失業手当はいくら・いつからもらえる?雇用保険の条件・申請方法・もらえない人をわかりやすく解説
退職後のお金で最初に確認したいのが、雇用保険の基本手当です。一般には「失業手当」「失業保険」と呼ばれますが、正式には雇用保険の「基本手当」といいます。
結論からいうと、基本手当は退職すれば自動的にもらえるお金ではありません。ハローワークで求職の申込みを行い、「働く意思と能力があるのに就職できていない状態」と認められ、一定の加入期間を満たす必要があります。
一方で、条件を満たせば、退職後の生活費を支えながら次の仕事を探すための大きな助けになります。自己都合退職でも対象になり得ますし、倒産・解雇・雇止めなどの場合は、受給開始時期や給付日数で有利になることがあります。
大切なのは、「自分は対象か」「いくらもらえるのか」「いつから支給されるのか」「申請で何を間違えると不利になるのか」を退職前後に整理しておくことです。
1. まず結論:もらえる人・金額・申請先の早見表
退職後に確認すべきポイントを先にまとめると、次の通りです。
| 確認項目 | 基本の考え方 |
|---|---|
| 正式名称 | 雇用保険の基本手当 |
| 一般的な呼び方 | 失業手当、失業保険 |
| 申請先 | 住所地を管轄するハローワーク |
| もらえる人 | 働く意思と能力があり、求職活動をしている人 |
| 加入期間の目安 | 原則、離職前2年間に通算12か月以上 |
| 会社都合などの例外 | 離職前1年間に通算6か月以上で対象になる場合あり |
| 金額の目安 | 退職前賃金のおおむね50〜80%相当の日額 |
| 支給日数の目安 | 90日〜150日が多い。会社都合などでは長くなる場合あり |
| 自己都合退職 | 原則として給付制限あり |
| 申請期限 | 受給期間は原則、離職日の翌日から1年間 |
ここで最も誤解されやすいのは、基本手当が「退職した人全員に出るお金」ではない点です。あくまで、再就職する意思と能力がある人の生活を支える制度です。
そのため、退職後しばらく休むつもりの人、病気やけがですぐ働けない人、家業や自営業に専念する人、求職活動をしない人は、原則としてすぐには対象になりません。
2. 雇用保険は、失業中の生活と再就職を支える制度
雇用保険は、労働者が失業したとき、育児・介護で休業するとき、教育訓練を受けるときなどに給付を行う公的保険制度です。
その中で、退職後に関係する代表的な給付が基本手当です。ハローワークは、基本手当について、失業中の生活を心配せず再就職活動ができるように支給されるものと説明しています。
雇用保険という名前だけを見ると、会社員だけの制度に見えるかもしれません。しかし、一定条件を満たすパート、アルバイト、派遣社員、契約社員も対象になります。
現在の主な加入条件は、次の通りです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 雇用見込み | 31日以上の雇用見込みがある |
| 労働時間 | 1週間の所定労働時間が20時間以上 |
| 対象 | 正社員だけでなく、条件を満たす非正規雇用も含む |
さらに、2028年10月からは雇用保険の適用対象が広がり、週所定労働時間の要件が「20時間以上」から「10時間以上」に変更される予定です。短時間で働く人にも関係が広がるため、雇用保険はますます身近な制度になります。
3. なぜ今、知っておく重要性が高いのか
失業は、特別な人だけに起こるものではありません。総務省の労働力調査によると、2026年4月の完全失業率は2.5%、完全失業者数は193万人でした。就業者数が増えている時期でも、転職、雇止め、倒産、業績悪化、事業再編などで仕事を失う人は一定数います。
また、会社員や一定条件を満たすパート・アルバイトは、毎月の給与から雇用保険料を負担しています。2026年度の一般の事業における雇用保険料率は、労働者負担が5/1,000、事業主負担が8.5/1,000、合計13.5/1,000です。
たとえば、一般の事業で月給30万円の人なら、労働者負担分の目安は次の通りです。
300,000円 × 5 / 1,000 = 1,500円
毎月保険料を払っていても、制度を知らなければ、申請が遅れたり、離職理由を確認しないまま手続きしたりして、本来受けられた支援を逃す可能性があります。
退職後に慌てないためには、在職中から「自分は雇用保険に入っているか」「離職票はいつ届くか」「退職理由は実態と合っているか」を確認しておくことが大切です。
4. もらえる条件:自分が対象か確認する
基本手当を受けるには、主に次の条件を満たす必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 失業の状態である | 就職する意思と能力があり、積極的に求職活動をしているが、職業に就けない状態 |
| 求職申込みをする | ハローワークで求職の申込みを行う |
| 離職票を提出する | 会社から受け取った離職票をハローワークに提出する |
| 被保険者期間がある | 原則、離職前2年間に通算12か月以上 |
| 離職理由による例外 | 倒産・解雇などでは、離職前1年間に通算6か月以上で対象になる場合あり |
次のチェックに多く当てはまる人は、対象になる可能性があります。
- 退職前に雇用保険へ加入していた
- 離職前2年間に通算12か月以上働いていた
- すぐに働ける状態である
- 再就職する意思がある
- ハローワークで求職活動をする予定がある
- 離職票を受け取れる見込みがある
反対に、次のような場合は注意が必要です。
- 退職後しばらく休養するつもりで、求職活動をしない
- 病気やけがですぐに働けない
- 妊娠・出産・育児などで就職できる状態ではない
- 学業に専念する
- 家業や自営業に専念する
- すでに次の就職先が決まっている
ただし、病気、けが、妊娠、出産、育児などですぐ働けない場合でも、受給期間の延長手続きができるケースがあります。働けない期間があるからといって、すぐに諦める必要はありません。
5. いくらもらえるのか:計算方法と月給別の目安
基本手当の金額は、ざっくりいうと「退職前の賃金」と「離職時の年齢」によって決まります。
基本の計算式は次の通りです。
賃金日額 = 退職前6か月の賃金総額 ÷ 180
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率
退職前6か月の賃金には、毎月決まって支払われる給与が使われます。賞与などは原則として含まれません。給付率は、賃金が低い人ほど高く、賃金が高い人ほど低くなる仕組みです。
ハローワークの説明では、基本手当日額は賃金日額のおおむね50〜80%、60〜64歳は45〜80%です。
目安として見ると、次のようになります。
| 退職前の月給目安 | 賃金日額の目安 | 基本手当日額のイメージ | 90日受給した場合の総額目安 |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 約6,667円 | 約4,700〜5,300円 | 約42万〜48万円 |
| 30万円 | 約10,000円 | 約5,500〜6,500円 | 約50万〜59万円 |
| 40万円 | 約13,333円 | 約6,500〜7,500円 | 約59万〜68万円 |
これはあくまで理解しやすくするための概算です。実際の金額は、年齢、賃金日額、給付率、上限・下限によって変わります。
2025年8月1日以降の基本手当日額には、次の上限・下限があります。
| 離職時の年齢 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|
| 29歳以下 | 7,255円 |
| 30〜44歳 | 8,055円 |
| 45〜59歳 | 8,870円 |
| 60〜64歳 | 7,623円 |
| 全年齢の下限 | 2,411円 |
たとえば、退職前6か月の賃金総額が180万円なら、賃金日額は1万円です。
1,800,000円 ÷ 180 = 10,000円
仮に基本手当日額が6,000円、所定給付日数が90日なら、総額の目安は次のようになります。
6,000円 × 90日 = 540,000円
ただし、基本手当は最初に全額が一括で振り込まれるわけではありません。原則として4週間ごとの失業認定を受け、その認定後に支給されます。
6. 何日分もらえるのか:自己都合と会社都合の違い
基本手当の所定給付日数は、年齢、雇用保険の加入期間、離職理由によって変わります。
一般的な自己都合退職などの場合、所定給付日数は次のように整理されます。
| 被保険者であった期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
一方、倒産・解雇などで離職した人は「特定受給資格者」、一部の雇止めや正当な理由のある離職は「特定理由離職者」として扱われることがあります。この場合、年齢や加入期間によって給付日数が長くなることがあります。
| 比較項目 | 自己都合退職 | 会社都合退職など |
|---|---|---|
| 代表例 | 転職、家庭の都合、自己判断で退職 | 倒産、解雇、雇止めなど |
| 被保険者期間 | 原則、離職前2年間に12か月以上 | 離職前1年間に6か月以上でよい場合あり |
| 給付制限 | 原則あり | 原則なし |
| 給付日数 | 90〜150日が多い | 年齢・加入期間により長くなる場合あり |
| 確認すべきこと | 正当な理由があるか | 離職票の理由が実態と合っているか |
重要なのは、離職票の離職理由です。
たとえば、実態としては雇止め、退職勧奨、長時間労働、ハラスメントに近い事情があったのに、離職票では単純な自己都合退職になっている場合、給付制限や給付日数で不利になる可能性があります。
離職票の内容に違和感がある場合は、ハローワークで事情を説明し、メール、契約書、勤怠記録、退職勧奨の記録など、説明に使える資料を持参しましょう。
7. いつからもらえるのか:待期期間と給付制限
基本手当は、ハローワークで手続きをした日からすぐ振り込まれるわけではありません。
まず、受給資格決定日から7日間は「待期期間」です。この期間は、離職理由に関係なく基本手当は支給されません。
その後の扱いは、離職理由によって変わります。
| 離職理由 | 支給開始の考え方 |
|---|---|
| 倒産・解雇など | 7日間の待期後、失業認定を経て支給対象になりやすい |
| 正当な理由のある自己都合 | 給付制限がつかない場合がある |
| 正当な理由のない自己都合 | 原則として給付制限あり |
| 重責解雇 | 給付制限あり |
2025年4月1日以降に正当な理由なく自己都合退職した場合、給付制限は原則1か月です。2025年3月31日以前の離職では原則2か月でした。ただし、退職日からさかのぼって5年間のうちに、正当な理由のない自己都合退職が複数回ある場合などは、給付制限が3か月になることがあります。
また、2025年4月以降は、一定の教育訓練等を受ける場合に給付制限が解除される制度も始まっています。退職後に職業訓練や学び直しを考えている人は、ハローワークで対象になるか確認する価値があります。
8. 申請が遅れたらどうなるのか
基本手当の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。
ここで注意したいのは、所定給付日数が90日あるからといって、退職から1年を過ぎても90日分を必ず受け取れるわけではないことです。申請が遅れると、受給期間内に支給日数を使い切れず、残りを受け取れない可能性があります。
たとえば、自己都合退職で給付制限があり、さらに申請が遅れた場合、実際に受け取れる期間が短くなることがあります。
退職後の流れは、次のように考えるとわかりやすいです。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 退職直後 | 会社から離職票が届くのを確認 |
| 離職票到着後 | できるだけ早くハローワークへ |
| 受給資格決定後 | 7日間の待期 |
| 説明会後 | 失業認定日に求職活動を申告 |
| 認定後 | 指定口座へ振込 |
離職票がなかなか届かない場合は、会社に確認しましょう。それでも対応されない場合は、ハローワークに相談できます。
9. 申請方法:退職後にやること
基本手当の申請は、住所地を管轄するハローワークで行います。
全体の流れは次の通りです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 会社から離職票1・2を受け取る |
| 2 | 必要書類を準備する |
| 3 | ハローワークで求職申込みをする |
| 4 | 離職票を提出し、受給資格の決定を受ける |
| 5 | 雇用保険説明会に参加する |
| 6 | 失業認定日に求職活動の状況を申告する |
| 7 | 認定後、基本手当が振り込まれる |
一般的に必要になるものは、次の通りです。
- 離職票1・2
- 個人番号確認書類
- 本人確認書類
- 写真
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
- 必要に応じて印鑑
- 離職理由を説明する資料
求職活動として認められる内容は、求人への応募、ハローワークでの職業相談、職業紹介、セミナー受講などです。単に求人サイトを眺めるだけでは、求職活動として認められない場合があります。
10. もらえない人・支給が止まる人の典型例
基本手当は、条件を満たさないと支給されません。特に誤解が多いのは次のケースです。
| ケース | 注意点 |
|---|---|
| 求職活動をしない | 失業の状態と認められにくい |
| すぐ働けない | 病気・けが・育児などの場合は受給期間延長を検討 |
| 就職先が決まっている | 失業状態とはいえない場合がある |
| アルバイトを申告しない | 不正受給になるおそれ |
| 自営業を始めている | 就職状態と判断されることがある |
| 離職理由を確認しない | 給付制限や日数で不利になる可能性がある |
特に注意したいのが、アルバイトや副業です。
基本手当の受給中に短時間働くこと自体が必ず禁止されているわけではありません。ただし、働いた日、収入、労働時間は正確に申告する必要があります。申告内容によって、その日の基本手当が不支給、減額、先送りになることがあります。
「少しだけだから申告しなくていい」と考えるのは危険です。不正受給と判断されると、支給停止、返還、追加納付の対象になることがあります。
11. 再就職手当も確認する
早く再就職した場合、基本手当を最後までもらうより、再就職手当の対象になることがあります。
再就職手当は、基本手当の受給資格がある人が安定した職業に就いた場合に、一定の条件を満たすと支給される就職促進給付です。
主な考え方は次の通りです。
| 支給残日数 | 給付率 |
|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 支給残日数 × 70% × 基本手当日額 |
| 所定給付日数の3分の1以上 | 支給残日数 × 60% × 基本手当日額 |
たとえば、基本手当日額が6,000円、支給残日数が60日、給付率が70%なら、再就職手当の目安は次の通りです。
60日 × 70% × 6,000円 = 252,000円
基本手当は「長く失業していた方が得」という制度ではありません。早く安定した仕事に就いた人にも、再就職手当という支援があります。退職後は、基本手当だけでなく、再就職手当もあわせて確認しましょう。
12. 退職前に確認しておきたいチェックリスト
退職後に慌てないためには、退職前から次の項目を確認しておくのがおすすめです。
- 雇用保険に加入していたか
- 雇用保険被保険者証があるか
- 離職票をいつ受け取れるか
- 離職理由が実態と合っているか
- 退職前6か月の賃金額はいくらか
- 退職後すぐ働ける状態か
- 求職活動を始める予定があるか
- 受給期間延長が必要な事情はないか
- 職業訓練や資格学習を検討するか
- 再就職手当の対象になりそうか
失業期間は、単に収入が途切れる期間ではありません。働き方を見直し、次の仕事に向けて準備する期間でもあります。
履歴書・職務経歴書を整える、求人を比較する、職業訓練を調べる、資格や英語力を補強するなど、できることは多くあります。
学び直しの方法としては、ハローワークの職業訓練や教育訓練給付の対象講座のほか、日々の学習習慣を作るサービスを組み合わせる方法もあります。たとえばDailyDropsは、完全無料で利用でき、学習行動がユーザーに還元される共益型プラットフォームです。英会話、TOEIC、資格、受験勉強などを少しずつ続けたい人にとって、再就職準備の選択肢の一つになります。
13. よくある質問
Q. 自己都合退職でも対象になりますか?
対象になる可能性があります。原則として、離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あり、ハローワークで求職申込みをして、失業の状態と認められる必要があります。ただし、正当な理由のない自己都合退職では給付制限がつくことがあります。
Q. 会社都合退職だと何が違いますか?
倒産・解雇などで離職した場合、被保険者期間の要件が緩和されることがあり、所定給付日数も長くなる場合があります。離職理由は給付に大きく影響するため、離職票の内容を必ず確認しましょう。
Q. パート・アルバイトでももらえますか?
雇用保険に加入しており、被保険者期間や失業状態などの条件を満たせば対象になります。現在は、原則として31日以上の雇用見込みがあり、1週間の所定労働時間が20時間以上であれば、雇用保険の被保険者になります。
Q. 退職後、いつまでに申請すればいいですか?
基本手当の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間です。申請が遅れると、所定給付日数分を受けきれない可能性があります。離職票が届いたら、できるだけ早くハローワークで手続きしましょう。
Q. 受給中にアルバイトはできますか?
できる場合はありますが、働いた事実や収入を必ず申告する必要があります。労働時間や収入によって、その日の基本手当が不支給、減額、先送りになることがあります。無申告は不正受給につながるため避けましょう。
Q. 病気や妊娠ですぐ働けない場合はどうなりますか?
すぐに働けない場合は、原則として失業の状態とは認められません。ただし、病気、けが、妊娠、出産、育児などで30日以上働けない場合、受給期間を延長できることがあります。早めにハローワークで確認しましょう。
Q. 失業手当の総額は自分で正確に計算できますか?
目安は計算できますが、正確な金額は年齢、賃金日額、給付率、上限・下限、離職理由、所定給付日数で決まります。最終的には、ハローワークで交付される雇用保険受給資格者証で確認します。
14. まとめ
雇用保険の基本手当は、退職後の生活を支えながら再就職を進めるための重要な制度です。ただし、退職すれば誰でも自動的にもらえるわけではありません。
押さえるべきポイントは次の5つです。
- 正式には「雇用保険の基本手当」
- 受給には、働く意思・能力・求職活動が必要
- 原則として離職前2年間に被保険者期間12か月以上が必要
- 金額は退職前6か月の賃金、年齢、給付率で決まる
- 離職理由によって、給付制限や給付日数が変わる
退職前後は、離職票、加入期間、退職理由、申請期限を必ず確認しましょう。特に、自己都合か会社都合か、申請が遅れていないか、アルバイトや副業を正しく申告しているかは重要です。
失業期間は不安が大きい時期ですが、制度を正しく使えば、生活を守りながら次の仕事に向けて準備できます。お金の不安を減らし、求職活動と学び直しを少しずつ進めることが、次のキャリアを選ぶ力につながります。