スズメが減っているのはなぜ?約18年で4割近く減った背景と絶滅の可能性
結論から言えば、日本のスズメは長期的に減少している可能性が高く、単なる「気のせい」だけでは説明できません。全国調査を比較した研究では、約18年間で個体数が以前の62.1%、つまり4割近く減ったと推定されています。
一方、減少の原因は一つに特定されていません。有力視されているのは、建物の隙間が減って巣を作りにくくなったこと、ヒナの餌となる昆虫や植物の種子が減ったこと、農地や人里の環境が変わったこと、高温などの影響です。
また、スズメは減少しているものの、2026年に公表された環境省の最新レッドリストには掲載されていません。
スズメは減っているが、現在は環境省の絶滅危惧種ではない。原因も完全には解明されておらず、複数の環境変化が重なっている可能性が高い。
この2点を分けて理解することが大切です。
1. スズメは本当に昔より減っているのか
スズメは住宅地や駅前、田畑の周辺で今も見られるため、絶滅が迫っている鳥という印象はありません。しかし、個人の目撃経験ではなく、長期間の調査結果を比べると、全国的な減少傾向が示されています。
2023年に公表された研究では、全国鳥類繁殖分布調査のうち、1997~2002年に行われた第2回調査と、2016~2020年に行われた第3回調査の記録が比較されました。
その結果、日本全体の個体数は、調査間の約18年間で62.1%の水準まで減少したと推定されています。
| 数字 | 正しい意味 |
|---|---|
| 62.1%に減少 | 以前の個体数の62.1%になった |
| 減少した割合 | 約37.9% |
| 分かりやすい表現 | 約18年間で4割近く減った |
| 同じ傾向が続く場合 | 約26年で半減する計算 |
「62.1%減った」という意味ではありません。仮に以前100羽いたとすれば、約62羽になったという推定です。
詳しい解析方法は、鳥類繁殖分布調査の第2回と第3回の間にみられるスズメの減少で公開されています。
環境省の長期調査からも、同じ方向の変化が確認されています。
2024年に公表されたモニタリングサイト1000里地調査では、評価対象となった鳥類106種のうち16種で、調査地における記録個体数が年間3.5%以上の速さで減少していました。この16種には、スズメ、セグロセキレイ、ホトトギスなどが含まれています。
さらに、スズメやヒバリなど、農地や草地といった開けた環境を利用する鳥のグループでは、2015年以降の記録個体数が年間7.4%の割合で減少していました。
ただし、これは特定の調査地や鳥のグループをまとめた結果です。「全国のスズメだけが毎年7.4%ずつ減っている」という意味ではありません。環境省のモニタリングサイト1000の公表資料でも、調査結果だけで個別種の絶滅危険度を決めることはできないと説明されています。
複数の異なる調査で減少傾向が確認されていることから、スズメが昔より少なくなっている可能性は高いと考えられます。
2. スズメは絶滅危惧種になったのか
スズメは、2026年3月に公表された環境省の第5次レッドリストには掲載されていません。
最新の鳥類レッドリストには170種が掲載され、そのうち108種が絶滅危惧種と評価されましたが、スズメは絶滅危惧IA類、絶滅危惧IB類、絶滅危惧II類、準絶滅危惧、情報不足のいずれにも含まれていません。
したがって、次のような表現は正確ではありません。
- スズメが絶滅危惧種に指定された
- スズメが間もなく日本から絶滅する
- スズメがレッドリスト入りした
一方で、レッドリストに掲載されていないからといって、減少を心配する必要がないわけでもありません。
レッドリストは、減少率だけで自動的に決まるものではなく、全国の個体数、生息範囲、地域個体群の分断、繁殖状況など、複数の基準から総合的に評価されます。調査地の一部で急速な減少が確認されても、直ちに全国的な絶滅危険度を示すとは限りません。
環境省第5次レッドリストの公表資料によると、レッドリストは野生生物の絶滅の危険度を生物学的観点から評価したものです。掲載そのものに捕獲を禁止する法的効力が生じる制度ではなく、自然環境保全の基礎資料として使われます。
「絶滅危惧種ではない」と「減少していない」は同じ意味ではありません。
スズメは今も全国に広く分布する普通種ですが、普通種が急速に減っていること自体が、生息環境の変化を示す重要なサインになります。
3. 減少の理由はどこまで分かっているのか
全国規模の研究から分かったのは、スズメが減っていることと、減少幅が大きい地域には一定の傾向があることです。何が直接の原因なのかについては、まだ結論が出ていません。
現在考えられている要因を、根拠の状況に分けると次のようになります。
| 考えられる要因 | 根拠の状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 建物の隙間や営巣場所の減少 | 有力な可能性 | 全国の減少すべてを説明できるとは限らない |
| 昆虫や植物の種子などの餌不足 | 有力な可能性 | 餌の変化を全国一律に測定したわけではない |
| 農地や人里の環境変化 | 減少との関連が考えられる | 農地面積の変化だけでは説明できなかった |
| 高温 | 高温地域ほど減少幅が大きい傾向 | 高温が直接原因と確定したわけではない |
| 猫やカラスによる捕食 | 地域的には影響する可能性 | 全国的な主因である証拠は示されていない |
| 農薬 | 餌となる昆虫を通じた影響が考えられる | 日本全体の減少との因果関係は未確定 |
スズメは、人のいない原生林よりも、建物、田畑、草地、庭などが細かく組み合わさった「人里」を利用する鳥です。
必要なのは、単に緑が多い場所ではありません。
- 巣を作れる建物の穴や隙間
- ヒナに与える昆虫
- 成鳥が食べる植物の種子や穀類
- 身を隠せる植え込みや樹木
- 水浴びや砂浴びのできる場所
これらの一部だけが失われても、繁殖や生存に影響する可能性があります。実際には、巣不足、餌不足、農地管理、高温などが同時に作用していると考える方が自然です。
4. 巣を作れる住宅の隙間が減っている
スズメは、木の枝に開放された巣を作るよりも、瓦の下、軒の隙間、壁の穴、換気口の周辺、電柱の設備など、狭い空間を利用することが多い鳥です。
昔の木造住宅には、瓦や屋根、軒、壁の接合部分に小さな隙間がありました。現代の住宅は、断熱性、気密性、耐震性、防火性が向上し、鳥が入り込める空間が少なくなっています。
人にとって安全で快適な住宅が増えた一方で、スズメにとっては繁殖場所が減った可能性があります。
隙間のある古い建物が減る
↓
巣を作れる場所が少なくなる
↓
限られた穴に営巣が集中する
↓
条件の悪い場所を使う個体が増える
↓
繁殖できるつがいや巣立つヒナが減る可能性
都市部と農村部の営巣環境を比較した研究では、都市部では電柱にある隙間、農村部では家屋にある隙間が多く利用されていました。都市環境と農村環境における営巣場所の研究からも、スズメが人工物の小さな空間に強く依存していることが分かります。
ただし、スズメのために住宅の屋根や壁へ意図的に穴を開けることは適切ではありません。雨漏り、害虫、建材の劣化、ふんの蓄積などにつながるためです。
巣箱を設置する方法もありますが、地域にスズメがいなければ利用されず、設置場所によっては夏に内部が高温になります。巣箱だけを増やせば個体数が回復するとは限りません。
5. 昆虫や種子が得にくくなっている可能性
スズメは米粒やパンを食べる鳥という印象がありますが、繁殖期の食生活はそれほど単純ではありません。
成鳥はイネ科植物などの種子、穀類、小さな昆虫を食べます。成長途中のヒナには、親鳥が昆虫やクモなどを多く運びます。短期間で羽や筋肉を作るヒナにとって、たんぱく質を含む小動物は重要な餌です。
次のような環境では、スズメが利用できる昆虫や種子が減る可能性があります。
- 地面の多くがアスファルトやコンクリートで覆われる
- 雑草が花や種を付ける前に刈り取られる
- 公園や庭から落ち葉や下草が徹底的に除去される
- 植え込みが単一の植物で構成される
- 殺虫剤や除草剤が広い範囲で使われる
- 土のあぜや小さな水路、空き地がなくなる
全国から集めた観察記録を分析した研究では、つがいが連れていた巣立ち後のヒナ数の平均が、商業地で1.41羽、住宅地で1.81羽、農村で2.13羽でした。
| 周辺環境 | つがい当たりの平均ヒナ数 |
|---|---|
| 商業地 | 1.41羽 |
| 住宅地 | 1.81羽 |
| 農村 | 2.13羽 |
スズメの巣立ち後のヒナ数と周辺環境を調べた研究では、都市化が進んだ環境ほど、巣立ち後に確認されるヒナ数が少ない傾向が示されました。
ただし、この差だけで昆虫不足が原因と断定することはできません。巣の温度、親鳥の栄養状態、捕食、巣立ち後の生存率なども関係する可能性があります。
餌不足は有力な説明の一つですが、巣不足などの別の要因と組み合わさっている可能性があります。
6. 農地が減っただけでは説明できない
スズメは田畑の周辺でよく見られるため、農地の減少がそのまま個体数の減少につながったように思えます。しかし、2023年の研究では、スズメの減少を土地利用の時間的な変化だけで説明することはできませんでした。
重要なのは、農地が何ヘクタール残っているかだけでなく、農地の中身や管理方法です。
| 従来多かった環境 | 変化した環境 | 考えられる影響 |
|---|---|---|
| 土や草の残るあぜ道 | コンクリートで固められたあぜ | 昆虫や草の種子が減る |
| 小規模な田畑と水路 | 大区画化された農地 | 隠れ場所や環境の境界が減る |
| 収穫後に残る落ち穂 | 効率的な機械収穫 | 秋冬の餌が得にくくなる |
| 納屋や古い家屋 | 密閉性の高い施設 | 巣を作れる隙間が減る |
| 人が暮らす農村集落 | 過疎化した集落 | 巣と餌場の組み合わせが失われる |
| 定期的に管理される草地 | 管理放棄や森林化 | 開けた環境を利用しにくくなる |
農村では、耕作放棄地が増えれば自然が豊かになり、スズメも増えるとは限りません。
管理されなくなった田畑が背の高い草地や森林へ変わり、周辺の住宅から人がいなくなると、スズメが利用してきた「開けた餌場と建物の巣」が同時に失われることがあります。
反対に、都市なら必ず減るとも限りません。飲食店周辺の餌、街路樹、電柱などを利用できる地域もあります。
都会と田舎のどちらで減っているかを一律に決めることはできず、それぞれ異なる理由で生息条件が悪化する可能性があります。
7. 高温・農薬・猫・カラスはどこまで関係するのか
高温は直接の原因なのか
全国調査の分析では、農地面積が広く、気温が高い調査地点ほど、スズメの減少幅が大きい傾向が示されました。
高温が影響するとすれば、次のような仕組みが考えられます。
- 屋根裏や金属製設備の巣が高温になる
- 親鳥が活動できる時間が短くなる
- 乾燥によって昆虫や植物の種子が減る
- 昆虫の発生時期とスズメの繁殖時期がずれる
ただし、調査で分かったのは、気温と減少幅の間に関連があったことです。高温がスズメを直接減らしたと証明されたわけではありません。
農薬が原因なのか
殺虫剤によって昆虫が減れば、ヒナの餌が得にくくなる可能性があります。除草剤の使用によって草の種子が減ることも考えられます。
一方、日本全体のスズメの個体数と農薬使用量を直接結び付け、全国的な主因だと確定した研究は限られています。「農薬だけが原因」と断定するのは適切ではありません。
猫やカラスが増えたからなのか
屋外を歩く猫やカラスが、スズメの成鳥、ヒナ、卵を捕食することはあります。地域や営巣場所によっては、繁殖に影響する可能性があります。
しかし、現在示されている全国的な減少を、猫やカラスだけで説明できる証拠はありません。捕食に加えて、巣場所や餌の減少などが重なっていると考える必要があります。
飼い猫を室内で飼うことは、野鳥への影響だけでなく、猫自身の交通事故や感染症を防ぐ意味でも重要です。
8. スズメのために身近な場所でできること
スズメを助ける方法として、米やパンをまくことを思い浮かべるかもしれません。しかし、継続的な餌やりには注意が必要です。
特定の場所へ多数の鳥が集まると、次のような問題が起こる可能性があります。
- ふんや鳴き声による近隣トラブル
- 鳥同士の感染症が広がる
- ネズミやカラスが集まる
- 人の食べ物に依存する
- 栄養が偏る
直接餌を与えるよりも、自然の餌や隠れ場所が得られる環境を残す方が持続的です。
土や下草を少し残す
庭や緑地のすべてを舗装せず、土、草、落ち葉が残る小さな区画を設けると、昆虫や植物の種子が生まれやすくなります。
薬剤の使用範囲を絞る
殺虫剤や除草剤が必要な場合は、対象、時期、範囲を限定し、製品の使用方法を守ります。使わずに管理できる場所まで一律に散布する必要はありません。
繁殖中の巣へ近づかない
巣を見つけても、繰り返しのぞいたり、近距離で撮影したりしないことが大切です。人が長時間近くにいると、親鳥が巣へ戻れなくなる場合があります。
巣立ちびなをすぐに拾わない
羽の生えたヒナが地面近くにいても、親鳥が周囲で世話をしていることがあります。
道路上にいる、猫に狙われている、明らかに負傷しているといった状況でなければ、離れた場所から様子を見ます。対応に迷う場合は、日本野鳥の会のヒナを見つけたときの案内が参考になります。
同じ条件で数を記録する
スズメの増減を身近に確かめるには、同じ道、同じ時間帯、同じ観察時間で記録を続けます。
日付:毎月第1日曜日
時間:午前7時から30分間
場所:自宅周辺の同じ1キロメートル
記録:見た羽数、群れの場所、天候
数日見かけないだけでは、地域の個体数が減ったとは判断できません。季節や繁殖状況によって群れの場所が変わるため、長期間の記録が重要です。
9. よくある質問
Q. スズメは日本からいなくなるのですか?
現時点で、近い将来に日本からすべていなくなると予測されているわけではありません。現在も全国に広く分布し、環境省の絶滅危惧種にも指定されていません。ただし、減少傾向が続けば、生息状況の再評価が必要になる可能性があります。
Q. 最近スズメを見ないのは、地域からいなくなったからですか?
必ずしもそうとは限りません。季節、時間帯、餌場、ねぐら、繁殖時期によって居場所が変わります。近所で数日見なかっただけでは、個体数の減少とは判断できません。
Q. 冬になるとスズメは渡っていくのですか?
日本で見られるスズメの多くは、一年を通して同じ地域周辺で暮らす留鳥です。ただし、季節によって移動範囲や群れの大きさが変わるため、いつもの場所で見えなくなることがあります。
Q. スズメに米を与えてもよいですか?
一時的に少量を食べること自体よりも、継続的な餌やりによる過密化や依存、ふん害、感染症が問題になります。住宅地では自治体や施設のルールも確認する必要があります。
Q. 巣箱を設置すればスズメは増えますか?
営巣場所が不足している地域では役立つ可能性がありますが、餌や隠れ場所がなければ繁殖は成功しません。夏の高温、雨、猫やカラスの接近、清掃方法も考える必要があります。
Q. 一番大きな減少原因は何ですか?
まだ一つに特定されていません。建物の隙間の減少、餌となる昆虫や種子の減少、農地や人里の変化、高温などが複合的に作用している可能性があります。
10. まとめ
日本のスズメは、異なる複数の調査によって、長期的な減少傾向が示されています。全国鳥類繁殖分布調査を比較した研究では、約18年間で個体数が以前の62.1%、つまり4割近く減ったと推定されました。
一方、2026年に公表された環境省の最新レッドリストには掲載されておらず、現在は絶滅危惧種ではありません。
減少の背景として考えられるのは、次のような変化です。
- 気密性の高い建物が増え、巣を作れる隙間が減った
- ヒナに必要な昆虫や、成鳥が食べる種子が減った可能性がある
- 農地の面積だけでなく、あぜ、水路、草刈り、収穫方法が変化した
- 過疎化や管理放棄によって、人里特有の環境が失われた
- 気温が高い地域ほど減少幅が大きい傾向がある
重要なのは、原因を一つに決めつけないことです。
スズメは、人間の暮らしから離れた自然だけで生きているのではなく、家屋、田畑、草地、庭などが組み合わさった環境を利用しています。巣だけ、餌だけを増やすのではなく、土、草、昆虫、建物、隠れ場所が共存できる環境を残すことが、多くの身近な野鳥を支えることにつながります。