うるう秒とは?2035年に実質廃止される理由とマイナスうるう秒の可能性をわかりやすく解説
1. まず結論:うるう秒は「地球の時計」と「原子時計」のズレを直す1秒
うるう秒は、地球の自転にもとづく時刻と、原子時計にもとづく正確な時刻のズレを小さくするために、世界の標準時であるUTCに追加、または将来的には削除される可能性がある1秒です。
簡単にいうと、地球は完全に一定の速さで回っているわけではありません。長期的には月や海の潮汐の影響で少しずつ自転が遅くなり、短期的には大気・海洋・地球内部の動きによって速くなったり遅くなったりします。
一方、現代の標準時は原子時計によって非常に安定して測られています。そのため、自然現象である地球の自転と、人工的に高精度で測る原子時計の間に、少しずつズレが生まれます。
このズレを調整するのが、うるう秒です。
| 用語 | 基準 | 特徴 |
|---|---|---|
| UT1 | 地球の自転 | 太陽の位置に近い天文学的な時刻 |
| TAI | 原子時計 | 非常に安定した国際原子時 |
| UTC | 原子時計をもとにしつつ地球自転にも合わせる時刻 | 世界の標準時として使われる |
国立天文台は、地球の自転速度にはムラがあり、地球の自転によって決まる時刻と原子時計によって決まる時刻の差が±0.9秒の範囲に入るよう、うるう秒で調整すると説明しています。参考:国立天文台「うるう秒ってなに?」
ただし、この仕組みは現在、大きな転換点を迎えています。2022年の国際度量衡総会では、2035年までにUTCとUT1の許容差を広げ、少なくとも長期間は現在のような1秒単位の調整を行わない方向へ進むことが決議されました。参考:BIPM Resolution 4 of the 27th CGPM
つまり、ニュースなどで「うるう秒廃止」と言われる話は、正確には次のように理解するとよいでしょう。
うるう秒そのものを単純に忘れるのではなく、UTCをより連続的に使えるようにし、地球自転との差は別の方法で管理しやすくする見直しです。
2. うるう年との違い:似ているが調整しているものが違う
うるう秒は、うるう年と混同されやすい言葉です。どちらも「ズレを直す」仕組みですが、直している対象が違います。
| 比較項目 | うるう秒 | うるう年 |
|---|---|---|
| 調整するもの | 時刻 | 暦 |
| 関係する地球の動き | 自転 | 公転 |
| 追加される単位 | 1秒 | 1日 |
| タイミング | 不定期 | ほぼ規則的 |
| 目的 | 原子時計と地球自転のズレを直す | 季節とカレンダーのズレを直す |
うるう年は、地球が太陽の周りを1周する時間が365日ぴったりではないために必要です。1年は約365.2422日なので、何年も放置すると、カレンダー上の春夏秋冬が少しずつズレていきます。そのため、2月29日を入れて調整します。
一方、うるう秒は、地球の自転が完全には一定でないために必要です。地球の回転にもとづく時刻と、原子時計にもとづく時刻がズレすぎないように、必要なときだけ1秒を足します。
日本でうるう秒が入る場合、UTCより9時間進んでいるため、たとえば午前8時59分59秒のあとに午前8時59分60秒が入り、その次が午前9時00分00秒になります。NICTも、過去のうるう秒挿入時にこのような日本標準時での実施方法を案内しています。参考:NICT「うるう秒」挿入のお知らせ
3. なぜ地球の自転と原子時計はズレるのか
昔は、1日は地球の自転を基準にして考えられていました。太陽が空を一周して同じ位置に戻ってくるまでを1日とし、それを24時間、1時間を60分、1分を60秒に分ける考え方です。
しかし、原子時計が発達すると、地球の自転は「時計」としては完全に安定していないことが分かりました。
地球の自転が変化する主な要因には、次のようなものがあります。
- 月や太陽による潮汐力
- 海水と海底の摩擦
- 大気や海洋の大規模な流れ
- 地球内部の核やマントルの動き
- 氷床融解による質量分布の変化
- 地震などによる地球内部・表面の変化
特に長期的に大きいのが、潮汐摩擦です。
月の重力は、地球上の海を引っ張ります。これが潮の満ち引きです。海水が移動すると、海底や沿岸との摩擦が生まれます。この摩擦によって地球の自転エネルギーが少しずつ失われ、地球の回転は長い時間をかけて遅くなります。
NASAの資料では、潮汐摩擦によって1日の長さは1世紀あたり約2.3ミリ秒増えると説明されています。参考:NASA Ocean Tides and the Earth's Rotation
米海軍天文台も、古代の日食記録などから、潮汐による地球自転の減速はおよそ1世紀あたり1.5〜2ミリ秒/日と推定されると説明しています。参考:USNO Leap Second
ただし、ここで注意したいのは、これは「ある日突然、1日が1秒長くなる」という意味ではないことです。
たとえば、原子時計で測った1日より地球の自転にもとづく1日が2ミリ秒長い状態が続くとします。
2ミリ秒 × 500日 = 1000ミリ秒 = 1秒
このように、毎日の小さな差が積み重なることで、やがて1秒のズレになります。うるう秒は、その積み重なったズレを必要なタイミングで調整する仕組みです。
4. 地球の自転は遅くなるのか、速くなるのか
「地球の自転は遅くなっている」と聞くと、常に一方向に遅くなっているように感じるかもしれません。しかし、実際にはもう少し複雑です。
長期的には、潮汐摩擦の影響で地球の自転は遅くなる傾向があります。これは、地球と月の重力の関係によって続く大きな流れです。
一方で、数年から数十年という短い期間では、地球の自転は速くなることもあります。大気や海洋の動き、地球内部の核の運動、氷床や海水の分布変化などが影響するためです。
そのため、うるう秒を理解するときは、次のように分けて考えると分かりやすくなります。
| 視点 | 地球自転の傾向 |
|---|---|
| 長期的 | 潮汐摩擦で少しずつ遅くなる |
| 短期的 | 大気・海洋・地球内部の影響で速くも遅くもなる |
| 時刻調整 | 観測結果に応じて不定期に判断される |
これまで実施されたうるう秒は、すべて1秒を追加する「正のうるう秒」でした。つまり、原子時計の時刻に比べて地球自転にもとづく時刻が遅れがちだったため、UTCに1秒を足して調整してきたのです。
しかし近年は、地球の自転が一時的に速くなる傾向も観測されており、史上初の「負のうるう秒」、つまり1秒を削る調整が話題になりました。
この点が、2035年の見直しとも深く関係しています。
5. 2035年に「実質廃止」と言われる理由
うるう秒の見直しが進んでいる最大の理由は、現代社会が連続した時刻を必要としているからです。
人間にとって1秒は小さな差に見えます。しかし、コンピューター、金融取引、通信ネットワーク、衛星測位、クラウドサービスなどでは、1秒どころかミリ秒単位、マイクロ秒単位の時刻が重要になる場面があります。
うるう秒が入ると、通常は存在しない時刻が現れます。
23時59分59秒
23時59分60秒
00時00分00秒
これは人間には理解できても、すべてのコンピューターシステムが安全に扱えるとは限りません。
たとえば、次のような問題が起こり得ます。
- 同じ時刻が2回現れたように見える
- ログの順番が逆転する
- 存在しない秒を処理できない
- サーバーごとに時刻の扱いがズレる
- 金融取引や認証処理の整合性が崩れる
- データベースの時刻比較でエラーが起きる
NISTも、うるう秒はUTCとUT1の差を±0.9秒以内に保つための仕組みである一方、現代のシステムでは扱いが難しい調整であると説明しています。参考:NIST Leap Seconds FAQs
2022年の国際度量衡総会では、UTCとUT1の差の新しい最大許容値を決め、2035年までに実装する計画を作ることが決議されました。目的は、UTCの連続性を少なくとも1世紀程度保てるようにすることです。
したがって、「2035年にうるう秒が廃止される」という表現は、一般向けには大きく間違いではありません。ただし厳密には、次のように表現するのが正確です。
UTCとUT1の許容差を広げ、現在のように±0.9秒以内に保つための1秒単位の調整を長期間行わない方向へ移行する。
つまり、地球の自転を無視するのではありません。日常生活やITインフラでは連続したUTCを優先し、天文学や測地学などUT1が必要な分野では、UTCとの差分を別途使うという考え方です。
6. マイナスうるう秒とは何か
マイナスうるう秒とは、UTCから1秒を削る調整のことです。
これまでのうるう秒は、すべて1秒を足す調整でした。正のうるう秒では、時刻は次のように進みます。
23時59分59秒
23時59分60秒
00時00分00秒
一方、負のうるう秒では、理論上は次のように1秒を飛ばします。
23時59分57秒
23時59分58秒
00時00分00秒
つまり、23時59分59秒を表示せずに次の日へ進むイメージです。
2024年にNatureに掲載されたDuncan Carr Agnew氏の研究では、現在のUTCの定義を続ける場合、2029年ごろに負のうるう秒が必要になる可能性が示されました。さらに、グリーンランドや南極の氷の融解による質量移動が地球の角速度に影響し、その時期を数年遅らせている可能性も指摘されています。参考:Nature “A global timekeeping problem postponed by global warming”
ただし、ここは断定してはいけません。
2029年に必ずマイナスうるう秒が入ると決まったわけではありません。地球の自転は予測が難しく、正式な実施はIERSの発表によって決まります。
| よくある誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 2029年に必ず1秒削られる | 研究上の可能性であり、正式決定ではない |
| 地球は常に遅くなっている | 長期的には遅くなるが、短期的には速くなることもある |
| マイナスうるう秒は人間生活に大混乱を起こす | 日常生活への影響は小さいが、システム面では注意が必要 |
| 気候変動が時計を直接壊す | 氷や海水の質量分布変化が地球の回転に影響し、時刻調整の議論に関係する |
負のうるう秒が特に問題視されるのは、過去に実施例がないからです。1秒を足す処理ですら複雑なのに、1秒を削る処理は多くのシステムで十分に検証されていない可能性があります。
このリスクも、うるう秒見直しの議論を後押ししています。
7. スマホ・GPS・金融・ITシステムへの影響
一般の利用者にとって、うるう秒の影響はほとんど体感できません。スマートフォンやパソコンの時刻は、通信ネットワークを通じて自動的に補正されることが多いためです。
しかし、社会インフラの側では、時刻は非常に重要です。
| 分野 | 時刻が重要な理由 |
|---|---|
| スマートフォン | 通信、通知、アプリ同期に使われる |
| GPS | 衛星からの信号時刻をもとに位置を計算する |
| 金融取引 | 注文や約定の順番を記録する |
| クラウドサービス | サーバー間のデータ整合性を保つ |
| セキュリティ | ログ、認証、電子証明書の有効期限を管理する |
| 放送・通信 | 信号やデータの同期に使われる |
特にコンピューターシステムでは、「時刻は常に前に進む」という前提で設計されていることがあります。そこに、同じ秒が2回現れたり、存在しない秒が入ったりすると、想定外の動作につながることがあります。
その対策として、一部の大規模サービスではリープスメアという方法が使われます。これは、うるう秒の1秒を一気に追加するのではなく、数時間から1日程度に薄く引き伸ばして処理する方法です。Googleも、うるう秒を分散して扱うGoogle Public NTP Leap Smearを公開しています。参考:Google Public NTP Leap Smear
ただし、リープスメアはすべてのシステムが同じ方法で使っているわけではありません。あるサーバーは一気に1秒を入れ、別のサーバーは少しずつ調整するという状態になると、システム間の時刻にズレが生まれます。
つまり、うるう秒の問題は「1秒くらいどうでもいい」という話ではありません。高精度に同期された社会では、1秒の扱い方そのものがインフラの安定性に関わります。
8. これまでの実施回数と次のうるう秒
UTCへのうるう秒調整は1972年に始まりました。これまでに実施されたうるう秒は、すべて正のうるう秒です。
NISTの情報では、1972年6月30日に最初のうるう秒が入り、直近では2016年12月31日に実施されています。参考:NIST Leap second and UT1-UTC information
2026年時点では、UTCと国際原子時TAIの差は37秒です。これは、制度開始時点で10秒の差があり、その後27回の正のうるう秒が追加されたためです。
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 制度開始 | 1972年 |
| これまでの追加回数 | 27回 |
| 最後の実施 | 2016年12月31日 |
| これまでの負のうるう秒 | 0回 |
| UTCとTAIの差 | 37秒 |
では、次のうるう秒はいつなのでしょうか。
これは、あらかじめ何年後と決まっているものではありません。IERSが地球の回転を観測し、必要に応じてBulletin Cで発表します。IERSは、うるう秒の実施可能性について、通常6月末または12月末に向けて告知します。参考:IERS Bulletin C
そのため、最新状況を確認したい場合は、IERSのBulletin CやNICTの日本標準時関連情報を見るのが確実です。
9. 誤解されやすいポイント
うるう秒には、誤解されやすい点がいくつかあります。
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| うるう秒は毎年ある | 不定期で、観測結果によって決まる |
| うるう年と同じ仕組み | うるう年は公転、うるう秒は自転に関係する |
| 地球の自転が1日で1秒遅れる | 毎日の小さな差が積み重なって1秒になる |
| 2035年に時計が大きく変わる | 日常の時計表示が急に変わるわけではない |
| 廃止後は地球自転を無視する | 必要な分野ではUT1との差分を使い続ける |
| マイナスうるう秒は決定済み | 可能性が議論されている段階で、正式決定ではない |
特に注意したいのは、「2035年廃止」という言葉です。
ニュースの見出しでは分かりやすく「廃止」と表現されますが、実際にはUTCとUT1の関係をどう管理するかという国際的なルール変更です。時刻の仕組みがなくなるわけでも、地球の自転を測らなくなるわけでもありません。
もう一つ重要なのは、「地球の自転が遅くなる」と「マイナスうるう秒」が矛盾して見える点です。
長期的には地球の自転は潮汐摩擦で遅くなります。しかし、短期的には地球内部や海洋・大気の影響で速くなることがあります。だからこそ、過去には正のうるう秒だけが使われてきた一方で、近年は負のうるう秒の可能性が議論されているのです。
10. よくある質問
Q1. うるう秒は何のためにあるのですか?
地球の自転にもとづく時刻と、原子時計にもとづく時刻のズレを小さくするためにあります。現在のルールでは、UTCとUT1の差を±0.9秒以内に保つことが目的です。
Q2. うるう秒とうるう年は何が違いますか?
うるう年は地球の公転と暦のズレを直すための1日です。うるう秒は地球の自転と原子時計のズレを直すための1秒です。
Q3. 2035年にうるう秒は完全になくなるのですか?
一般には「廃止」と言われますが、厳密にはUTCとUT1の許容差を広げ、現在のような1秒単位の調整を長期間行わない方向へ移行する計画です。
Q4. マイナスうるう秒は本当に実施されますか?
まだ決定していません。2024年のNature論文では2029年ごろの可能性が示されましたが、実際に行われるかどうかはIERSなどの正式発表によります。
Q5. スマホやパソコンの時計はどうなりますか?
一般利用者が手作業で何かをする必要は通常ありません。多くの機器はネットワーク経由で時刻を自動調整します。ただし、裏側のサーバーや通信システムでは慎重な対応が必要です。
Q6. うるう秒がないと昼の12時と太陽の位置はズレますか?
理論的には少しずつズレます。ただし、短期的には日常生活で体感できるほどではありません。天文学や測地学などでは、UTCとUT1の差分を使って補正できます。
Q7. 次のうるう秒はいつですか?
固定された周期はありません。IERSが地球の自転を観測し、必要に応じてBulletin Cで発表します。最新情報はIERSやNICTの発表を確認するのが確実です。
Q8. 1秒くらいなら無視してもよいのでは?
日常生活ではほとんど気になりません。しかし、金融取引、衛星測位、通信、クラウド、セキュリティログなどでは、1秒未満のズレでも問題になる場合があります。
11. まとめ:うるう秒は「自然の時間」と「機械の時間」をつなぐ仕組み
うるう秒は、地球の自転という自然現象と、原子時計という人類の高精度な技術をつなぐために作られた仕組みです。
地球は完全に一定の速さで回っているわけではありません。長期的には潮汐摩擦によって自転が少しずつ遅くなり、短期的には大気、海洋、地球内部、氷床融解などの影響で速くも遅くもなります。
そのため、地球の自転にもとづく時刻と、原子時計にもとづく時刻の間にはズレが生まれます。そのズレを1秒単位で調整してきたのが、うるう秒です。
しかし、現代社会では時刻は単なる時計表示ではありません。金融、通信、GPS、クラウド、セキュリティ、科学観測を支える重要なインフラです。だからこそ、2035年までに現在のうるう秒運用を見直し、より連続的で扱いやすいUTCへ移行する議論が進んでいます。
このテーマを理解すると、理科の「地球の自転」、物理の「原子時計」、情報の「時刻同期」、社会の「インフラ設計」が一本につながります。
用語を丸暗記するだけでなく、背景にある仕組みまで理解すると、ニュースや科学技術の話題を自分の言葉で説明できるようになります。受験勉強や資格学習でも、こうした分野横断の理解は大きな力になります。
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