硬貨のギザギザはなぜある?偽造防止の理由とギザ十・500円玉の違い
硬貨のふちにあるギザギザは、もともと金貨や銀貨の外周を削り取る不正を見つけやすくするために生まれました。現在は、硬貨の種類を触って区別しやすくすることや、偽造を難しくすることにも役立っています。
日本で現在発行されている通常貨幣では、50円玉と100円玉にまっすぐなギザがあり、500円玉には、より複雑な「異形斜めギザ」が採用されています。一方、1円玉・5円玉・10円玉の側面は滑らかです。
すべての硬貨を同じ形にするのではなく、穴、色、大きさ、重さ、材質、側面の感触を組み合わせることで、見たときにも触ったときにも額面を区別しやすくしています。
1. 硬貨のギザギザには3つの役割がある
硬貨の側面に刻まれた細かな溝は、単なる飾りではありません。主な役割は次の3つです。
- 金属を削り取る不正を見つけやすくする
- 硬貨の種類を触って区別しやすくする
- 硬貨の偽造を難しくする
金貨や銀貨を削る不正への対策
昔の金貨や銀貨は、硬貨に含まれる金や銀そのものにも高い価値がありました。
側面が滑らかな硬貨から外周を少しずつ削り、削り取った貴金属を集める不正が行われると、硬貨は額面どおりの重さや金属量を保てなくなります。しかし、外周を少し削っただけでは、正面から見ても異変に気づきにくい場合があります。
そこで側面に一定の模様を付け、削られると模様が途切れたり、形が崩れたりするようにしました。
側面が滑らかな硬貨
↓
外周を削っても変化が目立ちにくい
↓
側面に連続したギザを付ける
↓
削ると模様が崩れ、不正に気づきやすい
造幣局の説明でも、ギザはもともと貴金属貨幣の外縁が削り取られるのを防ぐために付けられたとされています。
触っただけでも額面を区別しやすい
現在の日本の硬貨は、素材に含まれる金属の価値だけで額面が決まっているわけではありません。それでもギザが使われているのは、額面を区別する目印になるからです。
財布やポケットの中では、数字を読まなくても次の特徴を手がかりにできます。
- 側面が滑らかか、ギザがあるか
- 中央に穴があるか
- 大きいか、小さいか
- 軽いか、重いか
- 赤みのある色か、銀白色か
- 1色に見えるか、2色に見えるか
視覚だけに頼らず、複数の感覚で区別できることは、日常的な使いやすさにもつながります。
精密な加工で偽造を難しくする
硬貨の形、大きさ、重さ、材質、表裏の模様、側面加工を正確に再現するには、高度な設備と技術が必要です。
とくに500円玉では、斜め方向のギザ、複数の金属を組み合わせた構造、微細な文字など、複数の技術が重ねられています。ひとつの特徴だけを似せても、本物と同じ硬貨にはなりません。
キャッシュレス決済が普及した現在でも、硬貨は自動販売機、券売機、精算機、コインロッカーなどで使われています。人が見分けやすいだけでなく、機械が正確に判定できる設計も重要です。
2. ギザがある硬貨・ない硬貨を一覧で比較
日本で現在発行されている6種類の通常貨幣を比較すると、ギザがあるのは50円玉、100円玉、500円玉です。
| 額面 | 直径 | 重さ | 側面 | 主な見分け方 |
|---|---|---|---|---|
| 1円 | 20.0mm | 1.00g | 滑らか | 非常に軽い、アルミニウム色 |
| 5円 | 22.0mm | 3.75g | 滑らか | 中央に穴、黄銅色 |
| 10円 | 23.5mm | 4.50g | 滑らか | 穴なし、赤みのある青銅色 |
| 50円 | 21.0mm | 4.00g | ギザ | 中央に穴、銀白色 |
| 100円 | 22.6mm | 4.80g | ギザ | 穴なし、銀白色 |
| 500円 | 26.5mm | 7.10g | 異形斜めギザ | 最も大きく重い、2色に見える |
寸法や重さは、財務省の通常貨幣一覧で公表されています。
この表から分かるとおり、額面が高くなるほど必ずギザが増えるわけではありません。10円玉は5円玉より高額ですが、どちらも側面は滑らかです。
また、50円玉と100円玉は両方ともギザがあります。ギザだけでは区別できないため、穴の有無、大きさ、重さなども組み合わせて判別する設計になっています。
3. すべての硬貨をギザギザにしない理由
偽造防止に役立つなら、すべての硬貨にギザを付けたほうがよいようにも思えます。しかし、全部を同じ感触にすると、硬貨同士を見分ける手がかりが減ってしまいます。
硬貨は、一つの特徴だけでなく複数の違いを組み合わせて設計されています。
| 特徴 | 区別できる例 |
|---|---|
| 穴 | 5円・50円と、それ以外 |
| 色 | 10円と銀白色の硬貨 |
| 重さ | 1円と、それ以外 |
| 大きさ | 500円と小型の硬貨 |
| 側面 | 滑らかな硬貨とギザのある硬貨 |
| 金属構造 | 現在の500円と、それ以外 |
たとえば、1円玉にはギザがありませんが、重さが1グラムしかなく、ほかの硬貨とは容易に区別できます。
5円玉も側面は滑らかですが、中央に穴があり、黄色に近い色をしています。10円玉は穴がなく、赤みのある色をしているため、ギザがなくても見分けやすい硬貨です。
ギザの有無は、偽造防止だけで決まっているのではありません。額面ごとの識別性、製造方法、歴史的な経緯、偽造への対策を総合して決められています。
4. 50円玉と100円玉のギザは何のため?
50円玉と100円玉は、どちらも白銅で作られた銀白色の硬貨です。側面には、まっすぐなギザがあります。
見た目や材質が似ていますが、次の違いがあります。
| 確認する場所 | 50円玉 | 100円玉 |
|---|---|---|
| 中央の穴 | あり | なし |
| 直径 | 21.0mm | 22.6mm |
| 重さ | 4.00g | 4.80g |
| 表の図柄 | 菊花 | 桜花 |
| 側面 | ギザ | ギザ |
両方にギザがあるため、側面だけを触って額面を完全に判断することはできません。50円玉は穴、100円玉は大きさや重さも手がかりになります。
つまり、ギザには額面を見分けやすくする役割がありますが、ギザだけで全種類を区別する仕組みではないということです。
硬貨を識別するときは、次の順で確認すると分かりやすくなります。
- 穴があるか
- 側面にギザがあるか
- 大きさと重さはどの程度か
- 色と図柄は何か
複数の特徴を組み合わせることで、暗い場所や財布の中でも取り違えにくくなります。
5. ギザ十はなぜ作られ、なぜなくなった?
側面にギザがある古い10円玉は、一般に「ギザ十」と呼ばれています。
ギザ十が発行されたのは、昭和26年(1951年)から昭和33年(1958年)までです。
昭和26年に10円玉が登場した当時、10円は硬貨の中で最も高い額面でした。そのため、最高額面の硬貨であることを示す目印としてギザが付けられました。
その後、昭和30年に50円玉、昭和32年に100円玉が登場し、これらにもギザが付けられます。複数の硬貨に似た側面加工があると区別しにくいため、昭和34年(1959年)から10円玉は現在の滑らかな側面へ変更されました。
造幣局の貨幣Q&Aでも、この経緯が説明されています。
| 発行時期 | 10円玉の側面 | 背景 |
|---|---|---|
| 1951~1958年 | ギザあり | 登場時の最高額面だった |
| 1959年以降 | 滑らか | 50円・100円などと区別しやすくした |
ギザ十は現在も使える
ギザ十は古い硬貨ですが、現在も10円として使用できます。
古いから使えないわけでも、側面が現在の10円玉と違うから偽物というわけでもありません。
ギザ十は必ず高く売れるわけではない
ギザ十には収集品としての需要がありますが、すべてが高額になるわけではありません。
価値を左右する主な要素は次のとおりです。
- 発行年
- 保存状態
- 傷や摩耗の程度
- 変色の状態
- 未使用に近いか
- 製造上の特徴があるか
長年使われて摩耗した一般的なギザ十は、額面を大きく上回る価格にならない場合もあります。
価値が気になる場合でも、金属磨き、研磨剤、ブラシ、薬品などで洗浄しないほうが安全です。表面を磨くと、本来の状態が失われ、収集品としての評価が下がる可能性があります。
6. 500円玉の側面は3世代で変化している
500円硬貨は、偽造への抵抗力を高めるため、これまでに素材や側面の加工が変更されてきました。
| 種類 | 主な発行期間 | 側面の特徴 |
|---|---|---|
| 500円白銅貨 | 1982~1999年 | レタリング |
| 500円ニッケル黄銅貨 | 2000年から | 斜めギザ |
| 500円バイカラー・クラッド貨 | 2021年から | 異形斜めギザ |
初代の500円白銅貨では、側面に文字を刻むレタリングが採用されていました。日本銀行の旧500円貨の資料でも、縁刻は「レタリング」とされています。
2000年に登場した500円ニッケル黄銅貨では、側面が斜めギザに変わりました。まっすぐなギザより複雑な加工にすることで、偽造への抵抗力を高めています。
現在の500円玉は異形斜めギザ
現在の500円玉は、2021年11月1日に発行が始まった500円バイカラー・クラッド貨です。
側面には「異形斜めギザ」が使われています。すべて同じ形の斜めギザではなく、一部を異なる形状にした加工です。
財務省の新500円貨の解説によると、大量生産型の通常貨幣に異形斜めギザを採用したのは世界初とされています。
現在の500円玉には、側面以外にも複数の偽造防止技術があります。
-
バイカラー・クラッド
異なる金属を組み合わせた二色三層構造 -
異形斜めギザ
一部の形状を変えた複雑な斜めギザ -
微細文字
縁の内側に「JAPAN」と「500YEN」を加工 -
潜像
見る角度によって文字が見え隠れする加工 -
微細線・微細点
肉眼では確認しにくい細かな線や点
複数の金属を組み合わせると、場所によって電気的な性質が変わります。硬貨識別機は直径や厚さだけでなく、材質に関する情報も判定に利用できるため、偽物を受け付けにくくなります。
なお、以前の500円白銅貨や500円ニッケル黄銅貨も、現在の500円玉が登場したことで直ちに使えなくなったわけではありません。現在も有効な貨幣です。
7. ギザのない100円玉や500円玉はエラー硬貨?
本来ギザがある100円玉や500円玉の側面が滑らかに見えると、「珍しいエラー硬貨ではないか」と考える人もいます。
しかし、ギザが目立たないというだけでは、製造上のエラーとは判断できません。
考えられる主な原因は次のとおりです。
- 長期間の流通による摩耗
- 硬貨同士や機械との接触
- 汚れが溝に詰まっている
- 人為的に削られた
- 偽造または変造された
- 製造時の異常
ギザが浅くなっていても、長く使われた硬貨であれば摩耗している可能性があります。一方、側面が不自然に平ら、直径が小さい、模様が不鮮明、色や重さが明らかに違うといった場合は注意が必要です。
自分で削って確認してはいけない
本物かどうかを確かめるために、側面を削る、切断する、穴を開けるといった行為は行わないでください。硬貨を故意に傷つける行為は法律で禁止されています。
また、偽物と思われる硬貨を見つけても、そのまま支払いに使ってはいけません。財務省の案内では、偽物と思われるお金を見つけた場合は使用せず、近くの警察へ届けるよう案内しています。
収集品としての価値を知りたい場合は、古銭を扱う専門店などに相談できます。ただし、写真だけで製造時のエラー、摩耗、人為的な加工を完全に区別するのは難しい場合があります。
ギザがないから高価、ギザが薄いから偽物と即断せず、硬貨全体の状態を確認することが大切です。
8. 硬貨を安全に観察する方法
側面の違いは、硬貨を加工しなくても観察できます。1円玉から500円玉までを用意し、次の順に比べてみましょう。
- 穴の有無を確認する
- 色の違いを見る
- 大きさの順に並べる
- 側面を指で軽く触る
- 50円玉と100円玉のギザを比べる
- 10円玉の発行年と側面を確認する
- 新旧500円玉があれば側面を比べる
スマートフォンの拡大撮影機能やルーペを使うと、細かなギザや微細文字も見やすくなります。硬貨の側面に対して斜めから光を当てると、凹凸が影になって確認しやすくなります。
行ってはいけない観察方法
次のような方法は避けてください。
- やすりで削る
- 刃物で切る
- ペンチで変形させる
- 穴を開ける
- 溶かす
- 強い薬品で表面を傷める
財務省の説明では、硬貨を故意に損傷したり鋳つぶしたりする行為は、貨幣損傷等取締法により処罰の対象になると案内されています。アクセサリーにするための穴開けも同様です。
自由研究などで観察する場合も、見る・触る・並べる・拡大する・重さを量る程度にとどめましょう。
9. よくある質問
10円玉にギザギザがないのはなぜですか?
現在の10円玉は、50円玉や100円玉などと区別しやすくするため、1959年から滑らかな側面になりました。1951~1958年に発行された10円玉にはギザがあり、ギザ十と呼ばれています。
100円玉と50円玉は両方ともギザがありますか?
どちらにもギザがあります。ただし、50円玉には中央に穴があり、100円玉にはありません。直径、重さ、図柄も異なります。
500円玉のギザは100円玉と同じですか?
同じではありません。100円玉はまっすぐなギザですが、現在の500円玉には、一部の形を変えた異形斜めギザが採用されています。
硬貨のギザは何本ありますか?
造幣局は、偽造防止に関係することからギザの数を公表していません。個人が数えた情報を見かけることはありますが、公式に公表された仕様とは区別する必要があります。
ギザ十は現在も買い物に使えますか?
使えます。ギザ十は現在発行されていない古い形式ですが、現在も有効な10円硬貨です。ただし、自動精算機などでは摩耗や機器の判定によって受け付けられない可能性があります。
古い500円玉は使えますか?
500円白銅貨と500円ニッケル黄銅貨は、現在も有効です。ただし、一部の自動販売機や精算機では、機器の対応状況によって受け付けない場合があります。
ギザがすり減った硬貨は偽物ですか?
摩耗によってギザが浅くなることがあるため、それだけで偽物とは判断できません。色、重さ、直径、表裏の模様などにも不自然な点がある場合は使用せず、警察や日本銀行へ相談してください。
硬貨を磨いてもよいですか?
通常の汚れを柔らかい布で軽く拭く程度を除き、研磨剤や金属ブラシで強く磨くのは避けたほうがよいでしょう。古い硬貨は洗浄によって表面を傷め、収集品としての評価が下がることもあります。
硬貨に穴を開けてアクセサリーにできますか?
日本の硬貨を故意に損傷する行為は禁止されています。アクセサリーには、市販のコイン風パーツや加工用に販売されている素材を使用してください。
10. まとめ
硬貨の側面にあるギザは、もともと金貨や銀貨の外周を削り取る不正への対策として生まれました。現在は、硬貨を触って区別しやすくする役割や、偽造を難しくする役割も担っています。
日本の硬貨を整理すると、次のようになります。
- 1円・5円・10円の側面は滑らか
- 50円・100円にはまっすぐなギザがある
- 現在の500円には異形斜めギザがある
- 1951~1958年の10円にはギザがあり、ギザ十と呼ばれる
- 500円の側面はレタリング、斜めギザ、異形斜めギザへ変化した
- ギザが薄いだけでは、エラー硬貨や偽物とは判断できない
- 硬貨を削る、切る、穴を開ける行為は避ける
硬貨は、数字や図柄だけで区別されているわけではありません。穴、色、大きさ、重さ、材質、側面の感触を組み合わせた、精密な工業製品です。
財布の中の硬貨を側面から見比べると、長い歴史の中で受け継がれてきた不正防止の工夫と、現代の高度な偽造防止技術の両方を確認できます。