スローインはなぜ両手で頭上から?正しい投げ方とファウルスローのルール
サッカーでタッチラインからボールを入れるときは、両手で、頭の後方から頭上を通して投げる必要があります。さらに、投げる瞬間には両足の一部がタッチライン上またはライン外の地面についていなければなりません。
この形が採用されている歴史的背景には、地域ごとに異なっていたボールの戻し方を共通の方法へ統一したことがあります。ただし、「飛距離を抑えるためだけに両手投げになった」といった説明を裏づける明確な公式資料はありません。現代では、全選手に同じ条件を課し、審判が正しい再開かどうかを判断できる共通フォームとして機能しています。
また、2026/27競技規則では、スローインを不当に遅らせるチームに対する5秒の目に見えるカウントダウンが導入されました。昔からある基本動作に加えて、再開までの時間にも注意が必要です。
1. なぜ両手で頭の上から投げるのか
スローインの形は、初めから現在と同じだったわけではありません。19世紀のサッカーでは、地域や団体によってボールが外へ出た後の戻し方が異なっていました。
ナショナル・フットボール・ミュージアムが紹介する1863年の競技規則では、ボールが外へ出ると、最初に触れた選手が境界線に対して直角の方向へ投げ、ボールが地面に触れるまでインプレーにならない方式でした。現在の形とは大きく異なります。
その後、英国各地のルールをそろえる過程で、スコットランドで使われていた両手・頭上式が共通ルールへ取り入れられました。スコットランドサッカー協会も、クライドスデールFCが現代につながるスローインを競技規則へもたらしたと紹介しています。
少なくともIFABが公開する1903/04年の競技規則には、フィールドへ向いてタッチライン上に立ち、両手で頭上から投げる方法が明記されています。100年以上前には、現在に近い基本形が定着していたことになります。
両手・頭上式には、結果として次のような働きがあります。
- 野球のような自由な片手投げと区別できる
- 選手ごとの投法の差を一定範囲に抑えられる
- 審判が手・頭・足の条件を目で確認しやすい
- キックとは異なる再開方法だと明確にできる
ただし、これらは現行ルールから読み取れる機能です。「強肩の選手が遠くへ投げすぎたから」「飛距離を短くするため」といった一つの理由だけで成立したと断定するのは避けた方が正確です。
2. スローインになるのはどんなときか
スローインは、ボール全体がタッチラインを越えたときに行います。地面を転がって出ても、空中を通って出ても同じです。
ボールの一部がラインの真上に残っている場合は、まだフィールド外へ出たことにはなりません。最後にボールへ触れた選手の相手チームが、ボールの出た地点から再開します。
| 確認項目 | 基本ルール |
|---|---|
| 外に出た基準 | ボール全体がタッチラインを越える |
| 投げるチーム | 最後に触れた選手の相手チーム |
| 投げる場所 | ボールがフィールドを出た地点 |
| ボールがインプレーになる時 | フィールド内へ入った時 |
| 相手選手との距離 | 投げる地点から2m以上 |
| 直接得点 | 認められない |
たとえば、青チームの選手が蹴ったボールが、誰にも触れずにタッチラインを完全に越えれば、赤チームのスローインです。途中で赤チームの選手に当たってから出た場合は、青チームが投げます。
現行の条件は、IFABの競技規則第15条で確認できます。
3. 正しい投げ方の4条件
正しい動作は、次の4条件に整理できます。
| 部位・位置 | 必要な条件 |
|---|---|
| 体の向き | フィールドに向かって立つ |
| 足 | 両足それぞれの一部をライン上またはライン外の地面につける |
| 手 | 両手で投げる |
| ボールの動き | 頭の後方から頭上を通す |
実際の流れは次のとおりです。
-
ボールが出た地点でフィールドへ向いて立つ
-
両手でボールを安定させる
-
ボールを頭の後方へ引く
-
両足を地面につけたまま頭上を通して投げる
-
ボールをフィールド内へ入れる
両手でボールを持つ ↓ 頭の後方へ引く ↓ 頭上を通して前方へ ↓ 両足を接地したまま手放す ↓ ボールがフィールド内に入る
助走そのものは禁止されていません。数歩走って勢いをつけても、ボールを手放す瞬間に両足の条件を満たしていれば、直ちに反則にはなりません。
4. ファウルスローになる投げ方
一般には「ファウルスロー」と呼ばれますが、競技規則では主に、スローインが正しく行われなかった場合として扱われます。
代表的なNG例は次のとおりです。
- 片手だけで投げ、もう片方の手は添えているだけ
- ボールの動きが顔の前や頭の真上から始まる
- 片方の肩の横から投げる
- ボールを手放す瞬間に片足が地面から離れる
- 片足が完全にフィールド内へ入り、ラインにも触れていない
- ボールが出た地点から大きく離れて投げる
- ボールを投げず、頭上から落とすだけ
特に誤解されやすいのが、足の位置です。足の一部がタッチラインに触れていれば、つま先など残りの部分がフィールド内へ入っていても適法です。
| 足の状態 | 判定 |
|---|---|
| 両足ともライン外の地面についている | 適法 |
| 両足の一部がラインに触れている | 適法 |
| 片足は外、もう片方はかかとだけラインに触れている | 適法 |
| 片足全体がフィールド内で、ラインに触れていない | 不正 |
| ボールを離す瞬間に片足が浮いている | 不正 |
| 投げ終えた後に勢いで片足が上がる | リリース時に接地していれば直ちに不正ではない |
ボールが回転しただけで反則になるわけでもありません。規則には「無回転で投げる」という条件はないためです。ただし、強い横回転がかかる投げ方で、実際には片手だけで押し出していると判断されれば、両手投げの条件を満たしていないことになります。
5. 投げ方を間違えたらどう再開するか
正しくない方法で投げたボールがフィールド内へ入った場合は、原則として相手チームのスローインになります。
一方、投げたボールがフィールドへ入る前にライン外の地面へ触れた場合は、まだインプレーになっていません。このときは、同じチームが同じ場所からやり直します。
| 起きたこと | 再開方法 |
|---|---|
| 不正な投げ方でボールがフィールド内へ入った | 相手チームのスローイン |
| ボールがフィールドへ入る前に外側の地面へ触れた | 同じチームがやり直す |
| 不正な投げ方でも相手が有利にボールを得た | プレーを続ける場合がある |
不正な投げ方でもボールがインプレーとなり、相手チームが明らかに有利な形で保持した場合、主審がアドバンテージを適用してプレーを続けさせることがあります。
選手が「今のはファウルスローだ」と思っても、自己判断でプレーを止めるべきではありません。主審の笛や合図に従うことが大切です。
6. 直接ゴール・オフサイド・二度触りの扱い
スローインには、通常のパスとは異なる特別なルールがあります。
直接ゴールにはならない
投げたボールが誰にも触れずに相手ゴールへ入っても得点ではなく、相手チームのゴールキックになります。自分のゴールへ直接入った場合は、相手チームのコーナーキックです。
直接受ける場面ではオフサイドにならない
味方のスローインを直接受けた瞬間は、受け手が相手守備陣の後方にいてもオフサイドの反則にはなりません。その選手が次に味方へパスした時点からは、通常どおりオフサイドが判定されます。
投げた本人は続けて触れない
ボールが別の選手に触れる前に、投げた本人が足などで再び触れると、相手チームに間接フリーキックが与えられます。ゴールポストやコーナーフラッグに当たっただけでは、「別の選手に触れた」ことにはなりません。
味方のゴールキーパーは直接手で扱えない
味方のスローインをゴールキーパーがペナルティーエリア内で直接手や腕で扱うと、相手チームの間接フリーキックになります。足で受けることは可能です。
相手選手は2m以上離れる
相手選手は、投げる地点から少なくとも2m離れなければなりません。近づいて邪魔をしたり、声や動作で不当に惑わせたりすると、反スポーツ的行為として警告の対象になります。
7. 2026/27競技規則の5秒カウントダウン
2026/27競技規則では、スローインを不当に遅らせる行為への対応が明確になりました。
主審がチームの不当な遅延を認めた場合は、笛を吹いて再開を促し、手を上げて5秒を目で見える形でカウントダウンします。5秒が終わってもスローインが行われなければ、同じ地点から相手チームのスローインに変わります。
スローインを不当に遅らせる
↓
主審が笛と合図で再開を促す
↓
手を上げて5秒をカウント
↓
時間内に投げる → そのまま再開
5秒を超える → 相手チームのスローイン
すべてのスローインについて、ボールが外へ出た瞬間から自動的に5秒を数えるわけではありません。対象になるのは、主審が不当に遅らせていると判断した場面です。
時間を超えただけで、投げようとしていた選手が必ず警告されるわけでもありません。相手チームへスローインが移った後も、さらに過度に再開を妨げた場合などに警告の対象となります。
変更内容は日本サッカー協会の競技規則・改正情報にも掲載されています。実際の大会では、適用時期や大会独自の運用がないか要項も確認してください。
8. ファウルスローを減らす練習のコツ
初心者は、腕・足・投げる場所を一度に意識すると動きが崩れやすくなります。次の順番で練習すると確認しやすくなります。
最初は助走を使わない
両足を肩幅程度に開き、足を動かさずに近い味方へ投げます。まずは頭の後方から頭上を通す軌道を覚えます。
足元にラインを引く
地面に線を引き、かかとやつま先がどこにあるかを確認します。「フィールド内へ一切入ってはいけない」ではなく、「両足の一部をライン上または外側に残す」と覚えるのがポイントです。
横から動画を撮る
正面から見ると、ボールが頭の後ろまで下がっているか分かりにくいことがあります。横から撮影すると、動きの始点と足が浮く瞬間を確認しやすくなります。
距離より正確さを優先する
遠くへ投げようとして腰を反りすぎると、片足が浮いたり、ボールが頭の真上から動き始めたりしやすくなります。最初は短い距離でも、正しい形で味方の足元や胸元へ届けることを優先します。
9. よくある質問
Q. タッチラインを踏んでもよいですか?
はい。両足それぞれの一部がタッチライン上にあれば適法です。足全体がフィールド内へ入り、ラインに触れていない場合は不正になります。
Q. 投げるときに助走してもよいですか?
助走は禁止されていません。ボールを手放す瞬間に、両足の一部がライン上またはライン外の地面についている必要があります。
Q. ボールに回転がかかったらファウルスローですか?
回転だけでは反則になりません。両手で、頭の後方から頭上を通して投げたかどうかが重要です。
Q. 頭の真上から投げ始めてもよいですか?
認められません。ボールの動きは頭の後方から始まり、頭上を通る必要があります。
Q. スローインから直接ゴールに入ったら得点ですか?
得点にはなりません。相手ゴールへ直接入った場合はゴールキック、自分のゴールへ直接入った場合は相手のコーナーキックです。
Q. スローインを直接受けた選手はオフサイドになりますか?
直接受けた瞬間については、オフサイドの反則になりません。その後のパスからは通常の判定に戻ります。
Q. すべてのスローインを5秒以内に行う必要がありますか?
いいえ。主審が不当な遅延と判断し、笛と合図によってカウントを開始した場合に適用されます。
10. まとめ
正しい形の要点は、次の4つです。
- フィールドに向かって立つ
- 両足の一部をライン上またはライン外の地面につける
- 両手で投げる
- 頭の後方から頭上を通す
この投法は、地域によって異なっていた再開方法が共通化される過程で定着しました。自由な片手投げと区別し、全選手に同じ条件を課す役割がありますが、「飛距離を抑えるためだけに作られた」と断定できるものではありません。
ラインを踏むこと自体は反則ではなく、ボールの回転だけでも不正にはなりません。判定で重要なのは、ボールを手放す瞬間の両手・頭上・両足の状態です。
さらに、2026/27競技規則では、不当に再開を遅らせた場合の5秒カウントダウンが加わりました。プレーする側は正しいフォームと素早い再開を意識し、観戦する側は腕だけでなく足元と主審の合図にも注目すると、判定の理由が分かりやすくなります。