システムアーキテクト試験とは?難易度・合格率・2026年度日程と新制度を解説
結論から言えば、要件定義や基本設計、システム方式の検討を担当している人には、挑戦する価値の高い国家試験です。直近5回の合格率は15〜16%台で、知識だけでなく、長文事例を読み解く力と実務経験を論理的に説明する力が求められます。
2026年度は現行制度の名称で受験できる最後の年度になる予定です。準備が進んでいる人は2026年度、基礎から学び始める人は2027年度の新制度も比較して判断するのが現実的です。
1. 2026年度の日程と新制度への移行
2026年度から、会場のパソコンで解答するCBT方式へ移行します。科目A群と科目B群は別の期間に受験します。
| 項目 | 2026年度前期 |
|---|---|
| 申込受付期間 | 2026年10月6日〜10月24日 |
| 科目A-1・A-2 | 2026年10月17日〜10月27日 |
| 科目B-1・B-2 | 2026年11月11日〜11月23日 |
| 合格発表 | 2027年2月頃の予定 |
| 受験手数料 | 7,500円 |
申込みでは科目A群と科目B群を同時に予約します。日程や手続きは変更される可能性があるため、IPAの2026年度実施スケジュールを確認してください。
CBT化されても出題形式、試験時間、合格基準は変わりません。ただし、記述・論述もキーボードで入力し、個人のキーボードやマウスは持ち込めません。メモ用紙と筆記用具は会場から配布され、2026年度の問題は非公開となります。
IPAは現行制度を2026年度の実施で終了し、2027年度から新制度へ移行する予定です。システム開発に関する分野は、仮称の「プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験」へ再編される案が示されています。
| 現行制度 | 2027年度以降の予定 |
|---|---|
| システムアーキテクト試験 | システム領域の新試験へ再編 |
| A-1・A-2・B-1・B-2 | A-1・A-2・Bへ再構成予定 |
| 2026年度前期に実施 | 2027年度夏頃〜秋頃に開始予定 |
名称や出題範囲、免除制度には検討段階の情報が含まれます。IPAの制度見直し案では、2026年度までの合格情報も今後のスキル情報基盤へ登録し、活用できるようにする方針が示されています。
試験区分の再編は、2026年度までの合格実績が無効になるという意味ではありません。
B-1やB-2の準備が進んでいる人は、2026年度の受験を避ける必要はありません。学習を始めたばかりなら、新制度の確定情報も見てから目標を決める方法があります。
2. どのような能力を問う国家試験なのか
略号はSA、英語名称はSystems Architect Examinationです。IPAは対象者を、情報システムの要件を定義し、それを実現するアーキテクチャを設計して、開発を主導する人と位置づけています。
業務課題と利用者の要求
↓
機能要件・非機能要件の定義
↓
システム全体の構造と方式の設計
↓
開発・テスト・運用への具体化
プログラミング能力だけを問うものではありません。性能、可用性、保守性、セキュリティ、費用、納期などを比較し、全体として妥当な仕組みを決める力が中心です。
たとえば店舗向け在庫管理システムを刷新するなら、通信障害時の業務継続、会計システムとの連携、店舗数の増加、取引情報の保護などを同時に考えます。制約とリスクを整理し、方式を選んだ理由を説明するのが主な役割です。詳しい対象者像はIPAの試験区分案内で確認できます。
企業システムは、クラウドや外部サービスを組み合わせる構成が増えています。全体設計が不十分なら、データの不整合、障害範囲の複雑化、認証管理の負担増加などを招きます。
IPAの「DX動向2025」では、DXを推進する人材が不足していると答えた日本企業は85.1%でした。IPAの調査結果からも、業務と技術をつなぎ、全体構造を考えられる人材を育てる重要性が読み取れます。
3. 出題形式・合格率・難易度
| 科目 | 時間 | 形式 | 出題数・解答数 | 合格基準 |
|---|---|---|---|---|
| 科目A-1 | 50分 | 四肢択一 | 30問・30問 | 60点以上 |
| 科目A-2 | 40分 | 四肢択一 | 25問・25問 | 60点以上 |
| 科目B-1 | 90分 | 記述式 | 3問・2問 | 60点以上 |
| 科目B-2 | 120分 | 論述式 | 2問・1問 | ランクA |
採点は段階的です。A-1が基準点未満ならA-2以降、A-2が基準点未満ならB-1以降、B-1が基準点未満ならB-2が採点されません。
A-1通過 → A-2通過 → B-1通過 → B-2でランクA → 合格
すべての得点を平均して60点を取ればよいわけではなく、苦手科目を別科目の高得点で補えません。応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験の合格者などは、所定の条件を満たせば科目A-1の免除を申請できます。
直近5回の合格率は次のとおりです。
| 年度 | 合格率 |
|---|---|
| 2021年度 | 16.5% |
| 2022年度 | 15.0% |
| 2023年度 | 15.8% |
| 2024年度 | 15.0% |
| 2025年度 | 15.5% |
2025年度春期は応募者6,021人、受験者3,963人、合格者616人、合格者の平均年齢は36.8歳でした。詳しい数値はIPAの2025年度春期合格発表で公表されています。
難しさの中心は、広い知識範囲、長文事例の読解、実務経験の論述です。受験者には開発や設計の経験者も多いため、知識問題だけに強くても合格は難しくなります。
4. 取得メリットと向いている人
最大のメリットは、要件定義や方式設計に必要な知識と判断力を、国家試験の合格実績として示せることです。学習を通じて、機能要件と非機能要件、代替案、リスク、関係者との調整を振り返るため、経験を再利用しやすい形へ整理できます。
| 状況 | 受験価値の目安 |
|---|---|
| 要件定義・基本設計を担当している | 高い |
| 開発経験があり上流工程へ進みたい | 比較的高い |
| 社内の昇格・資格手当の対象である | 高い |
| IT実務未経験から転職したい | 優先度は低め |
| 資格だけで年収を上げたい | 過度な期待は禁物 |
特に向いているのは、利用部門と開発部門の間で要求を整理する人、複数システムの連携や刷新に関わる人、非機能要件や技術選定の理由を説明する人です。
一方、合格だけで転職や昇格が決まるわけではなく、独占業務もありません。完全な未経験者にはB-2の負担が大きいため、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験を先に検討してもよいでしょう。
似た高度試験とは、判断する対象が異なります。
| 試験区分 | 判断の中心 |
|---|---|
| システムアーキテクト | 何を、どの方式で実現するか |
| プロジェクトマネージャ | 期限・費用・品質・体制をどう管理するか |
| データベーススペシャリスト | データをどう構造化し、性能を保つか |
| システム監査技術者 | 統制やリスク対応が妥当か |
自分が現在行っている判断、または今後担当したい判断に近い区分を選ぶことが大切です。
5. 合格に近づく勉強法
最初にIPAの試験要綱・シラバスと公開済みの過去問題・採点講評を確認します。参考書を読み切ってから問題へ進むより、先に出題形式を把握した方が、必要な学習を判断しやすくなります。
科目A-1・A-2では、過去問で知識の穴を確認します。誤答を「知識不足」「読み違い」「計算ミス」「時間不足」に分け、専門用語は用途、長所、短所、代替手段まで説明できるようにします。
科目B-1では、設問の主語、理由の数、字数を確認し、事例文の根拠へ戻る練習をします。一般論として正しくても、事例の条件に合わなければ得点につながりにくいためです。
科目B-2では、論文に使える経験を複数用意し、次を整理します。
- システムの目的と利用者
- 業務上の課題
- 機能要件と非機能要件
- 制約条件とリスク
- 比較した代替案
- 採用した方式と理由
- 関係者との調整
- 結果と改善点
基本構成は次のとおりです。
背景・目的 → 課題・要求・制約 → 選択肢 → 採用理由 → 実施・評価
「クラウドを採用した」のように行動だけを書くのではなく、「処理量が増えても応答時間を保つ必要があったため採用した」のように、要求と判断を因果関係でつなぎます。利用者数、処理件数、停止可能時間などが入ると、判断の現実性が伝わります。
2026年度はキーボード入力になるため、120分で構成、入力、見直しまで終える練習も欠かせません。実在する案件を使う場合は、企業名や個人情報を一般化してください。
6. 経験別の学習計画
必要な学習量は、科目A-1免除の有無、上流工程の経験、論述経験によって変わります。根拠のない総学習時間を目標にするより、科目ごとの到達基準を決める方が現実的です。
| 現在の状況 | 優先する学習 |
|---|---|
| A-1免除・上流経験あり | A-2の知識確認、B-1演習、B-2の答案完成 |
| A-1免除・論述未経験 | B-2を早めに始め、複数テーマで書き切る |
| A-1免除なし | A-1対策とA-2対策を並行し、B科目も後回しにしない |
| 実務経験が少ない | 事例文の読み方と、設計判断の理由づけを重点的に学ぶ |
学習開始時には、A-2を一回分、B-1を一問、B-2のテーマを一つ確認します。点数が低くても問題ありません。知識不足なのか、文章から条件を拾えないのか、経験を整理できないのかを分けることが目的です。
中盤では、A科目の正答率を安定させながら、B-1を時間内に二問解く練習を続けます。B-2は構成メモだけで終わらせず、最後まで入力して初めて、時間不足や説明の飛躍に気づけます。
科目A群の受験後も、結果の感触だけでB群の学習を止めないことが大切です。2026年度はA群とB群の実施期間が分かれているため、その間をB-1とB-2の仕上げに使えます。試験直前は新しい教材を増やすより、誤答記録、採点講評、論文の経験一覧を見直してください。
7. よくある質問と受験判断
Q. 2027年度の新制度まで待つべきですか?
B-1やB-2の準備が進んでいる人は、2026年度に受験する判断が合理的です。基礎から長期間かけて学ぶ人は、新制度の確定情報も確認してから選ぶ方法があります。
Q. 実務経験がなくても受験できますか?
受験資格の制限はありません。ただし、B-2では具体的な経験を用いて設計判断を説明する力が必要です。未経験の場合は、基礎試験の学習や要求整理に関わる経験を先に積む方が取り組みやすくなります。
Q. 応用情報技術者試験に合格してから受けるべきですか?
必須ではありません。所定期間内の合格者は科目A-1免除の対象になり、知識範囲にもつながりがあります。上流工程の経験があり、過去問で得点できる場合は直接挑戦できます。
Q. 合格までに何時間必要ですか?
公式な標準学習時間はありません。総時間より、A-2で安定して得点できるか、B-1を90分で2問解けるか、B-2を120分で完成できるかを基準にします。
Q. 合格すれば年収は上がりますか?
一律には上がりません。資格手当や昇格条件を設ける企業もありますが、実務成果や担当範囲と合わせて評価されます。
Q. 合格に有効期限はありますか?
合格実績そのものに更新制度はありません。ただし、技術や開発手法は変化するため、合格後も知識を更新する必要があります。
受験前には、科目A-1の免除対象か、A-2で基礎点を取れるか、B-1を90分で2問解けるか、B-2に使える経験を整理できるかを確認してください。
準備が進んでいるなら、現行制度最後の実施予定である2026年度へ挑戦する価値はあります。まだ知識や経験が不足しているなら、急いで受験することだけを目的にせず、新制度も含めて学習計画を立てることが大切です。