親権とは?共同親権と単独親権の違い・離婚時の決め方【2026年施行後対応】
親権は、未成年の子どもの生活・教育・財産を守るために親が負う権利と義務です。離婚時には、子どもごとに親権者を定める必要があります。
2026年4月1日からは、離婚後の親権者について、父母の一方だけを親権者にする方法だけでなく、父母双方を親権者にする方法も選べるようになりました。ただし、共同親権が必ず優先されるわけではなく、単独親権が例外というわけでもありません。判断の中心は、常に子どもの安全・生活の安定・心身の健やかな成長です。
まず押さえたい結論は、次のとおりです。
| よくある疑問 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 離婚後は必ず共同親権になる? | 必ずではありません。共同親権・単独親権のどちらもあり得ます。 |
| 合意できない場合はどうなる? | 調停や裁判で、子どもの利益を基準に判断されます。 |
| DV・虐待がある場合も共同親権になる? | 子どもや一方の親に危険がある場合は、単独親権とされることがあります。 |
| 共同親権なら養育費はいらない? | いりません、とはなりません。養育費は親権とは別に考えます。 |
| 子どもは父母の家を半分ずつ行き来する? | 共同親権でも、生活場所や監護の方法は別に決めます。 |
1. 親権は親のためではなく子どものためにある
親権という言葉には「権利」という文字が入っていますが、実際には子どもの生活を守るための義務も含まれます。親が自分の希望を通すための制度ではなく、子どもの利益のために行使されるものです。
親権には、大きく分けて次の2つがあります。
| 種類 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 身上監護に関する権限 | 子どもの生活、教育、医療、しつけなどに関わること | 住む場所、学校、通院、日々の世話 |
| 財産管理に関する権限 | 子どもの財産を管理し、必要な法律行為を代理すること | 預貯金の管理、契約、相続財産の管理 |
親権をめぐる話し合いでは、「どちらが親として勝つか」という考え方になりがちです。しかし、家庭裁判所で重視されるのは、父母の希望そのものではなく、子どもにとってどの環境が安全で安定しているかです。
また、親権者でない親も、親でなくなるわけではありません。養育費を支払う責任や、子どもの成長に関わる責任は残ります。親権、養育費、親子交流は関係していますが、それぞれ別の問題として整理する必要があります。
2. 共同親権と単独親権の違い
離婚後の親権には、父母のどちらか一方を親権者とする単独親権と、父母双方を親権者とする共同親権があります。
| 比較項目 | 単独親権 | 共同親権 |
|---|---|---|
| 親権者 | 父母のどちらか一方 | 父母の双方 |
| 重大な決定 | 原則として親権者が決める | 原則として父母が共同で決める |
| 日常の世話 | 主に監護する親が担う | 日常的な行為は一方だけで決められる場合があります |
| 子どもの生活場所 | 別途決める | 別途決める |
| 養育費 | 別途決める | 別途決める |
| 親子交流 | 別途決める | 別途決める |
共同親権と聞くと、何でも父母2人で決めなければならないように感じるかもしれません。しかし、日常生活の細かな判断まで毎回合意が必要になるわけではありません。
たとえば、日々の食事、服装、短期間の外出、子どもの心身に重大な影響を与えない通常の対応などは、同居している親が判断する場面が多いと考えられます。一方で、転居、進学先、重大な医療行為、財産管理などは、子どもに与える影響が大きいため、共同で決める必要が出やすい事項です。
整理すると、次のようになります。
重大なこと
└ 進学、転居、重大な医療行為、財産管理など
→ 原則として共同で判断
日常的なこと
└ 食事、服装、日々の生活上の世話など
→ 一方の親だけで判断できる場合がある
急を要すること
└ DV・虐待からの避難、緊急医療、期限が迫った手続きなど
→ 子どもの利益のため、一方だけで判断できる場合がある
共同親権は「子どもが父母の家を半分ずつ行き来する制度」ではありません。子どもが主にどこで暮らすか、どちらが日常の監護を担うか、親子交流をどうするかは、親権とは別に具体的に決める必要があります。
3. 離婚時に親権者を決める流れ
未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、親権者を決めずに離婚することはできません。協議離婚では、離婚届に子どもの親権者を記載する必要があります。
基本的な流れは次のとおりです。
| 段階 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 話し合い | 父母で親権者を決める | 共同親権にするか、単独親権にするかを子どもごとに考えます。 |
| 離婚協議書などの作成 | 合意内容を書面にする | 養育費、親子交流、監護者、連絡方法も整理します。 |
| 離婚調停 | 家庭裁判所で話し合う | 当事者だけでまとまらない場合に利用します。 |
| 離婚訴訟 | 裁判所が判断する | 調停で解決できない場合、裁判で親権者が定められることがあります。 |
| 離婚後の変更 | 家庭裁判所で変更を求める | 子どもの利益のため必要がある場合に検討されます。 |
話し合いで大切なのは、親権だけを切り離して決めないことです。実際の生活では、親権者を誰にするかだけでなく、次のような項目が子どもの毎日に大きく関わります。
- 子どもが主に住む場所
- 保育園、学校、習い事の継続
- 養育費の金額、支払日、支払方法
- 親子交流の頻度、場所、受け渡し方法
- 病気やけがをしたときの連絡方法
- 長期休暇、旅行、進学時の費用負担
- 父母間の連絡手段
「親権者だけ決めれば終わり」と考えると、離婚後にトラブルが起きやすくなります。特に共同親権を選ぶ場合は、どの事項を共同で決め、どの事項は日常的に同居親が判断するのかを、できるだけ具体的にしておくことが重要です。
4. 裁判所が重視する判断材料
親権者の判断は、母親か父親か、収入が高いか低いかだけで決まるものではありません。家庭ごとの事情を見ながら、子どもの利益を中心に総合的に判断されます。
主に見られやすい要素は次のとおりです。
| 判断材料 | 見られやすい内容 |
|---|---|
| これまでの養育状況 | 食事、送迎、通院、宿題、生活リズムを誰が支えてきたか |
| 子どもの生活環境 | 住居、学校、友人関係、きょうだいとの関係 |
| 子どもとの関係 | 安心感、信頼関係、日常的な関わり |
| 父母の協力可能性 | 子どものために最低限の連絡や調整ができるか |
| 安全性 | DV、虐待、モラハラ、支配的言動のおそれ |
| 子どもの意向 | 年齢や発達段階に応じて尊重される |
| 養育体制 | 仕事の時間、親族の支援、住環境、通学環境 |
| 経済状況 | 生活を維持できるか。ただし収入だけで決まるわけではありません。 |
収入が高い親が必ず有利になるわけではありません。収入は大切な要素ですが、養育費によって補える部分もあります。むしろ、子どもの生活を実際に支えてきた実績、これから安定して世話できる体制、安全に暮らせる環境の方が大きな意味を持つことがあります。
子どもが複数いる場合、親権者は子どもごとに決めます。ただし、きょうだいを別々にすることが子どもに与える影響も考慮されます。形式的に「上の子は父、下の子は母」と分ければよいものではなく、それぞれの子どもの気持ちや生活環境を丁寧に見る必要があります。
5. 単独親権になるケース
共同親権が選べるようになったからといって、すべての家庭で共同親権がふさわしいわけではありません。父母が共同で判断すること自体が、子どもの安全や安心を損なう場合もあります。
単独親権が必要になりやすいのは、次のようなケースです。
| ケース | なぜ問題になりやすいか |
|---|---|
| 子どもへの虐待のおそれがある | 子どもの心身に直接の危険があるため |
| 配偶者へのDVがある | 対等な話し合いや共同判断が難しいため |
| 精神的DV・経済的DV・性的DVがある | 身体的暴力がなくても支配関係が続くおそれがあるため |
| 相手と連絡を取ること自体が危険 | 共同で決める仕組みが被害の継続につながるため |
| 子どもの前で激しい攻撃や脅しがある | 子どもの心理的安全が損なわれるため |
| 子どもの重要事項を冷静に話し合えない | 進学、医療、転居などで子どもが不利益を受けるため |
「DVがある」といっても、殴る・蹴るだけではありません。暴言、脅迫、生活費を渡さない、行動を監視する、交友関係を制限する、性的な強要をする、といった行為も深刻な問題です。
重要なのは、「共同親権にしないと不利になるのでは」と恐れて危険を我慢しないことです。子どもや一方の親に危険がある場合は、安全確保を最優先に考える必要があります。
危険がある場合は、当事者同士で無理に話し合いを続けるより、弁護士、家庭裁判所、配偶者暴力相談支援センター、自治体の相談窓口などを利用する方が安全です。
6. 母親・父親のどちらが親権者になることが多いのか
親権について調べる人の多くが気にするのが、「母親と父親のどちらが有利なのか」という点です。
政府統計の人口動態調査では、2024年に親権を行う子がいる離婚は95,436組、親が離婚した未成年の子は164,428人でした。そのうち、妻が全児の親権を行う離婚は82,561組で、親権を行う子がいる離婚の86.5%を占めています。
この数字を見ると、母親が親権者になるケースが多いことは確かです。しかし、統計は過去の結果であり、個別の家庭で母親が必ず有利になるという意味ではありません。
父親が親権を希望する場合でも、次のような事情を具体的に整理することが大切です。
- これまでどの程度、日常の育児を担ってきたか
- 子どもの学校、通院、習い事、友人関係を把握しているか
- 離婚後に子どもの生活時間を確保できるか
- 住居や通学環境を安定させられるか
- 親族や地域の支援を受けられるか
- 相手を攻撃するのではなく、子どもの利益を中心に説明できるか
母親が親権を希望する場合も同じです。「母親だから当然」と考えるのではなく、子どもの生活をどう守るか、仕事と育児をどう両立するか、養育費や親子交流をどう整理するかを具体的に示すことが重要です。
親権は性別だけで決まるものではありません。過去の養育実績と、これからの生活の安定性が問われます。
7. 親権・監護権・養育費・親子交流の違い
離婚時には、似た言葉が多く出てきます。混同しやすいものを整理しておきましょう。
| 用語 | 意味 | 親権との関係 |
|---|---|---|
| 親権 | 子どもの生活・教育・財産管理に関する権利義務 | 離婚時に定める中心項目 |
| 監護権 | 子どもと主に暮らし、日常の世話をする権限 | 共同親権でも監護者を定めることがあります |
| 養育費 | 子どもの生活費・教育費など | 親権の有無にかかわらず負担します |
| 親子交流 | 離れて暮らす親と子どもが会う・連絡すること | 子どもの利益を中心に別途決めます |
たとえば、共同親権でも、子どもが主に母の家で暮らし、父とは定期的に親子交流を行う形があります。反対に、単独親権でも、親権者でない親が養育費を支払い、親子交流を継続することがあります。
養育費については、親権者でないから払わなくてよい、共同親権だから不要、という考え方は誤りです。子どもを扶養する責任は、親権の形とは別に残ります。
8. ケース別に見る判断の考え方
親権の判断は、家庭ごとの事情によって変わります。具体例で見ると、考え方が整理しやすくなります。
| ケース | 考え方 |
|---|---|
| 父母が冷静に連絡できる | 共同親権を選び、重大事項は共同で決める形が考えられます。 |
| 一方が主に育児を担ってきた | 単独親権、または共同親権にしたうえで監護者を明確にする方法が考えられます。 |
| DV・虐待のおそれがある | 共同で判断する仕組みが危険につながる場合があり、単独親権が重要になります。 |
| 子どもが中高生で希望が明確 | 子どもの年齢や発達段階に応じて、本人の意向が考慮されます。 |
| 父母の教育方針が大きく違う | 進学や医療で対立が長引くおそれがあり、決定方法を具体化する必要があります。 |
たとえば、父母が離婚後も冷静に連絡でき、学校行事や通院について協力できる場合、共同親権は子どもの生活に合う可能性があります。
一方で、相手からの暴言や脅しが続き、連絡を取るたびに強いストレスや危険が生じる場合、共同で判断する仕組みは現実的ではありません。制度上の形よりも、子どもが安心して暮らせることを優先する必要があります。
9. 離婚前に準備しておきたい記録
親権の話し合いでは、感情的な主張だけでは状況が伝わりにくいことがあります。子どもの生活を誰がどのように支えてきたのか、今後どのように支えるのかを、客観的に整理しておくことが大切です。
準備しておきたい記録には、次のようなものがあります。
| 記録 | 具体例 |
|---|---|
| 養育実績 | 送迎、食事、通院、学校対応、宿題、生活リズムの管理 |
| 子どもの生活環境 | 住居、学校、通学時間、友人関係、きょうだい関係 |
| 支援体制 | 親族の協力、勤務時間、在宅勤務、地域の支援 |
| 相手とのやり取り | メール、メッセージ、話し合いの記録 |
| DV・虐待の記録 | 診断書、写真、相談履歴、警察・自治体への相談記録 |
| 子どもの様子 | 不眠、体調不良、登校しぶり、不安定な言動など |
ただし、証拠を集めるために危険な行動を取る必要はありません。相手を刺激して危険が増す可能性がある場合は、安全を優先してください。
また、録音やメッセージ保存などは状況によって扱いが難しいことがあります。調停や裁判を見据える場合は、早めに専門家へ相談し、どのような記録が必要か確認する方が安心です。
10. よくある質問
Q. 共同親権を拒否できますか?
父母の話し合いで合意できない場合は、調停や裁判で判断されます。共同親権にしたくない理由が、DV、虐待、支配関係、子どもの不安、共同判断の困難さなどに関わる場合は、具体的な事情を整理することが重要です。
Q. 共同親権になると、引っ越しは自由にできませんか?
子どもの居所の変更は、日常的な行為とは言いにくい場合があります。特に転校や親子交流に大きく影響する引っ越しは、慎重に扱う必要があります。ただし、DVや虐待から逃げるための避難は別に考える必要があります。
Q. 親権者でない親も子どもに会えますか?
親権者でない親でも、親子交流を行うことがあります。頻度、場所、連絡方法、宿泊の有無などは、子どもの年齢、気持ち、安全性、生活リズムを踏まえて決めます。
Q. 子ども本人の希望はどのくらい重視されますか?
年齢や発達段階に応じて考慮されます。ただし、子どもが一方の親に気を使って本音を言えない場合もあります。子どもに「どちらを選ぶのか」と迫るような聞き方は避けるべきです。
Q. 離婚後に親権者を変更できますか?
子どもの利益のために必要がある場合、家庭裁判所で親権者変更が認められることがあります。ただし、親の都合だけで簡単に変更できるものではありません。
Q. 共同親権なら養育費は半分ずつですか?
必ず半分ずつとは限りません。養育費は、父母の収入、子どもの人数、生活状況などを踏まえて決めます。共同親権か単独親権かだけで金額が決まるわけではありません。
Q. 弁護士に相談した方がよいのはどんな場合ですか?
DV・虐待・モラハラがある、相手が子どもを連れて出ていくと脅している、調停を申し立てられた、養育費や親子交流でもめている、という場合は早めの相談が望ましいです。
11. 迷ったときの考え方
親権をめぐる話し合いでは、どうしても「自分が親権を取れるか」「相手に取られたくない」という気持ちが強くなります。しかし、判断の軸を親同士の争いに置くと、子どもの生活が見えにくくなります。
迷ったときは、次の順番で整理すると考えやすくなります。
1. 子どもの安全は守られているか
2. 生活環境は安定しているか
3. これまでの養育実績を説明できるか
4. 離婚後の監護体制を具体的に示せるか
5. 養育費や親子交流のルールを決められるか
6. 父母が重要事項を冷静に話し合えるか
7. DV・虐待・支配関係のおそれはないか
共同親権が向いている家庭もあれば、単独親権の方が子どもの安全や生活の安定につながる家庭もあります。大切なのは、制度の名前だけで判断しないことです。
子どもにとって必要なのは、親同士の勝敗ではなく、安心して眠れる場所、通い慣れた生活、信頼できる大人、必要なお金、無理のない親子関係です。親権の取り決めは、その土台をどう守るかを考えるためのものです。
12. 参考になる公的情報
制度の内容は、家庭ごとの事情や今後の運用によって判断が変わることがあります。具体的な対応に迷う場合は、家庭裁判所、自治体の相談窓口、弁護士などに相談してください。