血液はどこで作られる?骨髄・造血幹細胞・赤色骨髄と黄色骨髄をわかりやすく解説
1. まず結論:血液のうち「血球」は主に骨髄で作られる
体を流れる血液は、心臓で作られているわけではありません。心臓は血液を全身へ送り出すポンプであり、赤血球・白血球・血小板などの血液細胞は、主に骨の中にある骨髄で作られています。
ただし、ここで大切なのは「血液」と「血球」を分けて考えることです。
血液は、液体成分である血漿と、細胞成分である血球からできています。日本赤十字社の解説では、血液の約55%が血漿、残りの約45%が赤血球・白血球・血小板などの血球とされています。
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| 血液はどこで作られる? | 血球は主に骨髄で作られる |
| 何が作られる? | 赤血球・白血球・血小板 |
| もとになる細胞は? | 造血幹細胞 |
| 子どもと大人で違う? | 子どもは全身の骨髄、大人は骨盤・胸骨・背骨などが中心 |
| 赤色骨髄と黄色骨髄の違いは? | 赤色骨髄は造血が活発、黄色骨髄は脂肪が多い |
血液を作る場所を理解するポイントは、
「血液全体」ではなく「血球がどこで生まれるか」を見ることです。
この仕組みを知ると、貧血、免疫、白血病、骨髄移植、骨髄バンクといった言葉の意味もぐっと理解しやすくなります。
2. 血液と血球の違い:血液は4つの成分でできている
血液は、単なる赤い液体ではありません。大きく分けると、次の4つの成分で構成されています。
| 成分 | 分類 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 血漿 | 液体成分 | 栄養・老廃物・ホルモンなどを運ぶ |
| 赤血球 | 血球 | 酸素を全身へ運ぶ |
| 白血球 | 血球 | 細菌やウイルスなどから体を守る |
| 血小板 | 血球 | 出血を止める働きに関わる |
このうち、骨髄で作られる中心は、赤血球・白血球・血小板などの血球です。
赤血球は肺で受け取った酸素を全身へ運びます。白血球は感染から体を守る免疫の一部です。血小板は血管が傷ついたときに集まり、出血を止める反応を助けます。
一方、血漿は水分を多く含む液体成分で、血球や栄養素、老廃物、ホルモンなどを運ぶ「輸送路」のような役割を持ちます。
つまり、よく問われる「血液はどこで作られる?」という疑問は、より正確には次のように言い換えられます。
赤血球・白血球・血小板などの血球は、体のどこで作られるのか?
その答えが、骨髄です。
3. 骨髄とは何か:骨の中にある造血工場
骨髄とは、骨の内側にある柔らかい組織です。骨というと硬い部分だけを想像しがちですが、骨の内部にはスポンジのような空間があり、そこに骨髄が存在します。
米国国立がん研究所の用語解説では、骨髄は多くの血管を含む柔らかいスポンジ状の組織で、赤色骨髄と黄色骨髄の2種類があると説明されています。
骨髄の役割を簡単に整理すると、次のようになります。
| 部分 | 役割 |
|---|---|
| 硬い骨 | 体を支え、内部の組織を守る |
| 海綿骨 | すき間の多い骨の構造 |
| 骨髄 | 血球を作る中心的な場所 |
| 血管 | 作られた血球を血流へ送り出す通路 |
骨髄は、いわば体内にある血球の生産工場です。赤血球、白血球、血小板は、それぞれ役割が違いますが、もとをたどると骨髄内の細胞から生まれます。
日本赤十字社も、すべての血球は造血幹細胞が分化を繰り返すことで作られ、成人では頭蓋骨、胸骨、椎骨、骨盤などの骨髄で造血が行われると説明しています。
4. 造血幹細胞とは:赤血球・白血球・血小板のもとになる細胞
骨髄の中で特に重要なのが、造血幹細胞です。
造血幹細胞とは、赤血球・白血球・血小板など、さまざまな血液細胞へ育つことができる未熟な細胞です。米国国立がん研究所は、造血幹細胞を「白血球、赤血球、血小板を含むすべての種類の血液細胞に発達できる未熟な細胞」と説明しています。
参考:National Cancer Institute「Hematopoietic Stem Cell」
造血幹細胞には、主に2つの重要な性質があります。
| 性質 | 意味 |
|---|---|
| 自己複製 | 自分と同じ幹細胞を残せる |
| 分化 | 役割の異なる血液細胞へ変化できる |
この2つの性質があるため、骨髄は血液細胞を作り続けられます。
たとえるなら、造血幹細胞は「いろいろな職人を育てられる親方」のような存在です。必要に応じて、酸素を運ぶ赤血球、体を守る白血球、出血を止める血小板へと細胞が育っていきます。
血球は一度作られたら終わりではありません。赤血球には寿命があり、白血球や血小板も日々入れ替わります。だからこそ、骨髄では新しい血球が継続的に作られています。
5. 赤色骨髄と黄色骨髄の違い:血液を作る骨髄と脂肪が多い骨髄
骨髄には、主に赤色骨髄と黄色骨髄があります。名前の違いは、見た目だけでなく働きの違いも表しています。
| 種類 | 主な特徴 | 主な働き |
|---|---|---|
| 赤色骨髄 | 血管や造血細胞が多い | 血球を作る |
| 黄色骨髄 | 脂肪成分が多い | 脂肪を多く含み、通常は造血が少ない |
赤色骨髄は、血球を作る働きが活発な骨髄です。赤血球、白血球、血小板のもとになる細胞が存在し、成熟した血球は血管を通って全身へ送り出されます。
一方、黄色骨髄は脂肪を多く含む骨髄です。「黄色骨髄」と聞くと、役に立たない組織のように感じるかもしれませんが、そうではありません。黄色骨髄も正常な骨髄の一部です。
米国国立がん研究所の説明では、赤色骨髄には赤血球・白血球・血小板になれる血液幹細胞が含まれ、黄色骨髄は主に脂肪でできているとされています。
参考:National Cancer Institute「Bone Marrow」
また、強い貧血や大量出血などで血球を多く作る必要がある場合、黄色骨髄が赤色骨髄に近い状態へ変化することがあります。これを骨髄の再転換と呼ぶことがあります。
ただし、日常生活で「黄色骨髄を赤色骨髄に変えよう」と意識する必要はありません。骨髄の状態は、年齢、体格、病気、薬、喫煙、貧血、治療歴など多くの要因に左右されます。
6. 子どもと大人で造血の場所は変わる
赤色骨髄と黄色骨髄の割合は、一生同じではありません。
胎児期には、血液細胞は主に肝臓や脾臓などでも作られます。その後、骨髄での造血へ移っていき、乳幼児期には多くの骨髄で造血が行われます。
成長すると、手足の長い骨では黄色骨髄が増えていきます。成人では、赤色骨髄は体の中心部に多く残ります。
| 時期 | 造血の特徴 |
|---|---|
| 胎児期 | 肝臓・脾臓などでも血液細胞が作られる |
| 乳幼児期 | 全身の骨髄で造血が活発 |
| 成人 | 頭蓋骨・胸骨・背骨・骨盤などが中心 |
大人になると血液を作らなくなる、という意味ではありません。大人でも、赤色骨髄では血球が作られ続けています。
違いは、造血が活発な場所が体の中心部に集まっていくことです。
この変化を知っておくと、「骨髄はどこにあるのか」「なぜ骨髄検査では腰の骨が使われることがあるのか」といった疑問も理解しやすくなります。
7. 骨髄と脊髄は違う:血液を作る場所と神経の通り道
「骨髄」と「脊髄」は、名前が似ているため混同されやすい言葉です。しかし、両者はまったく別の組織です。
| 用語 | 場所 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 骨髄 | 骨の内側 | 血球を作る |
| 脊髄 | 背骨の中を通る神経 | 脳と体をつなぐ |
骨髄は、骨の中にある造血に関わる組織です。赤血球・白血球・血小板を作る場所として重要です。
脊髄は、脳から続く神経の束です。手足を動かす命令や、感覚の情報を伝える通り道として働きます。
つまり、骨髄バンクや骨髄移植で関係するのは、基本的に血液を作る骨髄です。神経である脊髄を提供するわけではありません。
この違いは、骨髄移植に対する不安を減らすうえでも重要です。
8. なぜ今、骨髄と造血を知ることが大切なのか
骨髄や造血は、専門的な医学用語に見えるかもしれません。しかし、実際には健康診断、貧血、免疫、白血病、献血、骨髄バンクなど、身近な話題と深くつながっています。
たとえば、貧血は世界的に大きな健康課題です。WHOは、15〜49歳女性の貧血が世界的に重要な公衆衛生上の問題であることを示しています。貧血の原因は鉄不足だけではありませんが、赤血球やヘモグロビンの働きを理解するには、造血の仕組みが土台になります。
参考:WHO「Anaemia」
また、白血病は血液細胞を作る仕組みと関係が深い病気です。国立がん研究センターのがん統計では、白血病と診断される数は2023年に15,165例、死亡数は2024年に9,972人とされています。
参考:国立がん研究センター がん情報サービス「白血病 統計」
もちろん、血液検査で異常が出たからといって、すぐに白血病や骨髄の病気だと決めつける必要はありません。貧血や白血球数の変化には、栄養、感染、薬、出血、慢性疾患など、さまざまな原因があります。
大切なのは、数値だけで不安になるのではなく、体の仕組みを理解したうえで、必要に応じて医療機関で確認することです。
9. 骨髄移植とは「骨を移植すること」ではない
骨髄に関する言葉で、特に誤解されやすいのが骨髄移植です。
名前だけ聞くと、骨そのものを切り取って移植するように感じるかもしれません。しかし、実際に重要なのは、血液細胞のもとになる造血幹細胞です。
現在は、骨髄から採取する方法だけでなく、末梢血幹細胞やさい帯血を使う移植もあります。そのため、より広い意味では造血幹細胞移植と呼ばれます。
| 種類 | おおまかな意味 |
|---|---|
| 骨髄移植 | 骨髄中の造血幹細胞を移植する |
| 末梢血幹細胞移植 | 血液中に動員された造血幹細胞を採取して移植する |
| さい帯血移植 | へその緒や胎盤由来の血液に含まれる造血幹細胞を使う |
骨髄バンクは、造血幹細胞を必要とする患者さんと、適合するドナーをつなぐ仕組みです。日本骨髄バンクの公開情報では、2026年3月末時点の2025年度採取実績として、移植を待つ患者1,920人に対し、行われた移植は1,035人と示されています。
また、日本骨髄バンクでは、ドナー登録できる人の条件として、年齢18歳以上54歳以下で健康状態が良好であること、体重が男性45kg以上・女性40kg以上であることなどを示しています。提供できる年齢は20歳以上55歳以下です。
骨髄バンクを正しく理解するには、「骨を移植する制度」ではなく、血液を作るもとになる細胞をつなぐ制度だと考えるとわかりやすくなります。
10. 誤解されやすいポイント
骨髄と血液については、言葉の印象から誤解が生まれやすい分野です。
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 血液は心臓で作られる | 心臓は血液を送り出すポンプ |
| 骨髄は骨の硬い部分のこと | 骨の内側にある柔らかい組織 |
| 骨髄と脊髄は同じ | 骨髄は造血、脊髄は神経 |
| 黄色骨髄は不要な脂肪 | 正常な骨髄の一部 |
| 骨髄移植は骨を移植する | 主に造血幹細胞を移植する |
| 血液型が同じなら移植できる | HLA型など別の適合条件が重要 |
| 大人は血液をあまり作らない | 大人も赤色骨髄で血球を作り続ける |
特に注意したいのは、血液検査の結果を自己判断しすぎないことです。
赤血球が少ない、白血球が多い、血小板が少ないといった結果には、さまざまな原因があります。疲れやすさ、発熱、出血しやすさなどの症状がある場合や、検査で異常を指摘された場合は、医師の説明を受けることが大切です。
この記事は体の仕組みを理解するための基礎知識であり、診断や治療方針を決めるものではありません。
11. 具体例でわかる血球の働き
骨髄で作られる血球は、日常のさまざまな場面で働いています。
たとえば、階段を上ったときに息が切れる、運動中に酸素が必要になる、といった場面では赤血球が重要です。赤血球はヘモグロビンを含み、肺で受け取った酸素を全身へ運びます。
風邪や感染症にかかったときには、白血球が関わります。白血球は細菌やウイルスなどから体を守る免疫の一部です。特に好中球などは感染防御に重要で、骨髄では新しい白血球が作られ続けています。
けがをして血が出たときには、血小板が働きます。血小板は傷ついた血管の部分に集まり、血を止める反応を助けます。
| 場面 | 主に関わる血球 | 骨髄との関係 |
|---|---|---|
| 息切れ・疲れやすさ | 赤血球 | 酸素を運ぶ細胞を作る |
| 感染への反応 | 白血球 | 免疫に関わる細胞を供給する |
| 出血を止める | 血小板 | 止血に関わる血小板を作る |
| 抗がん剤治療後の血球減少 | 赤血球・白血球・血小板 | 造血が一時的に低下することがある |
骨髄は普段見えない場所にありますが、体調や検査値と深く結びついています。
12. よくある質問
Q1. 血液は心臓で作られるのですか?
いいえ。心臓は血液を全身へ送り出すポンプです。赤血球・白血球・血小板などの血球は、主に骨髄で作られます。
Q2. 血液はすべて骨髄で作られるのですか?
厳密には、骨髄で主に作られるのは血液のうち血球です。血液には、血漿という液体成分も含まれます。
Q3. 赤色骨髄が多いほど健康なのですか?
単純に多ければよいとは言えません。年齢や体の状態によって骨髄の見え方は変わります。画像検査や血液検査の結果は、医師が総合的に判断します。
Q4. 黄色骨髄は悪いものですか?
悪いものではありません。黄色骨髄は脂肪を多く含む正常な骨髄です。成長とともに増える自然な変化でもあります。
Q5. 骨髄と脊髄は同じですか?
違います。骨髄は骨の中にある造血に関わる組織です。脊髄は背骨の中を通る神経の束です。
Q6. 骨髄移植では骨を取るのですか?
骨そのものを移植するわけではありません。重要なのは、骨髄などに含まれる造血幹細胞です。
Q7. 血液型が同じなら骨髄移植できますか?
血液型だけでは決まりません。造血幹細胞移植では、HLA型などの適合が重要になります。
Q8. 骨髄を強くする食べ物はありますか?
特定の食品だけで骨髄が直接強くなると考えるのは不正確です。ただし、赤血球を作るには鉄、ビタミンB12、葉酸、たんぱく質などが関わります。貧血を指摘された場合は、自己判断でサプリメントを増やす前に原因を確認することが大切です。
Q9. 血液検査で異常が出たら骨髄検査が必要ですか?
必ず必要とは限りません。再検査や詳しい血液検査で原因を確認することもあります。骨髄検査が必要かどうかは、症状や検査値をもとに医師が判断します。
13. まとめ:骨の中では、今日も血球が作られている
赤血球・白血球・血小板などの血球は、主に骨の中にある骨髄で作られています。骨髄の中でも、血球を作る働きが活発なのが赤色骨髄です。赤色骨髄には造血幹細胞があり、そこからさまざまな血液細胞が生まれます。
一方、黄色骨髄は脂肪を多く含む骨髄で、成長とともに増えていきます。子どものころは全身の骨髄で造血が活発ですが、大人になると骨盤、胸骨、背骨、頭蓋骨など体の中心部が主な造血の場になります。
この記事の要点は、次の通りです。
- 血液は血漿と血球に分けられる
- 骨髄で主に作られるのは赤血球・白血球・血小板などの血球
- 血球のもとになるのが造血幹細胞
- 赤色骨髄は造血が活発な骨髄
- 黄色骨髄は脂肪を多く含む正常な骨髄
- 骨髄と脊髄はまったく別の組織
- 骨髄移植は骨そのものではなく、造血幹細胞が重要
- 血液検査の異常は自己判断せず、必要に応じて医師に相談する
体の仕組みは、ひとつの用語だけを暗記するよりも、「なぜそうなるのか」をつなげて理解すると記憶に残りやすくなります。骨髄、血液、免疫、貧血、骨髄バンクは別々の話に見えて、すべて「造血」という仕組みでつながっています。
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見えない骨の中で、血球は今日も作られ続けています。その仕組みを知ることは、自分の体をより正しく理解する第一歩です。