育休手当はいくらもらえる?産休・育休の給付金の計算式・手取り10割の条件・社会保険料免除まで解説
1. まず結論:産休・育休中にもらえるお金はこの4つ
出産や育児で仕事を休むとき、家計でまず確認すべきなのは「どの制度から、いくら、いつ入るのか」です。
結論から言うと、会社員・公務員など雇用されて働く人の場合、産休・育休中のお金は主に次の制度で支えられます。
| 場面 | 制度 | 主な対象 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 出産費用 | 出産育児一時金 | 健康保険の被保険者・被扶養者 | 原則1児50万円 |
| 産休中の生活費 | 出産手当金 | 健康保険の被保険者本人 | 標準報酬の約3分の2 |
| 育休中の生活費 | 育児休業給付金 | 雇用保険の被保険者 | 最初180日67%、以後50% |
| 出生直後の上乗せ | 出生後休業支援給付金 | 一定条件で育休を取る人 | 最大28日、13%上乗せ |
さらに、産休・育休中は申出により健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。給付金は原則として非課税なので、額面給与よりも「手取りベース」で考えることが大切です。
重要なのは、「給料がそのまま出る」のではなく、健康保険・雇用保険・社会保険料免除を組み合わせて生活を支える仕組みだという点です。
ただし、「手取り10割相当」という言葉には注意が必要です。額面給与の100%が振り込まれるわけではなく、支給上限、休業日数、夫婦の取得状況、会社からの賃金支払いによって実際の金額は変わります。
2. 月給別:育休手当はいくらもらえるのか
育児休業給付金は、ざっくり言うと「育休前の賃金」をもとに計算されます。
基本式は次の通りです。
育児休業給付金
= 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
給付率は、原則として次の2段階です。
| 期間 | 給付率 |
|---|---|
| 育休開始から180日目まで | 67% |
| 181日目以降 | 50% |
月給別の目安は次の通りです。ここでは分かりやすく、育休前の賃金月額をもとに概算しています。
| 育休前の月給目安 | 最初の180日・67% | 181日目以降・50% |
|---|---|---|
| 20万円 | 約13.4万円/月 | 約10万円/月 |
| 25万円 | 約16.7万円/月 | 約12.5万円/月 |
| 30万円 | 約20.1万円/月 | 約15万円/月 |
| 40万円 | 約26.8万円/月 | 約20万円/月 |
| 50万円 | 上限により約32.3万円/月 | 上限により約24.1万円/月 |
2025年8月1日以後の支給対象期間から、厚生労働省の公表資料では育児休業給付金の支給上限額が、支給率67%で32万3811円、支給率50%で24万1650円に変更されています。
最新の上限額は毎年変わることがあるため、正確な金額は厚生労働省の育児休業等給付ページや勤務先経由で確認してください。
3. 産休と育休の違いを整理する
産休と育休は似ていますが、制度の目的も給付の出どころも違います。
| 区分 | 産休 | 育休 |
|---|---|---|
| 正式な考え方 | 産前産後休業 | 育児休業 |
| 主な目的 | 出産前後の母体保護 | 子どもの養育 |
| 主な対象 | 出産する本人 | 母親・父親など子を養育する労働者 |
| 主な給付 | 出産手当金 | 育児休業給付金 |
| お金の出どころ | 健康保険 | 雇用保険 |
| 父親の取得 | 対象外 | 取得可能 |
産休は、出産する本人のための休業です。産前休業は出産予定日以前42日、多胎妊娠では98日から取得できます。産後8週間は原則として就業できません。
一方、育休は子どもを育てるための休業です。母親だけでなく父親も取得できます。父親の場合、子の出生後8週間以内に最大4週間取れる「産後パパ育休」もあります。
この違いを理解しておくと、「産休中は出産手当金」「育休中は育児休業給付金」と整理しやすくなります。
4. なぜ今、産休・育休のお金の知識が重要なのか
出産・育児をめぐる制度は、ここ数年で大きく変わっています。
厚生労働省の令和7年人口動態統計月報年計(概数)によると、2025年の出生数は67万1236人、合計特殊出生率は1.14でした。子どもを持つ家庭を社会全体で支える必要性は、以前より高まっています。
同時に、育休取得も広がっています。厚生労働省の令和6年度雇用均等基本調査では、育児休業取得率は女性86.6%、男性40.5%でした。特に男性の育休取得率は前回調査の30.1%から上昇しており、育休は「一部の家庭だけの制度」ではなくなっています。
制度を知らないまま休業に入ると、次のようなズレが起きやすくなります。
- 初回の給付が想定より遅く、生活費が不足する
- 「手取り10割相当」を額面100%と誤解する
- 住民税も免除されると思っていたが、納付書が届く
- ボーナス月の社会保険料免除条件を見落とす
- 夫婦の育休取得日数が足りず、上乗せ給付の対象外になる
制度を知ることは、単なる節約ではありません。出産前後の不安を減らし、夫婦で働き方を話し合うための土台になります。
5. 出産でもらえるお金:出産育児一時金と出産手当金
出産時にまず確認したいのは、健康保険からの給付です。
| 制度 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 出産費用の負担を軽くする給付 | 原則1児50万円 |
| 出産手当金 | 産休中の収入減を補う給付 | 標準報酬の約3分の2 |
出産育児一時金は、妊娠4か月以上で出産したときに支給される制度です。協会けんぽでは、産科医療補償制度に加入している医療機関等で妊娠22週以降に出産した場合、1児につき50万円とされています。詳しくは協会けんぽの出産育児一時金で確認できます。
出産手当金は、健康保険の被保険者本人が出産のため会社を休み、給与の支払いを受けられない場合に支給されます。対象期間は、出産日以前42日、多胎妊娠は98日、出産日の翌日以後56日までの範囲です。
計算式は次の通りです。
1日あたりの出産手当金
= 支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
たとえば、標準報酬月額の平均が30万円なら、1日あたりの目安は次のようになります。
30万円 ÷ 30日 = 1万円
1万円 × 2/3 = 約6,667円
産前42日+産後56日=98日なら
約6,667円 × 98日 = 約65.3万円
出産手当金については、協会けんぽの出産手当金FAQでも計算方法が示されています。
6. 母親の場合:産休から育休までのお金の流れ
出産する本人の場合、お金の流れは次の順番で考えると分かりやすいです。
| 時期 | 主な制度 | 内容 |
|---|---|---|
| 出産前後 | 出産育児一時金 | 出産費用を補う |
| 産前産後休業中 | 出産手当金 | 休業中の生活費を補う |
| 産後休業後の育休中 | 育児休業給付金 | 育休中の生活費を補う |
| 産休・育休中 | 社会保険料免除 | 健康保険料・厚生年金保険料が免除 |
たとえば、月給30万円の人が産休・育休に入る場合、かなり単純化すると次のようなイメージです。
| 時期 | 概算 |
|---|---|
| 出産育児一時金 | 原則50万円 |
| 出産手当金・98日分 | 約65万円 |
| 育児休業給付金・最初の180日 | 約20.1万円/月 |
| 育児休業給付金・181日目以降 | 約15万円/月 |
ただし、実際の金額は標準報酬月額、休業開始前の賃金、給与の支払い、支給日数、上限額によって変わります。
また、産休・育休中は給与が止まる一方で、給付金の振込は後からになることがあります。産休前に、少なくとも数か月分の生活費を準備しておくと安心です。
7. 父親の場合:パパ育休と給付金の考え方
父親は産休の対象ではありませんが、育休は取得できます。
特に重要なのが、子の出生後8週間以内に取得できる「産後パパ育休」です。正式には出生時育児休業と呼ばれ、条件を満たすと出生時育児休業給付金の対象になります。
父親側のお金は、主に次のように整理できます。
| 取得パターン | 主な給付 |
|---|---|
| 出生後8週間以内に産後パパ育休を取得 | 出生時育児休業給付金 |
| 通常の育児休業を取得 | 育児休業給付金 |
| 夫婦ともに一定日数以上取得 | 出生後休業支援給付金の可能性 |
2025年4月から始まった出生後休業支援給付金では、原則として両親がともに14日以上の育休を取得する場合、最大28日間、休業開始前賃金の13%が上乗せされます。
つまり、父親の育休は「手伝えるかどうか」だけでなく、家計にも関係します。夫婦で取得日数を合わせることで、出生直後の給付が増える可能性があります。
8. 手取り10割相当になる条件と注意点
2025年4月から始まった出生後休業支援給付金により、一定条件を満たすと出生直後の給付率が次のようになります。
| 給付 | 給付率 |
|---|---|
| 育児休業給付金または出生時育児休業給付金 | 67% |
| 出生後休業支援給付金 | 13% |
| 合計 | 80% |
「80%なのに、なぜ手取り10割相当と言われるのか」と疑問に思う人もいるはずです。
理由は、育児休業給付金などが原則として非課税であり、さらに育休中の健康保険料・厚生年金保険料が免除されるためです。通常の給与からは所得税、社会保険料などが差し引かれますが、育休中の給付ではその負担が軽くなるため、手取りに近い水準になるという考え方です。
ただし、次の点は必ず押さえてください。
- 上乗せは最大28日分
- 原則として夫婦とも14日以上の育休取得が必要
- 一人親など、配偶者の取得を要件としない例外もある
- 給付には上限額がある
- 休業中に会社から賃金が出ると調整される場合がある
- 住民税は原則として免除されない
つまり、「誰でも自動的に給料と同じ金額が入る制度」ではありません。正確な条件は、勤務先やハローワークで確認しましょう。
9. 社会保険料免除と住民税の落とし穴
産休・育休中の手取りを考えるうえで、給付金と同じくらい重要なのが社会保険料免除です。
免除される主なものは次の2つです。
| 免除されるもの | 内容 |
|---|---|
| 健康保険料 | 本人負担・会社負担とも免除 |
| 厚生年金保険料 | 本人負担・会社負担とも免除 |
日本年金機構の育児休業等取得者申出書の説明では、育児休業等を開始した月から、終了日の翌日が属する月の前月までの保険料が免除されると説明されています。
また、開始月と終了日の翌日が同じ月にある場合でも、その月に14日以上育休を取得すれば月額保険料が免除されます。賞与については、賞与月の末日を含んだ連続1か月を超える育休等を取得した場合に限り、賞与保険料が免除されます。
一方で、住民税は原則として免除されません。住民税は前年の所得をもとに課税されるため、育休中でも納付が必要です。給与天引きが止まると、自治体から納付書が届くことがあります。
家計を考えるときは、次の3つを分けて見ましょう。
| 分類 | 例 |
|---|---|
| 入ってくるお金 | 出産手当金、育児休業給付金など |
| 減る負担 | 健康保険料、厚生年金保険料 |
| 残る支出 | 住民税、住宅ローン、家賃、保育準備費、医療費 |
給付金だけを見ると安心に見えても、住民税や支給タイミングを見落とすと資金繰りが苦しくなることがあります。
10. 育休手当はいつ入る?初回振込が遅れやすい理由
育児休業給付金は、給与のように毎月決まった日に自動で振り込まれるものではありません。
多くの場合、会社がハローワークに申請し、支給対象期間ごとに手続きが行われます。そのため、育休開始後すぐに入金されるとは限りません。
特に初回は、次の流れになるため遅れやすいです。
| 流れ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 育休開始 |
| 2 | 支給対象期間が経過 |
| 3 | 会社が必要書類を準備 |
| 4 | ハローワークへ申請 |
| 5 | 審査後に振込 |
そのため、初回振込まで数か月かかることもあります。
産休・育休前には、次の確認をしておきましょう。
- 初回申請は会社が行うのか、自分で行うのか
- いつごろ初回振込が見込まれるのか
- 申請に必要な書類は何か
- 会社の給与締め日・支払日とどうずれるのか
- 住民税の支払い方法はどうなるのか
「もらえる金額」だけでなく、「いつ入るか」まで確認しておくことが、育休中の家計管理では重要です。
11. パート・契約社員・退職予定・フリーランスの注意点
育児休業給付金は、雇用形態の名前だけで決まるわけではありません。パート、契約社員、派遣社員でも、雇用保険の被保険者であり、一定の要件を満たせば対象になり得ます。
一方で、次のようなケースでは注意が必要です。
| ケース | 注意点 |
|---|---|
| パート・契約社員 | 雇用保険加入や勤務実績などの要件を確認 |
| 有期雇用 | 契約終了が明らかでないか確認 |
| 退職予定 | 育休後の復職を前提としない場合、対象外の可能性 |
| 自営業・フリーランス | 雇用保険の制度である育児休業給付金は原則対象外 |
| 扶養内勤務 | そもそも雇用保険・健康保険の加入状況を確認 |
特に退職予定の場合は注意が必要です。育児休業給付金は、原則として育休後に職場へ戻ることを前提とした制度です。最初から退職する予定で申請すると、対象外になる可能性があります。
また、自営業・フリーランスは雇用保険の被保険者ではないため、会社員と同じ育児休業給付金は原則受け取れません。ただし、出産育児一時金など健康保険・国民健康保険に関係する制度は対象になる場合があります。
12. 申請前に確認したいチェックリスト
産休・育休のお金は、制度ごとに申請先が違います。
| 制度 | 主な窓口 |
|---|---|
| 出産育児一時金 | 医療機関、健康保険組合、協会けんぽなど |
| 出産手当金 | 勤務先、健康保険組合、協会けんぽなど |
| 育児休業給付金 | 勤務先、ハローワーク |
| 出生後休業支援給付金 | 勤務先、ハローワーク |
| 社会保険料免除 | 勤務先、年金事務所、健康保険組合など |
休業前には、次の項目を確認しておくと安心です。
- 産前休業に入る予定日
- 出産予定日と実際の出産日で期間が変わること
- 育休開始日と終了予定日
- 夫婦それぞれの育休取得日数
- 出生後休業支援給付金の対象になるか
- 初回給付金がいつごろ振り込まれそうか
- 住民税を普通徴収で払うのか、会社経由で調整するのか
- ボーナス月に育休がかかる場合の社会保険料免除条件
- 保育園に入れなかった場合の延長手続き
2025年4月からは、保育所等に入れなかったことを理由に育児休業給付金の支給対象期間を延長する手続きにも変更があります。延長の可能性がある場合は、自治体の保育申込とハローワーク提出書類を早めに確認しましょう。
13. よくある質問
Q1. 育休手当は毎月もらえますか?
給与のように毎月同じ日に入るとは限りません。会社経由で申請されることが多く、支給対象期間が経過してから手続きされるため、初回振込まで数か月かかることがあります。
Q2. 育休手当は課税されますか?
育児休業給付金は原則として非課税です。所得税の対象にならず、翌年の住民税計算上の所得にも通常含まれません。ただし、前年所得に対する住民税の支払いは残る点に注意してください。
Q3. 父親も育休手当をもらえますか?
条件を満たせば受け取れます。産後パパ育休や通常の育児休業を取得することで、出生時育児休業給付金や育児休業給付金の対象になり得ます。
Q4. 手取り10割相当なら貯金は不要ですか?
不要とは言えません。給付には上限があり、初回振込も遅れやすいためです。住民税、出産準備品、医療費、里帰り費用、保育園準備費なども別に発生します。
Q5. 出産手当金と育児休業給付金は同時にもらえますか?
出産する本人の場合、通常は産後休業が終わってから育休に入ります。そのため、産休中は出産手当金、育休中は育児休業給付金と考えると整理しやすいです。
Q6. 育休中に少し働いたら給付金はなくなりますか?
一定の範囲内であれば、ただちにゼロになるとは限りません。ただし、働いた日数・時間・支払われた賃金によって支給額が調整されたり、不支給になったりします。事前に勤務先とハローワークへ確認しましょう。
Q7. 民間保険に入れば公的制度の確認は不要ですか?
不要ではありません。まず公的制度でどこまでカバーされるかを確認し、不足分を貯蓄や民間保険で補う順番が合理的です。出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金、社会保険料免除を把握してから判断しましょう。
14. まとめ:金額・時期・条件を見える化すれば不安は減らせる
産休・育休中のお金は、次のように整理できます。
| 覚えること | 要点 |
|---|---|
| 出産費用 | 出産育児一時金が原則1児50万円 |
| 産休中 | 出産手当金が標準報酬の約3分の2 |
| 育休中 | 育児休業給付金が最初180日67%、以後50% |
| 出生直後 | 条件を満たすと13%上乗せ |
| 手取り | 非課税・社会保険料免除により額面給与との差が縮まる |
| 注意点 | 住民税、支給時期、上限額、申請漏れに注意 |
出産や育児に関する制度は複雑ですが、分解すれば見通しは立てられます。
まずは、次の4つを紙やメモアプリに書き出してみてください。
- 休業開始日と終了予定日
- 育休前の賃金月額
- 初回振込までの生活費
- 夫婦それぞれの育休取得予定日数
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制度は毎年見直されます。最終的な判断は、勤務先の人事、加入している健康保険、ハローワーク、年金事務所で最新情報を確認しながら進めましょう。