アスファルトはなぜ黒い?道路が熱くなる理由とコンクリート舗装との違い
結論から言えば、道路が黒く見えるのは、砕石や砂の表面を暗褐色から黒色のアスファルトが薄く覆っているためです。舗装の大部分は石や砂であり、黒い材料だけを厚く敷き詰めているわけではありません。
夏に路面温度が上がりやすいのは、黒い表面が太陽光を吸収しやすいことに加え、乾いた舗装では水分の蒸発による冷却が起こりにくく、受け取った熱を内部に蓄えるためです。
ただし、路面温度は色だけでは決まりません。日射量、風、日陰、路面の水分、舗装の厚さや材料なども影響します。
1. 道路が黒いのは骨材を黒い結合材が覆うから
日常会話では、黒い道路全体を「アスファルト」と呼ぶことがよくあります。しかし、道路の表面に使われるアスファルト混合物は、主に次の材料でできています。
| 材料 | 主な役割 |
|---|---|
| 粗骨材 | 砕石など。車両の重さを支える骨格になる |
| 細骨材 | 砂など。粗骨材の間を埋める |
| フィラー | 石粉など。細かな隙間を埋めて性質を整える |
| アスファルト | 骨材を接着し、水の侵入を抑える結合材になる |
出光興産の解説では、一般的な道路舗装に使われる混合物のうち、アスファルトの構成比率は約5〜6%とされています。重量で見れば、舗装の大部分は石や砂です。
それでも舗装全体が黒く見えるのは、少量のアスファルトが骨材の表面に広がり、薄い膜として全体を包むからです。
少量のチョコレートでも、多数のナッツをコーティングすると全体が茶色く見えます。アスファルト混合物も、それと似た構造です。
道路は「黒い石油の塊」ではなく、石や砂を黒い結合材でまとめた複合材料です。
2. 舗装用アスファルトはどのような材料なのか
舗装用アスファルトは、原油からガソリン、灯油、軽油などを分ける精製工程で得られる重質な材料です。
日本アスファルト協会は、アスファルトの外観を暗褐色ないし黒色とし、常温では固体または半固体で、熱を加えると軟らかくなる性質があると説明しています。
道路工事では、この性質を利用します。
アスファルトと骨材を加熱して混ぜる
↓
道路上に敷きならす
↓
ローラーで締め固める
↓
温度が下がると安定した舗装になる
アスファルトは、砕石や砂を接着するだけでなく、舗装内部へ雨水が入りにくくなるよう助けます。
一方で、温度が高くなるほど軟らかくなりやすい性質もあります。そのため、大型車が多い道路や変形しやすい場所では、通常より耐久性を高めた改質アスファルトなどが使われることがあります。
なお、舗装用の石油アスファルトと、石炭を原料とするコールタールは別の材料です。「道路にはタールが塗られている」と表現されることがありますが、現在の一般的な舗装を説明する言い方としては正確ではありません。
3. 夏の黒い道路が熱くなる三つの理由
舗装が高温になる仕組みは、日射の吸収・蒸発冷却の少なさ・蓄熱の三つに分けると理解しやすくなります。
| 要因 | 路面で起こること |
|---|---|
| 日射を吸収しやすい | 黒い表面が太陽光のエネルギーを取り込む |
| 蒸発冷却が少ない | 乾いた舗装では、水が蒸発するときに熱を奪う作用が小さい |
| 熱を蓄える | 昼間に得た熱が舗装内部へ伝わり、夕方以降も放出される |
黒い表面は光を吸収しやすい
物体の色は、目に届く光の種類と量で決まります。白い表面は可視光を幅広く反射しますが、黒い表面は反射する光が少なく、多くを吸収します。
吸収された光のエネルギーは物質内部の熱へ変わります。晴れた日に黒い服が白い服より熱くなりやすいのと、基本的には同じ考え方です。
路面が吸収する日射を単純化すると、次のように表せます。
吸収する日射
= 入射する日射 ×(1 − 日射反射率)
日射反射率が低いほど、路面へ取り込まれるエネルギーが増えます。舗装したばかりの黒い道路は光を反射しにくいため、晴天時には温度が上がりやすくなります。
乾いた舗装では蒸発による冷却が少ない
土や植物のある地面では、水分が蒸発するときに周囲から熱を奪います。植物には、葉から水分を放出する蒸散もあります。
これに対し、乾いた道路は蒸発に使える水分が少ないため、受け取った日射エネルギーが路面や内部の温度上昇に回りやすくなります。
舗装内部に熱がたまる
路面が受け取った熱の一部は、舗装の内部へ伝わります。日が傾いてからも蓄えられた熱が少しずつ周囲へ放出されるため、夕方や夜になっても道路周辺が冷えにくいことがあります。
環境省の暑さ対策ガイドラインでは、日射を受けた黒いアスファルトの表面温度が60℃を超える場合があると説明されています。気温が30℃台でも、路面はそれより大幅に高温になる可能性があります。
ただし、都市の暑さは舗装だけで発生するわけではありません。建物による蓄熱、自動車やエアコンからの排熱、緑地の少なさ、風通しなども関係します。都市全体の仕組みは、ヒートアイランド現象とは?都市が郊外より暑くなる原因・温暖化との違い・対策を解説で詳しく確認できます。
4. 古い道路が灰色に見えるのはなぜか
舗装したばかりの道路は黒く見えますが、年月がたつと灰色や白っぽい色に変わることがあります。
道路が別の材料へ変化したわけではありません。表面の黒いアスファルト膜が劣化・摩耗し、骨材の色が目立つようになることが主な理由です。
路面では、次のような変化が進みます。
- 紫外線、熱、酸素などの影響を受ける
- アスファルトが酸化し、硬くもろくなっていく
- 車のタイヤや雨風によって表面が少しずつ摩耗する
- 灰色や白色の砕石が露出して見えやすくなる
土木研究所も、舗装に使われるアスファルトは、供用とともに紫外線、熱、酸素などによって徐々に劣化すると説明しています。
ただし、灰色に見えるだけで危険な道路とは限りません。使用した骨材の色、舗装の種類、交通量によっても見え方は変わります。
補修の必要性は色だけでなく、次のような損傷を含めて判断されます。
- ひび割れ
- 穴やくぼみ
- わだち掘れ
- 骨材の飛散
- 段差
- 路面の剥離
雨の日に古い道路が再び黒く見えるのは、濡れることで表面の光の散乱が減り、光が内部で吸収されやすくなるためです。アスファルトそのものが新しく戻ったわけではありません。
5. 日本でアスファルト舗装が広く使われる理由
黒い道路が多いのは、黒色にすること自体が目的だからではありません。アスファルト舗装が、道路の施工や維持管理に適した性質を持つためです。
主な利点には次のものがあります。
- 施工後、比較的早く交通を再開しやすい
- 傷んだ部分だけを補修しやすい
- 水道管やガス管の工事後に復旧しやすい
- 継ぎ目が少なく、滑らかな走行面を作りやすい
- 用途に応じて排水性や透水性を持たせられる
都市部の道路の下には、水道管、下水道管、ガス管、電力線、通信設備などが通っています。
設備の点検や交換では、道路を掘削して工事後に舗装を戻さなければなりません。短期間で施工しやすく、部分補修にも対応しやすいことは大きな利点です。
黒い色は、こうした条件に合う材料を選んだ結果として現れます。道路を目立たなくするためや、汚れを隠すために黒く着色しているわけではありません。
6. コンクリート舗装とは何が違うのか
道路舗装は、大きくアスファルト舗装とコンクリート舗装に分けられます。両者は材料だけでなく、荷重の支え方や施工後の扱いやすさも異なります。
| 比較項目 | アスファルト舗装 | コンクリート舗装 |
|---|---|---|
| 主な材料 | 骨材、石粉、アスファルト | セメント、水、骨材 |
| 色 | 新設時は黒〜暗褐色 | 灰白色が多い |
| 交通再開 | 比較的早い | 硬化まで時間が必要 |
| 補修 | 部分補修を行いやすい | 補修に時間がかかりやすい |
| 温度の影響 | 高温時に軟らかくなりやすい | わだち掘れが生じにくい |
| 耐久性 | 定期的な補修を行いやすい | 重交通下で長寿命を期待しやすい |
| 走行感 | 継ぎ目が少なく滑らかにしやすい | 目地で振動が生じる場合がある |
| 初期費用 | 比較的抑えやすい | 一般に高くなりやすい |
国土交通省は、アスファルト舗装を「すぐ固まるが、気温や路面温度に影響されやすい」、コンクリート舗装を「固まるまで時間がかかるが、摩耗に強く、わだちができにくい」と整理しています。
そのため、一般的な道路では施工と補修のしやすいアスファルト舗装が使われやすく、大型車が多い場所や補修が難しいトンネルなどではコンクリート舗装が選ばれることがあります。
どちらが常に優れているかではなく、交通量、工期、補修のしやすさ、初期費用、長期的な維持管理などを考えて使い分けます。
道路の構造には、材料以外にも排水の工夫があります。中央がわずかに高く作られる理由は、道路はなぜ真ん中が高い?雨水・安全・横断勾配の仕組みをわかりやすく解説で詳しく説明しています。
7. 熱くなるなら道路を白くしないのか
明るい色の表面は日射を反射しやすいため、「すべての道路を白くすればよい」と考える人もいるでしょう。
しかし、色だけを変えれば、あらゆる問題が解決するわけではありません。
通常の舗装用アスファルトはもともと黒いため、道路を明るくするには、反射性を高める材料を表面へ塗布したり、明色の骨材や結合材を使用したりする必要があります。
その際は、次の条件も考慮します。
- 材料と施工にかかる費用
- 車両の走行や雨風に対する耐久性
- 補修のしやすさ
- 雨天時や夜間の見え方
- 反射光によるまぶしさ
- 歩行者や周囲の建物への影響
太陽光のうち熱になりやすい近赤外線を反射する遮熱性舗装や、内部に保持した水の蒸発を利用する保水性舗装は、すでに実用化されています。
東京都建設局も、都道の路面温度上昇を抑える対策として、遮熱性舗装や保水性舗装を整備しています。
ただし、遮熱性舗装で表面温度を下げても、日陰が生まれるわけではありません。街路樹、建物の日よけ、緑地、風の通り道などを組み合わせ、街全体で熱を減らす必要があります。
8. よくある質問
Q. 道路はほとんど石油でできているのですか?
いいえ。一般的なアスファルト混合物の大部分は砕石、砂、石粉で、アスファルトは約5〜6%です。少量でも骨材全体を覆うため、道路が黒く見えます。
Q. 原油を道路にそのまままいているのですか?
原油をそのまま使っているわけではありません。原油の精製工程で得られた舗装用アスファルトを、砕石や砂などと混ぜて使用します。
Q. 黒い道路は必ずコンクリートより熱くなりますか?
新しい黒色舗装は日射を吸収しやすい傾向がありますが、実際の温度は日陰、風、路面の水分、厚さ、表面状態などでも変わります。色だけで必ず決まるわけではありません。
Q. 暑さでアスファルトが溶けることはありますか?
高温になるほど軟らかくなりますが、通常の道路が水のような液体になるわけではありません。ただし、高温と大型車の荷重が重なると変形しやすくなり、わだち掘れにつながることがあります。
Q. 熱い道路で遠くに水たまりが見えるのはなぜですか?
熱い路面付近と、その上にある比較的冷たい空気との温度差で光が曲がり、水面のような像が見えるためです。この現象は逃げ水と呼ばれます。
光が曲がる仕組みや陽炎との違いは、逃げ水とは?アスファルトの道路に水たまりが見える理由を光の屈折で解説で確認できます。
Q. コンクリート舗装なら夏でも安全な温度ですか?
コンクリートは一般に明るく、黒い舗装より温度上昇が小さい場合がありますが、直射日光を長時間受ければ高温になります。子どもやペットが触れる場面では、舗装の種類だけで安全と判断できません。
Q. 色の付いたアスファルト舗装もありますか?
あります。顔料や明色の結合材などを使い、赤、緑、青、ベージュなどに仕上げた舗装があります。自転車通行帯や歩道、景観に配慮する場所などで使われます。
9. まとめ
道路が黒く見えるのは、砕石や砂を、暗褐色から黒色のアスファルトが薄く覆っているためです。舗装の大部分は石や砂ですが、結合材が表面全体に広がることで黒い外観になります。
夏に高温になりやすいのは、次の三つの作用が重なるからです。
- 黒い表面が日射を吸収しやすい
- 乾いた舗装では蒸発冷却が起こりにくい
- 受け取った熱を舗装内部に蓄える
古い路面が灰色に見えるのは、アスファルト膜の劣化や摩耗によって、内部の骨材が目立つようになるためです。
アスファルト舗装は施工と補修のしやすさに優れ、コンクリート舗装は摩耗やわだち掘れへの強さに利点があります。道路の色や材料は、見た目だけでなく、工期、交通量、維持管理、暑さへの対策を含めて選ばれています。
次に道路を歩くときは、新しい部分と古い部分の色、舗装の継ぎ目、コンクリートが使われている場所などを見比べると、材料と役割の違いが分かりやすくなります。