台風は名前があるのになぜ「○号」で呼ぶ?番号の付け方とアジア名の決め方
日本で発表される台風には、「台風第○号」という番号と、国際的に使われるアジア名の両方があります。名前が付いていないから数字で呼んでいるわけではありません。
国内のニュースや気象情報で番号が中心になるのは、アジア名が導入される前から番号による呼び方が長く使われ、社会に定着しているためです。一方、英語による情報や国際的な気象情報ではアジア名が使われます。
番号と名前は、どちらか一方だけが正しいのではありません。同じ台風を異なる場面で識別するための二つの方法です。
1. 「台風第○号」の番号はどう決まる?
気象庁は、毎年1月1日以後に発生した台風を、発生した順に数えます。その年に最初に発生すれば台風第1号、10番目なら台風第10号です。
| 表記 | 表していること |
|---|---|
| 台風第1号 | その年に最初に発生した台風 |
| 台風第5号 | その年に5番目に発生した台風 |
| 台風第20号 | その年に20番目に発生した台風 |
番号は年が変わると再び1号から始まります。そのため、「台風第10号」だけでは、何年に発生した台風なのかを永久に特定できません。
過去の記録では、「2025年台風第10号」のように年と番号を組み合わせて確認することが大切です。
一度台風になったものが弱まり、熱帯低気圧に変わった後で再発達した場合は、原則として新しい番号を付けず、以前と同じ番号を使います。詳しい運用は気象庁「台風の番号とアジア名の付け方」で確認できます。
天気図や専門的な資料では、西暦の下2桁と発生順を組み合わせた4桁の番号も使われます。たとえば「T2510」であれば、2025年の台風第10号を意味します。
台風番号は、強さの順位ではなく、その年に発生した順番を示している。
第20号が第5号より強いとは限りません。番号が小さくても猛烈な勢力に発達することがあり、番号が大きくても比較的弱い場合があります。
2. 名前があるのに日本では番号が中心なのはなぜ?
最大の理由は、番号による呼び方が国内で長く使われてきたからです。
気象庁は、日本では50年以上前から台風を番号で呼んできた歴史があるため、名前よりも台風番号で呼ばれることが多いと説明しています。
現在のアジア名が導入されたのは2000年です。その時点ですでに「台風第○号」という表現が、気象情報、ニュース、行政の防災情報、学校教育などに広く定着していました。
つまり、番号が名前より科学的に優れているから採用されているわけではありません。国内で長年使われてきた仕組みを、現在も一般向けの情報に使用していると考えるのが正確です。
番号には、実用上の分かりやすさもあります。
- その年に何番目の台風か分かる
- 外国語の名前を覚えなくても識別できる
- 文字でも音声でも短く伝えられる
- 発音の違いが生じにくい
- 年を添えれば過去の記録を整理しやすい
ただし、これらは番号を使う利点です。番号呼びが続いている根本的な背景は、国内における歴史と定着にあります。気象庁の台風名に関する解説でも、この点が示されています。
3. 番号とアジア名はどう使い分けられる?
日本で目にする台風の呼び方は、使われる場面によって変わります。
| 使用される場面 | 主に使われる表記 |
|---|---|
| 日本国内の一般向け気象情報 | 台風第○号 |
| 日本語のニュースや防災情報 | 台風第○号 |
| 気象庁の英語情報 | アジア名 |
| 国際的な気象情報 | アジア名 |
| 過去の台風を厳密に特定する資料 | 年と番号、または名前と識別番号 |
たとえば、一つの台風が日本語では「台風第7号」、英語では「Tropical Storm ○○」と表されることがあります。
これは別々の現象ではありません。同じ台風を、日本国内では番号、国際的には名前で示しているだけです。
国内向けの識別 台風第○号
+
国際的な識別 アジア名
=
同じ一つの台風
1999年以前、北西太平洋の台風には米国が付けた英語名が使われていました。2000年からは、台風委員会が定めたアジア名へ切り替わっています。
しかし、日本国内ではそれ以前から番号方式が定着していたため、アジア名が始まった後も番号が主な呼び方として残りました。
4. アジア名は誰がどうやって決める?
北西太平洋や南シナ海で発生する台風のアジア名は、発生するたびに担当者が考えているわけではありません。
日本を含む台風委員会のメンバーが提案した名前をまとめ、あらかじめ用意された140個のリストから順番に使います。
2000年の台風第1号には、カンボジアが提案した「ダムレイ」が付けられました。ダムレイはカンボジア語で「象」を意味します。その後はリストの順に進み、140番目まで使うと先頭へ戻ります。
番号とアジア名では、年の変わり目の扱いが異なります。
| 識別方法 | 年が変わったとき |
|---|---|
| 台風番号 | 毎年、第1号から数え直す |
| アジア名 | 前年の続きから次の名前を使う |
仮に、その年の最後の台風にリストの50番目の名前が付いたなら、翌年最初の台風には51番目の名前が使われます。毎年ダムレイから始まるわけではありません。
気象庁が用いる1991~2020年の平年値では、台風の年間発生数は25.1個、日本への接近数は11.7個、上陸数は3.0個です。台風の平年値から考えると、140個の名前はおおむね5~6年で一巡します。
名前を付けることには、特定の台風を覚えやすくし、複数の熱帯低気圧が同時に存在する場合の混乱を減らす役割があります。言語や番号体系が異なる国同士で情報を交換するときにも、共通の固有名が役立ちます。
5. 日本が提案した10個の名前は星座に由来する
140個のアジア名のうち、日本は10個を提案しています。現在の公式リストに掲載されている日本提案名は、次の通りです。
| アジア名 | 読み方 | 由来 |
|---|---|---|
| Koinu | コイヌ | こいぬ座 |
| Tomo | トモ | とも座 |
| Hebi | ヘビ | へび座 |
| Kajiki | カジキ | かじき座 |
| Koto | コト | こと座 |
| Kujira | クジラ | くじら座 |
| Koguma | コグマ | こぐま座 |
| Tokei | トケイ | とけい座 |
| Tokage | トカゲ | とかげ座 |
| Yamaneko | ヤマネコ | やまねこ座 |
星座名が選ばれたのは、特定の個人、企業、商品、地域に偏りにくく、比較的中立的だからです。
さらに、空に関係する名前で台風とのイメージ上のつながりがあり、多くの人に親しまれているという理由もあります。
アジア名の候補には、次のような条件があります。
- アルファベット9文字以内
- 音節が多すぎず発音しやすい
- 特定の個人や企業の名称ではない
- 他のメンバーの言語で不適切な意味を持たない
- 文化的、社会的な問題が生じにくい
現在有効な名称はESCAP/WMO台風委員会の2026年版リストで確認できます。
「コイヌ」や「コグマ」という名前が付いても、台風が小さい、弱いという意味ではありません。名称の由来と勢力には関係がありません。
6. 大きな被害を出した名前は変更されることがある
アジア名は循環して繰り返し使われますが、すべての名前が永久に残るわけではありません。
大きな災害をもたらした台風などでは、台風委員会のメンバーからの要請を受け、その名前を今後使わないよう変更することがあります。外された位置には、新しい名前が補充されます。
同じ名前を別の台風へ再利用すると、過去の大災害と混同される可能性があります。被災した人々への配慮という意味でも、重大な被害と結び付いた名前をリストから外すことがあります。
2026年版のリストでは、日本が以前提案していた「ヤギ」と「ウサギ」に代わり、「トモ」と「ヘビ」が掲載されています。このように、140個の枠組みは維持されても、中に入る名称は変更される場合があります。
世界気象機関も、熱帯低気圧に名前を付けることで、気象機関、報道機関、防災担当者、一般の人々の間で混乱を減らしやすくなると説明しています。重大な被害をもたらした名前を外す仕組みは、ハリケーンなど他の海域でも採用されています。
詳しい考え方は世界気象機関の熱帯低気圧命名に関する解説にまとめられています。
7. 「台風○号」と呼ぶのは日本だけ?
日本以外でも、気象機関が熱帯低気圧を管理するための番号や識別記号を使うことがあります。番号そのものが日本にしか存在しないわけではありません。
ただし、日本の一般向けニュースでは「台風第○号」が前面に出るのに対し、海外の報道では固有名が目立つ傾向があります。
この違いが、「日本だけ数字で呼び、海外ではすべて人名で呼ぶ」という印象につながっています。
海外で使われる名前も、必ずしも人名ではありません。北西太平洋のアジア名には、次のような言葉が含まれています。
- 動物
- 植物
- 星座
- 山や川などの地名
- 神話上の存在
- 食べ物
- 人名
一方、大西洋のハリケーンでは、人名形式の名称が広く使われています。
台風とハリケーンは、どちらも熱帯低気圧の仲間です。主に存在する海域や、各地域で用いる分類によって呼び方が変わります。
ただし、日本語の「台風」と国際分類上の「Typhoon」は、風速の範囲が完全に同じではありません。
| 分類 | 最大風速 |
|---|---|
| 日本語の「台風」 | およそ17m/s以上 |
| Tropical Storm | 34ノット以上48ノット未満 |
| Severe Tropical Storm | 48ノット以上64ノット未満 |
| Typhoon | 64ノット以上 |
日本語で台風と呼ばれていても、英語では勢力に応じてTropical StormやSevere Tropical Stormと表記されることがあります。
「台風を英語にすれば、すべてTyphoonになる」とは限りません。
8. 番号と名前について誤解されやすいこと
番号が大きいほど強いわけではない
第25号は、その年に25番目に発生したという意味です。強さ、中心気圧、大きさ、被害の程度を示す順位ではありません。
アジア名から危険度は判断できない
「コイヌ」や「コグマ」のような親しみやすい名前でも、強い勢力に発達する可能性があります。名前の印象で危険度を判断してはいけません。
同じ名前が数年後に再び使われる
アジア名は循環リストなので、同じ名前が数年後に再登場します。過去の台風を特定するときは、名前だけでなく年や番号も確認します。
「伊勢湾台風」は通常のアジア名ではない
伊勢湾台風や令和元年東日本台風などは、顕著な災害を起こした自然現象について、記録や教訓を後世に伝える目的などから気象庁が定めた名称です。
発生順に付けられるアジア名とは、別の仕組みです。気象庁の名称設定基準では、対象となる現象や名称の付け方が示されています。
番号だけでは最新情報か判断できない
同じ番号は毎年使われます。SNSなどで進路図を見たときは、次の三つを確認することが大切です。
- 何年の台風か
- 何時に発表された情報か
- 気象庁など信頼できる機関の情報か
前年の画像や古い予報図を、現在発生している台風の情報と取り違えないよう注意が必要です。
9. よくある質問
Q1. 台風には必ずアジア名が付くのですか?
北西太平洋または南シナ海で台風として認定された場合、原則としてリストに基づくアジア名が付けられます。
ただし、別の担当海域から名前を持ったまま移動してきた熱帯低気圧では、すでに付いている名前を引き継ぐことがあります。
Q2. 台風第1号は毎年1月1日に発生しますか?
いいえ。1月1日以後、最初に台風の基準へ達したものが第1号になります。実際の発生日は年によって異なります。
Q3. 熱帯低気圧にも台風番号は付きますか?
台風の基準に達していない段階では、台風第○号とは呼びません。
一度台風になって番号が付き、その後に熱帯低気圧へ弱まった場合は、再発達しても原則として同じ番号が使われます。
Q4. アジア名は毎年ダムレイから始まりますか?
始まりません。名前のリストは年をまたいで続きます。前年最後の台風に使った名前の次から再開します。
Q5. 同じ年に二つの台風が同じ名前になることはありますか?
通常はありません。140個のリストを順番に使うためです。
年間発生数の平年値は25.1個なので、一年の間にリストが一巡して同じ名前が再登場する可能性は、現実的には極めて低いといえます。
Q6. 台風がハリケーンに変わることはありますか?
熱帯低気圧が海域の境界を越えると、地域の分類に応じて呼ばれ方が変わることがあります。ただし、境界を越えた瞬間に現象そのものが別物になるわけではありません。
Q7. 一般の人が台風の名前を応募できますか?
個人がその都度自由に応募して決める仕組みではありません。台風委員会のメンバーが名称を提案し、所定の手続きを経てリストへ採用します。
10. まとめ
日本で番号による呼び方が目立つのは、台風に名前がないからではありません。国内では長年にわたり「台風第○号」という形式が使われ、一般向けの気象情報として定着しているためです。
要点を整理すると、次のようになります。
- 台風番号は、その年に発生した順番を示す
- 番号は毎年1号から数え直す
- 一つの台風には番号とアジア名の両方がある
- 国内の一般向け情報では番号が主に使われる
- 英語や国際的な情報ではアジア名が使われる
- アジア名は140個のリストを年をまたいで順番に使う
- 日本提案の名前は星座に由来する
- 大きな災害をもたらした名前は変更されることがある
- 番号や名前から強さや危険度は判断できない
台風情報に接したときは、呼び方だけでなく、年、発表日時、進路、風雨の予想を合わせて確認することが大切です。
番号と名前の仕組みを知っておけば、日本語と海外の情報を見比べるときにも、同じ台風を正しく追いやすくなります。