プールの上の三角旗は何のため?背泳ぎ用5mフラッグの役割と正式名称
プールの上を横切る三角形の旗は、背泳ぎの選手に「壁まで残り5m」と知らせるための目印です。一般には「5mフラッグ」「バックストロークフラッグ」と呼ばれますが、日本水泳連盟の規則では背泳ぎ用標識という名称が使われています。
背泳ぎでは進行方向に背を向け、天井や空を見ながら泳ぎます。水底の黒い線や壁を直接確認しにくいため、選手から見える頭上に旗を設置し、ターンやゴールの距離を判断できるようにしているのです。
| 項目 | 答え |
|---|---|
| 何のためにある? | 背泳ぎで壁まで残り5mと知らせるため |
| 規則上の名称 | 背泳ぎ用標識 |
| 一般的な呼び方 | 5mフラッグ、バックストロークフラッグ |
| 壁からの距離 | 5.0m |
| 水面からの高さ | 1.8m |
| 旗の形 | 二等辺三角形 |
| 旗を見てからの腕の回数 | 選手によって異なる |
1. 三角旗は背泳ぎで壁への接近を知らせる目印
クロールや平泳ぎでは、顔を水中に向けたときにプールの底が見えます。底に引かれた黒い線や、その端にあるT字を確認すれば、壁が近づいていることを判断できます。
一方、背泳ぎでは顔が水面より上を向いています。水底の線を見ようとすると姿勢を大きく崩さなければならず、壁を直接見るには頭を後ろへ反らしたり、横を向いたりする必要があります。
その問題を解決するのが、プールを横断する旗付きのロープです。
進行方向
─────────────────→ 壁
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
背泳ぎ用の三角旗
壁まで5m
水面 ~~~~~~~~~~~~~~
仰向けで泳ぐ人 → ┃壁
選手は旗の下を通過したことを基準にして、残りのストローク数を数えます。ターンの準備を始めたり、ゴールで手を伸ばすタイミングを調整したりするために使われます。
旗が担っている主な役割は次の3つです。
- 壁までの残り距離を知らせる
- ターンの動作を始める基準にする
- 壁への衝突やゴール直前の失速を防ぐ
単なる飾りやレーンを区切る目印ではなく、背泳ぎの競技動作と安全性を支える設備です。
2. 正式名称は「背泳ぎ用標識」
プールの旗には複数の呼び方があります。
| 呼び方 | 主な使われ方 |
|---|---|
| 背泳ぎ用標識 | 日本水泳連盟の規則で使われる名称 |
| 背泳ぎ用ターン標識 | 規則本文で設備の役割を表す表現 |
| 5mフラッグ | 水泳選手や指導者が使う一般的な通称 |
| バックストロークフラッグ | 英語由来の通称 |
| Backstroke turn indicators | 国際的な規則で使われる英語表現 |
日本水泳連盟の規則では、条文の見出しが「背泳ぎ用標識」となっています。その本文では「背泳ぎ用ターン標識として」と説明されているため、どちらの言葉も目にすることがあります。
普段の会話では「5mフラッグ」や「背泳ぎの旗」と呼んでも問題ありません。設備の正式な名称を尋ねられた場合は、背泳ぎ用標識と答えるのが分かりやすいでしょう。
3. 壁から5m・水面上1.8mに設置される
旗は、おおよその位置に自由に取り付けられているわけではありません。
日本水泳連盟のプール公認規則では、背泳ぎ用標識の位置や形が具体的に定められています。
| 項目 | 規則上の寸法 |
|---|---|
| 端の壁からロープまで | 5.0m |
| 水面からロープまでの高さ | 1.8m |
| 三角旗の等しい2辺 | 各0.4m |
| ロープに固定する上辺 | 0.2m |
| 隣り合う旗の間隔 | 0.25m |
旗付きのロープは、スタート側と折り返し側の両方の壁から5mの位置に設けます。
25mプールなら、両側の旗の間は15mです。
壁 ┃← 5m →┃旗──────15m──────旗┃← 5m →┃ 壁
50mプールでは、両側の旗の間が40mになります。
壁 ┃← 5m →┃旗────────40m────────旗┃← 5m →┃ 壁
規則では旗の寸法や間隔が決められていますが、背泳ぎ用標識について定めた条文には、旗を必ず特定の色にするという記載はありません。
そのため、施設によって白、青、赤、黄など、さまざまな色の旗が使われています。複数の色を交互に並べる場合もあります。
旗の役割を判断するときは色ではなく、プールを横断し、端の壁から5mの位置に設置されているかを見るのが確実です。
4. なぜ水底の線ではなく頭上にあるのか
競泳プールには、泳いでいる人が位置を把握するための表示が複数あります。ただし、泳法によって見やすい方向が異なります。
| 泳法 | 顔が向く主な方向 | 確認しやすい目印 |
|---|---|---|
| クロール | 水底、斜め前方 | 底の黒い線、T字 |
| 平泳ぎ | 水底、前方 | 底の黒い線、T字、壁 |
| バタフライ | 水底、前方 | 底の黒い線、T字、壁 |
| 背泳ぎ | 天井、空 | 頭上の三角旗 |
背泳ぎでも、レーンロープやプールサイドを横目で見ることはできます。しかし、周囲を確認しようとして頭を頻繁に動かすと、体の軸がぶれやすくなります。
頭が左右へ動けば、腰や脚も同じ方向へ流れ、蛇行や抵抗の増加につながることがあります。上方の決まった位置に目印があれば、泳ぐ姿勢を大きく変えずに壁への接近を把握できます。
天井の梁や照明を目印にして泳ぐ人もいますが、これらは施設ごとに位置が違います。屋外プールでは、目印になる天井自体がありません。
壁から5mという共通の位置に旗を設けることで、初めて泳ぐプールでも同じ考え方で距離を測れます。
5. なぜ5mなのか
規則から明確に分かるのは、旗を両端の壁から5.0mの位置に設置するということです。
一方、「なぜ3mや4mではなく5mになったのか」という歴史的な制定理由までは、同規則には記載されていません。そのため、「科学的に5mが唯一最適だから」と断定することはできません。
実際の競技では、残り5mという距離が次のように利用されています。
- 数回のストロークで壁までの距離を調整する
- ターンに向けて最後の腕の動きを決める
- ゴールで腕を伸ばすタイミングを合わせる
- 壁の直前で慌てたり減速したりするのを防ぐ
旗の位置がずれると、選手の動作にも大きな影響が出ます。
2025年に行われた競泳大会では、本来5m地点にあるフラッグが誤って3m地点に設置され、背泳ぎ区間で複数の選手が壁に頭や腕をぶつける事態が起きました。大会で発生した設置ミスの報道によると、選手が普段のストローク数を基準にターン動作へ入ったことが影響しています。
この例からも、旗は単に「壁が近い」と知らせるだけではなく、選手が事前に覚えた距離感を再現するための重要な基準だと分かります。
6. 旗を見てから何回腕を回せばよい?
「旗が見えたら何回かけば壁に着くのか」という疑問に、全員共通の答えはありません。
必要なストローク数は、次の条件によって変わります。
- 身長や腕の長さ
- 1回のストロークで進む距離
- 泳ぐ速度
- 疲労の程度
- 旗を数え始めるタイミング
- ターンかゴールか
- 壁へ伸ばす腕が右か左か
特に注意したいのが、旗が見えた瞬間と、旗の真下を通過した瞬間は違うことです。三角旗は手前から見えるため、「見えたら数える」という方法では、視線やプールによって開始位置がずれます。
ストローク数を測るときは、基準を統一します。
- 普段の速度で背泳ぎをする
- 頭が旗付きロープの真下を通過したところから数える
- 片腕が入水するたびに1回と数える
- 壁に触れた腕と回数を記録する
- 数回繰り返し、安定した回数を確認する
たとえば、旗の真下から壁までに右手、左手、右手、左手の順で入水したなら、片腕ごとに数える方法では4回です。
ただし、人によっては右腕と左腕の1往復を「1ストローク」と呼ぶことがあります。
| 数え方 | 右・左・右・左と動かした場合 |
|---|---|
| 片腕の入水を1回とする | 4回 |
| 両腕の1往復を1回とする | 2回 |
指導者や選手同士で数字を共有するときは、どちらの数え方なのかを確認することが大切です。
また、ゆっくり泳いだときと全力で泳いだときでは、1回で進む距離が変わる場合があります。通常の練習速度だけでなく、レースに近い速度でも確認しておくと、ターンやゴールを合わせやすくなります。
7. ターンとゴールでは旗の使い方が異なる
旗を通過した後の動きは、折り返しとゴールで同じではありません。
| 場面 | 旗を使う目的 |
|---|---|
| 背泳ぎのターン | 体を回転させる位置を合わせる |
| 背泳ぎのゴール | 最後に壁へ伸ばす腕を合わせる |
| 個人メドレーの背泳ぎ区間終了 | 次の泳法へ移る壁際の動作を合わせる |
| 練習中 | 自分のストローク数と距離感を覚える |
ターンでは、旗からのストローク数を基準にして、最後の腕の動きや体を回すタイミングを決めます。
ゴールでは回転せず、壁まで泳ぎ切ります。最後の一かきが早すぎると壁まで届かず、もう一度短く腕を回さなければならなくなることがあります。反対に遅すぎると、腕が十分に伸びる前に壁へ近づき、詰まった動きになります。
理想は、普段のストロークのリズムを保ちながら、最後の腕を自然に伸ばして壁へ触れることです。
旗は「通過した瞬間に必ず回転する」という合図ではありません。壁まで残り5mに入ったことを示す基準であり、実際に動作を始める位置は選手ごとに異なります。
8. 底のT字やレーンロープの色とは何が違う?
プール内には、5mフラッグ以外にもさまざまな表示があります。
| 設備・表示 | 位置 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 背泳ぎ用標識 | 水面の上、壁から5m | 背泳ぎで壁への接近を知らせる |
| 底の黒い線 | 各レーンの水底 | まっすぐ泳ぐための基準 |
| 底のT字 | 水底の線の端 | 底を見て泳ぐ人に壁の接近を知らせる |
| 壁面のT字 | プールの端壁 | レーン中央やタッチ位置を把握する |
| レーンロープ端部の赤いブイ | 両端の壁から5mの区間 | 壁側の5m区間を示す |
| 15m位置の色違いブイ | 壁から15m | 水中を進める距離の位置確認などに使う |
特に混同しやすいのが、底のT字と背泳ぎ用の旗です。
底のレーンラインは、端の壁から2mを残した位置で終わり、その先端にT字型のクロスラインが設けられます。顔を水中へ向ける泳法では、このT字が壁への接近を知らせます。
背泳ぎでは水底を見られないため、頭上の5m地点に別の目印が必要です。
また、レーンロープの両端から5mまでのブイは赤色にする規定があります。旗と赤いブイはどちらも5mに関係しますが、見る方向と用途が違います。
- 頭上を見ている背泳ぎの選手:三角旗
- 水面や横方向を確認する選手:赤いブイ
- 水底を見て泳ぐ選手:底の線やT字
複数の表示を組み合わせることで、姿勢や泳法が変わっても位置を把握しやすくなっています。
9. すべてのプールに旗があるとは限らない
競泳大会に使われる公認プールでは重要な設備ですが、すべてのプールに常設されているわけではありません。
次のような施設では、旗がない場合があります。
- レジャー目的のホテルプール
- 幼児用の浅いプール
- 小規模な遊泳施設
- 背泳ぎ練習を想定していないプール
- 必要な時間だけ旗を設置する学校や施設
屋内プールでも、旗は必ず天井からつるされているわけではありません。一般的には、プールサイドに置いた支柱やスタンドの間へロープを張り、プール全体を横断させます。
屋外プールでも設置方法は同じです。天井がなくても、両側の支柱を使って水面上1.8mの高さにロープを張れます。
旗がないプールで背泳ぎをするときは、壁への衝突に注意が必要です。慣れていない場合は、次の方法を取ります。
- 監視員や指導者に目印を確認する
- 壁に近づく前に速度を落とす
- レーンロープの色や周辺の固定物を確認する
- 補助者に壁が近づいたことを知らせてもらう
- 最初から全力で壁へ向かわない
天井の模様や照明を目印にすることもできますが、旗のように正確な5m地点を示しているとは限りません。別のプールでは同じ方法が使えない可能性もあります。
10. よくある質問
Q. 三角旗は背泳ぎ以外では使わないのですか?
主な目的は背泳ぎです。背泳ぎの単独種目だけでなく、個人メドレーやメドレーリレーの背泳ぎ区間でも利用されます。
Q. 25mプールでは旗は1列だけですか?
通常は両端の壁から5mの位置にそれぞれ設置するため、2列です。25mプールでは、2列の旗の間が15mになります。
Q. 50mプールでは中央にも旗がありますか?
背泳ぎ用の旗は、基本的に両端の壁から5mの2か所です。50mプールの中央に、背泳ぎ用としてもう1列設置するものではありません。
Q. 赤と白の旗でなければ正式な設備ではありませんか?
色だけでは判断できません。日本水泳連盟の背泳ぎ用標識に関する条文では、位置、形、大きさ、間隔は示されていますが、旗の色は指定されていません。
Q. 旗に触れてターンするのですか?
触れません。旗は水面上1.8mにあるため、視覚的な目印として使います。選手は旗の下を通った後、ストローク数を数えて壁へ近づきます。
Q. 旗を見たら必ず3回かけば壁に着きますか?
決まった回数はありません。身長、腕の長さ、速度、泳ぎ方によって変わります。自分の泳ぎで繰り返し測る必要があります。
Q. 「背泳ぎ用標識」と「5mフラッグ」は別のものですか?
一般的には同じ設備を指します。「背泳ぎ用標識」は規則上の名称で、「5mフラッグ」は壁から5mにあることに由来する通称です。
11. 壁から5mという共通基準を覚えておこう
プールの上を横切る三角旗は、背泳ぎで泳ぐ人に壁まで残り5mであることを知らせる設備です。
重要なポイントを整理すると、次のようになります。
- 規則上の名称は背泳ぎ用標識
- 5mフラッグやバックストロークフラッグとも呼ばれる
- 両端の壁から5.0mの位置に設置される
- ロープの高さは水面上1.8m
- 背泳ぎでは水底を見にくいため、目印が頭上にある
- 旗から壁までのストローク数は選手ごとに異なる
- 旗の色ではなく、位置や形が重要
- 底のT字やレーンロープとは見る方向と役割が違う
実際にプールへ行ったときは、三角旗の真下から壁までの距離を見てみると、5mがどの程度なのかを実感できます。
背泳ぎを練習している場合は、旗を見つけるだけでなく、旗の真下から壁まで何回のストロークで進むのかを確かめておくことが大切です。自分の基準を覚えることで、ターンやゴールの動作を落ち着いて行いやすくなります。