
白の最終的な得点=白の地+6.5目
地の目数は整数で数えるため、6.5目を加えると結果に0.5目が残ります。この半目があることで、通常の互先では完全な同点になりません。
| 盤面上の地 | コミ適用後 | 結果 |
|---|---|---|
| 黒50目・白44目 | 黒50対白50.5 | 白の半目勝ち |
| 黒51目・白44目 | 黒51対白50.5 | 黒の半目勝ち |
| 黒40目・白40目、コミなし | 40対40 | 持碁 |
日本棋院の基本ルールでも、コミに半目を付ける目的は、持碁を避けるためと説明されています。
コミを付けない定先や置碁では、同点になる可能性があります。置碁では持碁を白勝ちとする慣習もあるため、ハンディキャップ戦では採用ルールを確認しておく必要があります。
9. セキは引き分けではない
セキは、黒と白の石が接近し、どちらも先に相手を取りにいくと自分の石が取られてしまうため、双方が手を出せずに共存する形です。
簡略化すると、次のような関係です。
黒の石 ─ 共有する空点 ─ 白の石
│ │
└─先に詰めると不利─┘
典型的なセキでは、黒も白も相手の石を一方的に取れません。そのため、双方の石は盤上に残り、活き石として扱われます。
ただし、セキになっているのは盤面の一部分だけです。盤面のほかの場所にある黒地と白地を数えれば、対局全体の勝敗は通常どおり決まります。
日本ルールでは、一方だけの活き石で囲まれた空点が地になります。セキ石が接する共有の空点は、通常どちらの地にもならない駄目です。
誤解しやすい点を整理すると、次のようになります。
- セキは対局全体の引き分けではない
- セキを構成する双方の石は活きている
- 共有する空点は通常どちらの地にもならない
- ほかの場所の地を数えて勝敗を決める
囲碁で石を互いに取れない状態があっても、それだけで持碁になるわけではありません。持碁は最終的な地が同数になった結果、セキは局所的な石の生き死にを表す用語です。
なお、囲碁でも三劫や循環劫、長生などによって同一局面が繰り返されることがあります。日本囲碁規約では、対局中に同一局面反復が生じ、双方が同意した場合は無勝負になります。
| 用語 | 原因 | 結果 |
|---|---|---|
| 持碁 | 地を数えた結果が同じ | 引き分け |
| セキ | 局所的に双方の石が共存する | 全体の地を数えて決着 |
| 同一局面反復 | 三劫などで局面が循環する | 双方の同意により無勝負 |
10. よくある質問
Q. 千日手は3回ですか、4回ですか?
同一局面が4回現れたときに成立します。最初の局面へ3回戻ると合計4回になるため、「3回繰り返す」と表現される場合があります。
Q. 同じ駒の動きを繰り返せば千日手ですか?
必ずしも成立しません。盤上の配置だけでなく、双方の持ち駒と手番も同じである必要があります。
Q. 千日手は正式な引き分けですか?
原則として無勝負です。先後を交代して指し直し、指し直し局で最終的な勝敗を決めます。
Q. 連続王手は何回までできますか?
王手の回数そのものに上限があるわけではありません。片方の指し手がすべて王手となる一連の手順で同一局面が4回現れると、王手を続けた側の反則負けです。
Q. 玉が敵陣へ入れば持将棋ですか?
入玉しただけでは成立しません。互いに詰ませる見込みがなくなったことに加え、合意、駒点、入玉宣言法、500手などの条件が関係します。
Q. 持将棋では必ず引き分けになりますか?
必ずではありません。24点法では、一方が24点未満ならその側の負けです。双方が24点以上なら無勝負として指し直します。
Q. 囲碁で同点になったらどうなりますか?
コミを含めた最終結果が同じなら持碁です。ただし、通常の互先では6目半のコミがあるため、完全な同点は原則として起こりません。
Q. セキがあれば引き分けですか?
引き分けではありません。セキは盤面の一部にある石の状態であり、ほかの場所の地を数えて勝敗を決めます。
11. まとめ
将棋と囲碁には、どちらにも勝敗が直ちに決まらない状態があります。ただし、千日手、持将棋、持碁、セキでは、成立する理由も結果も異なります。
- 千日手は、盤面・持ち駒・手番が同じ局面が4回現れた状態
- 通常の千日手は先後を替えて指し直す
- 連続王手の千日手は、王手を続けた側の反則負け
- 持将棋は、入玉後に互いの玉を詰ませにくくなった状態
- 24点法では、24点未満の側が負け、双方24点以上なら指し直し
- 持碁は囲碁の得点上の引き分け
- 互先では6目半のコミがあるため、持碁は原則として起こらない
- セキは局所的に双方の石が活きる形で、引き分けではない
- 囲碁でも同一局面反復により無勝負になる場合がある
対局結果を見るときは、単に「引き分けかどうか」だけでなく、局面が循環したのか、入玉で詰ませにくくなったのか、得点が同じなのか、局所的なセキなのかを分けて考えると、特殊な終局も理解しやすくなります。